先般ＳＥ残酷物語と題した新聞記事がありましたな。僕が口に糊するソフト業界てえ所は魑魅魍魎が跋扈し百鬼が夜行する気違ひ放送禁止世界であって，膣にもう大変な労働量。残業時間が月に100時間を越えるのはざら，稀ではあっても200時間に垂んとする人もある。勿論これが恒常的に続く。
月当たり100時間の残業と云ふと，土日に８時間出る他に毎日１時間の居残りをするか日曜だけは休んで毎日９時まで働くかしなければ成し得ない偉業である。200時間となると，あれは地獄ス，想像するだけで背筋が寒くなるスと参豪君もアーノルド_シュガシュガシュネッガーも逃げ出す。たまりませんなー。

ったって僕の月当たり最大残業時間は入社初年度の９月頃に樹立した98時間/月である。惜しくも100時間を割ってゐる。

僕は此れ迄に徹夜を４回やり，土日を潰したの（休出）はまぁ数へてらんないね。うーん，働き者だな。

でもそれは前の仕事での記録であって，今はあんまり働いてゐない。殊に昨秋からは20時間も残業をすると，おぉ働き過ぎだぜと自分でげんなりする。
現プロジェクト内でも僕は怠けてゐる方で──僕は優秀なので仕事が非常に早いと云ふ点も考慮して戴きたい──残業の多い人は多い，当たり前か。絶対的にも相対的にも受け持たされる仕事の量が不均衡であるが為に，勤務中に喫茶店でだはははと笑ふ奴と徹夜中にマシン室で腹減ったと泣く奴とが同時にできる。

下は読売新聞に載った人生相談の記事（しかし読売はぜんっぜん面白くないですな。噂に違はぬ滓新聞である。購読紙を替へたのをつくづく後悔してゐる），質問者も担当者もソフト業界とソフト技術者を誤解してゐる。つまらぬ先入観に支配されてをるな。

プログラマはプログラムを作るのに神経を遣ひはしないものだ。人間を相手にするからストレスが溜まるのである。また勤務でＶＤＴ（ディスプレイ＋キイボード）にへばり付いてる人間が家に帰ってからもＴＶ三昧とは考へ難い。さう電磁波を浴びてたんぢゃあ身体が持ちまっしぇん，古いな。

この夫は単なるアル中であらう，何を生業としても気違ひになる人だと思ふ。Ｈ子さんの住まひは茨城のやうだが，それなら日立関係の会社である可能性が極めて高い（名前まで日立を暗示してゐる）。

スーパ_コンピュータと云ふと普通の人人はアトジュウビョウデバクハツスルカクリツワキュウジュッパーセントデスなどと飛んでもない予言を（音声で！）するランプちかちかメイタぐるぐるのでかい漬物樽を想像するだらう（想像しない？）。これはまぁ円谷プロなんかが教育した結果なので責める訳には行かないが，現物は引出しの無い箪笥みたいな物で見たら拍子抜けする。

スパコンの性能を云云するのには（メイカしか云云しないが）よくπの演算結果が用ゐられる。富士通が３日掛けて出した数千万桁が最高だったのをこないだ日立が億桁に押し上げて世界一を奪回した。だからどうだと云ふやうな下らん勝負だけれど，ハードの力量を示すのはかう云ふ方法しか無いのかもしれない。
とは言へシリコン素子で演算速度を上げるのはもう限界であるから，結局の所ソフトウェアの品質がシステム全体の効率を決定する。

ソフトウェアとは要するにコンピュータ（ハードウェア）に喰はせる情報その物である。即ち無形だが，製品と同じく納期がある。プログラムの開発に当たっては事前にユーザとの間で折衝を繰り返しぎちぎちに仕様を固めておかねばならない。その上で納期が決まる。

所がユーザってえのは気紛れだから，やっぱり此所はかうしてようんと必ず仕様の変更を言って来る。莫迦高い金を払ふんだから無理も無いけれども──実際ソフトの開発料は信じられないほど高い，此所に書けないけどさ──この場合でも納期はまづ変はらない。明日までに言偏の付く漢字を100個書いて来なさいと言はれて汗掻いて仕上げて寝てゐたらやっぱり三水の漢字にするよーんと先生が夜中に電話を寄越して来るのと同じである。できまっしぇんと泣きを入れても金払はねえぞと脅されるので，零細なソフトハウスは前述の残酷物語を紡ぐ事になる。

仕様がはっきりしない内に取り敢へず開発を始めたりプログラムを作り終はってから仕様書を起こす場合もしばしばで，品質よりも納期を優先する態度が見受けられないでもない。

まぁできるだけの事はするけれど僕等のやうな下っ端は，納期なんて延期される物だと勝手に思ってゐる。済んまへんな，できまへんでしたわ，ははは。ユーザと会って謝るのは課長とか主任とかの仕事である。全く可哀想だ。
「長」にはなりたくないですな。役が付くとボーナスカットやら残業手当カットやらでしかも仕事は減らないから詰まりは只働きが強制される。あーやだやだ，長は嫌だ，蜂が良い。お鉢が回って来たら何と言って断わらう。

ラジオ番組の投稿で常連にならうてな連中にはなかなか素敵な変名を名乗る者もある。その昔チャートマニアがこぞって聴いたＮＨＫＦＭの「リクエストコーナ」（石田豊さんは現在ＡＭ放送で番組を持っておいでだ）でレギュラだったＣＬムーアなんてのは今だに憶えてゐる。いま何やってんだらう。

それに引き換へ「マッチの妻」だの「悔しかった女」だの，また「小生」だの「お試しあれ」だのと文面に載せる奴が後を絶たないのはどう云ふ訳だ。書いてて面白くないってのが判らないかなあ，ええ。ほう，おまへは此の手紙が面白いとでも思ってゐるのかな。あたた。

僕が聴いた中での変名の最高傑作は，「ビートたけしのオールナイトニッポン」に何度か登場した「照山もみぢ」。これは良いね。姓と名の連なりも字面も耳触はりも文句無し。秋の夕日に，と喚起される情景にも品がある。

僕もよく偽名を使ふ。クリーニング屋やＤＰＥ屋と云った一過性でしかも必ず名前を訊かれる場所では本名を教へない。アンケートや署名運動その他に引っ掛かった時は当然でたらめを記入する。身（プライヴァシ）を守るのが第一義だが，「＊＊です」と言った所で一発で聞き取れる店員などゐやしないし正しく書けるのも皆無であってたんびに説明するのが面倒臭くてたまらない。勢ひ有り触れた苗字を借りる事になる。

多いのは松本姓と内田姓，言ふまでも無く松本隆先生と内田百間先生から戴いた名だ（松本隆先生は最近明きらかに作品の質が落ちてゐる。そろそろ破門しようかと思ふ）。

ＤＰＥで友達のお使ひを頼まれて「伊集院秀磨」なる名で申し込んでやった事があったけど，よく考へたら受け取りは黙ってビルを差し出せば済むんだよな，恥づかしいのは名乗る時だけだった。

オリジナルの変名もいろいろ考へたけれど，先の照山もみぢを凌ぐやうな秀逸は未だ思ひ付いてゐない。

志ん朝師に心酔するあたしとしては古今亭を名乗りたい。名乗りたいが古今亭にせよ三遊亭にせよ素人が此の偉大な号を使ふのは許されぬ。と言って春風亭ぢゃ軽いし林家は僕の趣味ぢゃないし桂では普通の姓に取られてしまふ。さはら亭砂場苦では落研だ。亭号は諦めよう。

青空たかしきよし・中田カフスボタンの類はふたりゐないと意味が無い（因みに前者はツービートの前の名，勿論たけしがたかしであった）。

窮して捻り出したのが此れ，紅羅坊仁哉である。なあんだ，それは。

紅羅坊と云ふのは「天災」に出て来る心学の先生の名字で，フルネイムは紅羅坊名丸（べにらぼうなまる），べらぼうに怠けるってえのはおまへさんかいと擽りのネタにされる。
専攻の心学とは，知己知足がモットーのせこい学問だ。紅羅坊仁哉，俳号なら仁哉。未だ使ふ機会に恵まれないが，此所に書いたら何だかつまらなくなっちゃった。

初心に戻って子供の名前の話ね。子供の名前を決めるに際しては今でも占ひが有力視されてゐる。しかし画数で占って意味があるのかしらんねえ。漢字の簡略化と仮名遣ひの問題が此処でも顔を出して来る。例えば「浜田」と「濱田」ぢゃえらく違ふし「かおりちゃん」と「かほりちゃん」でも一画の差があるぜ（はて，平仮名の画数って決まってんのかな）。
いったい画数占ひが確立したのはいつだ，あーん。

てな訳で，有望なのはこっちだ。音声占ひである。

音声占ひと云ふのは音声で占ふ。自分の名が呼ばれる度に己と云ふものを強烈に意識する，これが性格に影響しない筈が無い。耳で聞いた音の響きが対象なので，本名よりも愛称・通称が優先する。うーん，何て合理的なんでせう。

本当は子音と母音の組み合はせで占ふんだけど，場合の数が膨大になるから此処では母音についてだけ書く。っても僕だって此れしか知らん。

撥音のＮは上に付く母音を，促音は下に来る母音を強調する。

＊＊の場合，子音を取り去るとＥＩＩＵとなってＩを中心にＵとＥの要素も見え，即ちお喋りで好奇心旺盛・剽軽だが意外に冷たい。＊＊姓も勘定に入れるとＡの支配が圧倒的となり開放的で明朗で且つ散漫なバガヤロ様に落ち着く。＊＊＊先生は非常にＯが強く，感激屋で指導力もあるが強情な面もある。＊＊は此れにやや明かるさが加はる。
僕なぞＩオンリで，名前の方で呼ばれてゐた大学時代は円満な性格だったが就職後は次第にいぢけて来る。
こんなん出てますけど。結構当たってんダロ。

どうも話が散らかりますな。子供の名前ね。僕の子供の名前はもう決まってゐる。俺は一昨年の南野陽子か。極力早い時期に胎児の性別を鑑定して貰ひ男の子の場合は直ちに堕胎する事になってゐるからふた通りも考へなくて良い。男女共用の名前はどうも子供にトラウマを残しさうで怖い。

ずっと以前に閃いた名前に「まりん」と云ふのがあった。平仮名でまりん。鞠と海を連想して音も優しいので気に入ってゐたのに，『エイジ』に高杉まりな・『究極超人Ｒ』に西園寺まりいが登場し実体としては渡辺満利奈などと云ふタハケが現はれた為に厭になった。第一まりんでは本質的に意味が与へられてゐない。

代はって候補に挙がったのは「みさと」ちゃん。イメイジとしては山内美郷である。ｍＩｓＡｔＯと全方位性格因子網羅・ウェルヴァランスの見事な名前だ。所が此れまた渡辺美里てな莫迦垂れが出て来てちょっと困った。まぁ美里は顔は可愛いのでそっちを戴かう。戴くなよ。あの陰痴気ぽさは名前でない所から立ち上ると見た。

さて，こんな事をくだくだ書いたのは勿論牽制である。君の周囲で（そして君自身も）この名前が採用されさうになったら全力を挙げて阻止して貰ひたい。易しく読めて余り陳腐でなく音も字面も意味も美しい名前なんてさうは無い。てめえで先に付けれゃ良いぢゃん。御尤も。

新聞は速報性をもはや問はれない。どうして週刊紙ができないのかしらとずっと疑問に思ってゐた。それが出るさうだ。ＡＥＲＡと云ひ，朝日新聞社の慧眼である。名前も広告も気に入らなかったが，期待してゐる。週刊朝日やNEWS WEEKになってはたまらん。週刊の縮小版みたいなのが良いけど，現物を見てゐないので何とも言へない。一部300円で宅配してくれると言ふから新聞は止めだ。ＡＥＲＡにＴＶガイドを合はせて行かう。
しかし週刊紙の形態はみんなに真似っこされるだらうな，ヤングジャンプみたいにね。

所で新聞取るの止めたら困る事がふたつある。ひとつは優秀な鍋敷きを失ふこと，今ひとつは有益な折り込み広告が這入って来なくなる事だ。僕はいやらしい下着のチラシが好きなんだけどな。