東京月記8810

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冠省
さ,寒い,長袖を出してくれ秋来ぬと目にはさやかに見えねども世に盗人の種は盡きまじ
今日は10月も29日で,初めて暖房を入れた。エアコンが完黙した期間が1箇月半もあって,今年は秋が長かった,と言ふより夏が短かったんだね。

何を隠さう現在はもう氷河期に這入り掛けてゐる。最近の間氷期が終はったのは大体江戸時代の半ばで,幕府をじり貧にした大飢饉の連打も要するに氷河期の御挨拶で起こった物だ。季節が冬一辺倒になるほんまもんの氷河期が訪れる迄にはまだ数百年かかるから年に依っては暑ぅい夏やあったかい冬があるかもしれないけれど,それは単なる揺れであって総体的には寒冷化を強めて行くだらう。
当然ながら食糧難が予想されるので,僕は米の輸入自由化に反対である。米ぐらゐ完全な自給にしておかないと将来かならず兵糧攻めに遭ふ。白人はアジア人をせいぜい金儲けの種にしか考へてゐない。どうなっても良いと思ってゐる。特に合州国は信用できねー。尤も社会主義国になると言ってソ連から輸入すると云ふ手もあるが(ソ連は国内でかなり無理をしても食糧を供給するだらう,悪くとも初めの内は)。

僕はまぁだスーツを3着しか持ってなくて,夏・冬・春秋を夫夫ぶっ通しで着続ける。冬のボーナスを一部衣服に割かねばならんかなと曖昧に考へてゐた所が,そんな甘い気持ちではゐられなくなった。
今の季節を司るスーツは教育実習や就職活動に間に合ふやうに作った物で,当然身にぴったりと合ふ,筈が,きついんだな此れが。よく考へたら実習なんてもう3年半も前の行事でありんした。腹周りも腿周りもぴちっとしてもはや余裕が無い。上着も何だかつんつるてんである。苦しいと云ふ程ではないので毎日着てゐるけれど,来春も脚を通し腹を収める自信はどうやら持てないなあ。

尻がでかくなった為にスラックスの有限なる生地は後ろに取られ,金玉が目立って仕様が無い。ぽっこりと,えも言はれぬ卑猥さで,左曲がりなのがばれてしまふ。満員電車で女の子が側に来ると前がついつい膨らみ,ぱんと弾けさうになる。故意に強調してゐると思はれたら厭だ。かう云ふのはセクシィとは云はんでせうな。消極的な露出魔に見られないだけましであらう,見られてたりしち。

冬のと春のと2着作るのは,金銭的にしんどい。でもどうしようもないか。そごうグルウプの商品券が数万円分あるから有楽町へ参らう。


おそ松くん」が始まっておやおやと思ってゐたら「ひみつのアッコちゃん」まで復活した。大変懐かしい。アッコの愛猫(シッポナ)が艶っぽくて可愛いですな。前テーマは昔の儘で良ろしいが──誠に理路整然とした良い歌詞だ。何と井上ひさし作──後テーマは詰まらない。「アッコちゃん来るかと校舎の外れまで出てみたが〜」のが良いよなあ。

もっとくだらないのは「美味しんぼ」である。全く反吐の出るやうな歌だ。ドラマの筋立ては「巨人の星」の癖に,思ひ込んだら試練の道をにしろ。アニメでうまさうな料理を描ける筈が無いのに,どぼじでTVでやるの。さては食糧に関する行政や企業の告発が主眼か。その辺りを気にしてスポンサを確認したらば森永製菓が交じっとった。森永は原典を読まなかった訳ぢゃあるまい。お菓子ネタの話に注目しよう。


僕はプロフェッショナルの至藝と云ふ物が好きなので(ああっ,いま千代の富士が大乃國に負けた)素人がTVに出て来るのを苦苦しく思ひ──クイズ番組もタレントしか出ないのが良いですな。「連想ゲーム」はやらせが露骨すぎる,「ヒントでピント」辺りが好ましい。これくらゐゲストを蔑ろにする番組も珍しく,毎回司会者とレギュラ回答者が仲良く大騒ぎをしてをる。僕も出たい,こらこら──同時に芸の無いプロもいまいましい。動物に何かやらせるのも嫌だ。

だからと言ふのぢゃないが若い者の間では視聴率99%と言はれる「ねるとん紅鯨団」には一瞥もくれず(仮面ノリダーは観る),裏の「ジェシカおばさんの事件簿」(MURDER, SHE WROTE)を愉しみにしてゐる。元元「演芸指定席」を録るのに早目にNHKに合はせたらやってゐたてな存在だったのが,余りに面白いので定番に昇格したんだな。海外サスペンスシリーズと銘打ってをり,たぶん合州国製と思ふ。森光子さんの声がどんぴしゃ嵌まり役で,温泉とコーマンしか出て来ない国産2時間ドラマなぞ鎧袖一触である。わざわざ外国から買って来る程の優れ物と比べるのは酷か。
単発のアニメならやたら優秀な作品ができたりするんだがな,役者も脚本もへぼなんだらう。第一とにかく画面に金が掛かってゐない。

子供番組の振りをしてゐる「パオパオチャンネル」のピッカピカ音楽館は誠に面白いコーナであって,ヴィディオ編集をして余ったテイプの埋め草に最適である。テイプの尻までサーチして本編を飛ばし,ピッカピカだけ聴く事も多い。物事の成り立ちとか由来とかル−ルとか専らガキ共を啓蒙する内容の詞が主体だが中にはナンセンスぽいのも挟まれ,立派な大人の私も喜んで観てゐる。楽曲の性格上「みんなのうた」よりも画像に寄り掛かるから,カセットなりに落としたらきっと詰まらない。駄作の割合が低く,通常の歌や歌番組(スティングのライヴなんかは覗く)のくだらなさを浮き彫りにしてしまふ。僕も今度ああ云ふの書かうっと。


一時期CDプレイヤを買ふ気になってゐたが危ふい所で気を取り直し,大事に至らずに済んだ(何の事は無い,ハンディ_コピイ機で予算を喰ひ潰したから熱が冷めたのである(しかしハンディ_コピイ機なんか買ふもんぢゃありませんよ,皆さん。まー役立たずなんだから。398のCD機の方がましだった。否,細細と使ってはゐるのだ)。CDとADのシェア比なんてのは今や9対1ぢゃ済まないかしら。

それでもCDを入れるのはまだ早い。ADが此のまま消滅するのは必定でもまぁだ数年は掛かる(ケンウッドから何とプレイヤの新製品が出た)。録再CDは先にプロユースで実用化されるさうだ。DATで揉めたのが後を引き,一般市場にリリースされるのは難しいかもしれないな。CD−Iの魅力的なソフトが出たら──当然現行CDとコンパチの筈──導入を検討する事に致す。CD−IVのお粗末さにはびっくらこいたから勢ひ慎重にならざるを得ない。

間も無く賞与が出るんだ。これ迄ずっとAV機器を買ひ揃へて来て今回なにも無いのも業腹だから,考へる。
EDTV対応TVが来秋放送開始を見越して発売されたが,これは高い。今のTVで充分とは思はないけれど,ハイヴィジョンがスタートした時には3方式が並立する事になる。放送局側がちゃんと3種類の番組を制作するか疑問だ,上位互換が保たれれば良いが。

ソウル五輪の開催中は東京駅の北口コンコースにハイヴィジョンのデモ機が設置され,浮浪者やサボリ営業マンの憩ひの場となってゐた。三菱製で40in.だったのに会場の広さと展示位置のせゐでちっとも迫力が無い。画像は暗く,ピン惚けでのっぺりしてをり,デモにも何にもなりゃしない。秋葉原の店頭で見る大画面通常TVの方が圧倒的である。あれぢゃ三菱がかはいさうだ。ハイヴィジョンの実力も疑はれよう。

安上がりで効果の著しい(目新しい)モディファイは何か。機器のグレイドアップは1機に就き20万は掛かる所まで来てゐるので今回は見送り。スピーカを4ch化しようかと思ふ。一般に最も高価に付くスピーカの交換も僕の場合は2万円足らずで済む,フロントと同質のユニットを使っても(使ふべき)ね。
現用スピーカは10cm1発のBH(バックロード_ホーン)で銘器A−10オリジナルのA端子に繋いである。同じユニットを床面積を狭め全高を上げたDB(ダブル_バスレフ)の箱に納めてB端子に接続するんだけど,B端子の手前で細工をするから単なる並列でなくマトリックスA+B駆動である。

資金と時間と床の余裕はあるが,春の引越しを控へてゐるのでどう転ぶか判らない。荷物を増やしたくないのよ。
本当はワープロを買ひ換へたい。ワープロは相変はらず半年で陳腐化するから,購入のタイミングは縄跳びの長いのに飛び込む其れよりも難しい(おや珍しく綺麗に纏めたな)。

前に僕の理想のワープロをちょろっと書いたけど,あの後すぐにサンヨーからシステム_ノートが出て,何だか企画を盗まれたやうな気がした。しかしあんな物ではまだ甘い,ルノアールのココアのやうに甘いの
プリンタ部のセパレイトは正しい。しかしだな持ち運びの便に腐心するこたぁねえんだ。あんな硬くて持ち難い物を抱へて誰が街をうろつくもんか。僕が言ふのは家の中での移動である。寝転がったりうんこしたりTVを観たり,一緒に部屋から部屋に付いて来るぐらゐのコンパクトさが欲しいのよ。もう10cm長くなっても良いから10キイを別にしてくれ。分かったか。

いま新規に買ふとしたら日立カシオの奴だな。何となれば10キイの外付けに積極的なのは此の2社だけだからだ。しかしてもはやキヤノン機から離れる訳には行かないんだな。フロッピイ4枚に大量の情報がはふり込んである(3枚は満杯に遠いが)。キャノワードαシリーズから外れると全部うち直しである。そりゃないよ,いやいやえん。これだから他社機リプレイスは難しい。

不一

1988年10月吉日


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written by nii. n