冠省
僕の仕事場が移ったのでお知らせする。転職したり派遣先が変はったりしたのではなく，元から居たプロジェクトが作業場ごと引越したのだ。以前は大手町にあって通勤の便が大変良かったのだけれど──＊＊＊に住むメリットのひとつ──今度は＊＊である。通勤時間は倍増に近い。とほほ。
所在地は〒1**・東京都品川区＊＊＊＊丁目**番**号・＊＊＊＊＊＊，電話番号は03-***-****（内線****）。
これとは関係無く僕の自社の所属する課もビルを替はった。
こちらは＊＊町内での移転であって，〒1**・東京都大田区＊＊＊＊丁目＊番＊号・＊＊＊＊ビル，03-***-****。
所番地はえらく違ふが区境を挟み徒でほんの数分の道のりしか離れてゐない。
＊＊の本社に行く機会が無くなったので当然ながら近距離通勤費精算も発生しなくなり，電車賃をごまかしての小遣ひ稼ぎも不可能になった。こりゃ参ったね。
通勤に時間が掛かると──それでも１時間は切ってゐる。東京では決して悪くない成績──ほとほとくたびれる。余所に移りてえ。
新しい制服を着たくなくて辞めようてえ女子社員が居るくらゐで，全く離職の動機には事欠かない。
どう云ふ訳か僕はよく転退職の相談（懺悔？告白？漏洩？）を受ける。特に女の子の辞職情報はかなり早い時期に握ってゐるので部課長が僕に探りを入れる程である（これ嘘）。
そりゃ僕の口はダイアモンドより堅く鉛より重いから噂の先行する恐れは無いが初めて打ち明ける相手としてふさはしいかどうか。尤も大抵はほぼ決心を固めてしまってをり，助言を求めてゐるのではない。要するに他人に言ってみたいだけだらう。
僕も如何にもすぐ辞めさうに映るからか或るいは引き止めて貰ひたいのかしらんと思ったら，僕があんまり男らしくないので話し易いからださうだ，糞。
消極的なプロポウズではないかと思しきケイスもあったけれどかう云ふのに限って勘弁してくれ女である。気付かない振りをしておいたぞ。
５月の連休とか夏休み（餓鬼共の）とかになるとＴＶが固めて昔の怪獣映画を放映してくれるので嬉しい嬉しい。
今年は『大怪獣決闘ガメラ対バルゴン』『大怪獣空中戦ガメラ対ギャオス』（以上テレ朝）に続いて『大巨獣ガッパ』『宇宙怪獣ガメラ』（東京）と来た日にゃあマニアでなくとも血が騒ぐ。
ノウカットとは行かず１時間半の番組枠に収める為に１本70分前後に纏められてをり，これを２本づつ３時間テイプにカップリングして残り時間に『仮面ノリダー』や宮沢りえの学園コント（むろん面白かった週の）を埋めるとちゃうど良い。
今回『ガッパ』及び『宇宙ガメラ』とで仕上げるつもりで『七不思議によくある風景』『恐怖シャワー男』を用意したにも関はらず予定が狂った。前３者が60年代後期の作品なのに『宇宙ガメラ』は何と80年の制作，嫌な予感がしたら果たして全く全然実にちっとも面白くなかった。がっくり。
たうてい保存に価しないので没にしたが『ガッパ』だけ３時間テイプに宙ぶらりんである。半年以上待たなければ組み合はせる映画は電波に載らないだらう。
脚本・監督とも往年のガメラ_シリーズと同一人なのに何と云ふ体たらくだ。＊＊の劇場で観たリメイク『ゴジラ』にも転けたが此のガメラは更に恥曝しである。あんまりだ。マッハ文朱がヒロインなのも興冷めならギャオスの安易な復活も企画貧困の極み，しかもギャオスのハイライト_シーンはオリジナルの『対ギャオス』のまんまフィルムを繋げただけだった！
余りと言へば余りの仕打ち，よよよよよよと泣き崩れたね。なくらいんでも酷過ぎる。80年の自衛隊の戦闘機がＦ１０４な訳ねーだろ。20分で録るの諦めた。
日本の特撮は此の20年間に凍結しっ放しだったのだな。相対的に大幅な退化ではないか。久し振りに怒り捲った映画であった。
甘木がまた遊びに来たので甘木の東京日記を書く。
多少の曲折を経て結局のところ日本語学校の講師となった甘木は暫く謎の中国人の居候となってゐたが追ひ出され，当の日本語学校長の伝で今は等等力にしゃがんでゐる。
住居は不届きにも学校の施設であって，きちんと掃除をすると云ふだけの条件で家賃は只らしい。ったくふざけた話だ。そのうち幽霊が出て取り殺されるに決まってゐる。
宛て先は，〒1**・東京都世田谷区＊＊＊＊-**-＊・＊＊＊＊＊気付。電話まであり，03−***−****。
手取りは16万円くらゐださうで，決して安くないのに加へて家賃が要らないから水商売に程近い高給取りである。
しかし社会保険その他は無く就職先としては一長一短，甘木も其の辺を気にはしてゐた。う〜ん，僕にはできない。
僕が最後に勉強したのは大学３年の冬なんだからもう知力の低下には目に余る物がある。
当時愛用の卓上電気スタンド（幽波紋ぢゃないよ）は嵩張るしもはや使ふ事はあるまいと（薬罐ぢゃないよ）云ふので実家に置いて来た。確かに勉強はしないのだけれど，ヴィディオのインデクス_カードを作ったりスピーカ工作の図面を引いたりするのに手元の明かりは是非とも必要なんだな。
手持ちの超小型スタンドで充分と踏んでゐたのだが，如何せん25Ｗミニ球では光量に乏しく不健康な黄色光で網膜の傷む思ひがする。このワープロを照らすには背が足りない。結局新しいスタンドを物色する羽目になった。
ちらつきやトランスの唸りが気にはなってもＣＰからすれば蛍光灯である。取り換へるならインヴァータと岸辺一徳が触れ回ってゐた からさうしようと思った所が，カタログ雑誌に斬新なランプスタンドを発見した。
「第３の照明」と銘打たれバイオライトなる大仰な名前が付けられてゐる。惹句が気に入ったので買ふ事にしたが大変高い。２万9300円もする。
説明書に拠ると「先進のバイオテクノロジーから生まれた」──何でバイテクからなんだ──太陽光線に限り無く近いスタンドで，蛍光管でもＺライトでもない普通の40Ｗ球を捩込む白熱灯である。
40Ｗ球と言へば贅沢な便所かいかがはしい喫茶店に点いてる奴の筈なのに，これは異様に明るい。ちらつきゼロ・唸りゼロ，特殊回路を内蔵するとかで従来製品の２倍の照度を謳ふ。「目に最適な光を追及した」さうだが網膜の焦げる思ひがする。本当に眼に良いのでせうか。
40Ｗ球を灯すのに消費電力は58Ｗであって，点灯時はショック電流を和らげるため２段階に分けて明るくなりやがる。フィラメントによほど無理を強いるらしく電球の寿命は通常の1/10だとはっきり書かれ，付属品として電球が３個はいってゐた。これが１箇月分だと言ふ。
電圧の揺れるやうな所（トランスの側とか配電盤容量の低い家）なら110Ｖ球を使へと細かい指示まである。無茶苦茶だなあ。
維持費 はさて置き今の季節に困るのは此れが強烈な熱源と化す事だ。実際に点けてみると正にひなたに机を持ち出した趣があり，じりじりと照り付け汗が吹き出す。ディオもカーズもひとたまりもあるまい。
デザインは極めて優秀，流行のガンメタル調だが一見してプラスティックと判る安っぽさが惜しい。
価格 や性能から離れて最も驚くべきは，販社が旺文社と云ふ点である。旺文社に特販事業部特販課なんてのがあったとは知らなんだ。おフランスかドイツで作られるのを旺文社が輸入してゐるらしい。
う〜ん，こいつで百間先生をもう一度読み直さう。
衛星放送の有料化は次の衛星打ち上げ以降だらうと１年前に予想したのが見事に外れ，この８月から月額2000円徴収すると言ふ。
しかし其れは酷い。試験放送の時から予備ch.しか動作せず機能停止寸前（全体で2/3壊），貧弱な編成・高価な受信装置，また視聴者の多くは共同受信なので──１台のＢＳチューナからＵＨＦ波にコンヴァートして強力にブースト，地上波の共同ケイブルに混ぜる──高画質・ディジタル音声などのメリットは絵に描いた餅・砂に書いたラヴレターである。
満足な運営ができないと判ってゐながら金を取るのは断じて公共放送のする事ではない。受信料支払ひ拒否の充分な根拠たり得る。くたばれＮＨＫ。教育放送をステレオ化し演芸番組をもっとやってくれれば良いが，『春日の局』なんか作るから払ってやらんのよ。っだらねえ。
こないだ『スーパージョッキー』を観てゐたら「クリアビジョン実験放送中」とテロップが出てきてびっくりした。さうかさうか，もうやってんだな。
比較的手の届き易い改善方式としてＥＤＴＶには期待してゐる。何と言っても目玉はゴーストキャンセラだ。
どう云ふ訳かキャンセル回路は外部アダプタに委ねられてをりＥＤＴＶ対応受信機の外に更に十数万かかる仕組みになってゐる。本放送が始まりオールインワンのが出て量産されるやうになる迄は手を出さない方が賢明だが，順次走査だけでも相当効くと思ふ。
尤も極めて優秀なＥＤβ7000番の内蔵チューナを使はなくなるので通常放送のクオリティは若干落ちるだらう。トータルでは一長一短かな。
ＥＤＴＶ対応のＥＤβ機は発売されるでせうか。実は切りの良い所でHi８に乗り換へるのにも吝かでなく，ちっと静観の構へで居よう。
僕等は非常に良い時期に産まれたからＴＶの低廉化・カラー化・ＵＨＦ波の登場・音多化・大型化・ディジタル化・衛星放送の登場と，一番ＴＶを観てゐられる年代をさして妨害される事も無く過ごしてきた。大ラッキイである。やがて僕も立派な大人になり下手に購買力が付いたせゐでVCRを２台も買ひ込みああだかうだ言ふやうになった。
かうなると思ひ出されるのはむかし観て興奮した番組の数数だ。ＴＶ情報誌に目を光らせて再放送のチェックに余念が無いけれど，永久保存版たり得る番組はなかなかやってくれない。ＴＶ局自身が原版を失ってゐるケイスも多からう。『テレビ探偵団』でも民生用VCRがソースと思しきヴィディオをよく流す。
近頃ではVCRソフト会社からのリリースが無視できない。実に意外な所から意外な番組がリヴァイヴァルを果たしてゐるが，遂に決定版が出た。『宇宙戦艦ヤマト』である。
『ヤマト』は『海のトリトン』や『どろろ』と並んで，死ぬ迄にもう一度観たいと思ってゐる名作中の名作，万難を排して手に入れる価値がある。ヴィディオで発売されると知った時には震へが来た。
さっそく甘木を責め立てたところ甘木の郷里の友人が『ヤマト』をレンタルして録ると言ふので一枚噛み，このほど入手した。ＶＨＳのレンタル_ヴィディオをＥＤβに落としてマスタを作り，これを３人で夫夫が夫夫にダビング編集する。
折りしも宮崎勤が渦中にありアニメ_ファンはみな猟奇変態オタクだと思はれてゐる昨今，１巻２話入り全13巻を一どきに攫って行った結果レンタルヴィディオ店に居合はせた全員に白眼視されたさうだがそんな事はどうでも良い。後は野となれヤマトなれである。
『ヤマト』は僕が中学１年の冬に初放映されたのだからもう15年以上も前の作品だ。あらゆる点で画期的だった此の番組に僕はたちまち夢中になったのだけれど，当時は視聴率が全然取れないで──毎日曜日19時半と云ふゴウルデン_タイムでありながら２・３％，広島テレビ（日テレ系）だったと思ふ──放映中に打ち切りが決まり結局２クール26話に縮められてしまった。＊＊中学校でも裏の『猿の軍団』派が優勢だったのを憶えてゐる。
それが何度目かの再放送で人気爆発，劇場用再編集版が制作されて初のアニメブームを巻き起こしたのは周知の通り。だから僕は「ったく今頃んなって騒ぎ立てやってよ」と嘯く偏屈マニアの第１世代でもある。
さて少なくとも10年振りに観たヤマトは，やはり圧倒的である。呆れた事に殆どのシーンを憶えてゐた。それでも連続して鑑賞するなら，興奮もすればほろほろと涙も零れる。
異様な情熱を以てダビングさせろと喚いた僕に甘木は，いま観たらきっと幻滅しますよと判ったやうな口を利いたが『ガンダム』とは違ふのだ（甘木はガンダム世代）。昨夏テレビ東京で再放送された『機動戦士ガンダム』は全話（43話）エアチェックしといたのを６時間のダイジェスト版に切り刻んでやったが，『ヤマト』には捨てエピソードなど皆無であり，１秒のカットも勿体なくてやれないのである。
不一
1989年６月吉日
そういう蛍光灯のCMがあったのだ。確かナショナルだった。（02.5/12記）
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荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険』第１部・２部の敵主人公。吸血鬼なので太陽光線に弱い。
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間の字はほんとは門構えに月。
おれはいわゆる「ハシゴ高」や「歩ぢゃない捗」はどうでも良いが，「土に口の吉」は欲しいと思う。でもまぁコンピュータに全ての漢字を載せろとは言わない。
かつて旺文社文庫には内田百間の全集があり，おれはうまい具合にこれに間に合っている。現在は何社かに分散して有名どころだけ文庫化されてはいるが新カナで興醒めも甚だしい。百間は須く歴史的カナ遣い版を入手すべし。（01.5/12記）
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ディーン_マーティン？ もちろん遣い方まちがい。
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