神奈川月記9012b

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冠省

今年かいといたネタのフォロウをひとつ。

数年来の逸材と誉めちぎった浅草キッドは『激突!笑いのデスマッチ』で予想通り10週の勝ち抜きを納めた(放映はまだ)。

高信太郎に気に入られても仕様が無いとかあの番組で勝ち抜くのは面白くない証拠とか意地の悪い意見も確かにあるが,取り敢へず水準以上のネタが10本はあると云ふのは強みになる。僕自身の判定と審査結果とがさうさう喰ひ違ふ事も無いし,けっこう信用できるマッチングなのである。

ところが何と云ふ事でせう。10週目の収録を終えた次の日にボケの玉袋筋太郎が車に撥ねられて病院送りになってしまった,さうまでして笑ひを取らなくたって良いのに。

重体ださうで未だに復帰を果たせず,『軍団クイズ』の水道橋博士も心成しか寂しさうだ。再起を祈らうではないか。


BS-3aがうまいこと打ち上がって衛星放送は3chに増えた。稼働前から半壊だったBS-2を捨てて3に乗り替へたNHK2局に,日本初(世界では初ぢゃないのかしらん)の民間衛星放送局が載っかる。ボーナスの遣ひ道が無くて困ってゐるところだ、これに注ぎ込んでみよう。

民放BSの正式名称は日本衛星放送株式会社と云ひ,略称はNEH,ではなくてJSBである。JSBでは『少年ジャンプ』のお尻と間違はれるのでWoWoWと呼べと言ってゐる。

WoWoWの特徴を決定づけるのは民放でありながら有料であると云ふ点だ。視聴したければBSチューナ毎(厳密には後述のデコーダ毎)にWoWoWと受信契約を交さねばならない。

受信料はたいへん高い。3箇月定額前払ひ6000円の他に加入料の2万7000円が必要となる。また憎い事にNHKのやうにこっそり観る事はできない。

NHKも受信料の徴収には四苦八苦してゐると聞くけれど,世の中には篤志家が多いと見えて何とかやってゐるやうだ。NHKを国営と信じて唯唯諾諾と納めてゐる向きもあらうが,一戸を構へるとなると御近所の手前や面子や訳の解らない義務感が生じて払はずには居られないのかもしれない。

企業からの広告費も無くNHKのやうな不透明な権威も無い新参放送局は己の存続の為に不正受信者の排除に当たる必要がある。

WoWoWの採った手段は走査線の撹拌伝送だ。走査線の1本1本を途中で切って左右を入れかへる。切る場所は各走査線で任意である。従って受かる事は受かるがめちゃくちゃな絵しか映らない。極彩色の「砂の嵐」を想像してもらへば解りやすい。音声は全き無音である。

ちゃんと受信するにはWoWoW提供のデコーダを介入させる。デコーダはWoWoWと受信契約をした人にだけ宅配され──貸し出しではなく譲渡である。早い話が2万7000円でデコーダを買ふのだ──市販の予定は無いさうだ。

それでは入会金だけ払ってデコーダを手に入れればこっちの物かと言へば,さうはWoWoW卸さない。IC3個の簡単な機械だからハードの自作も可能だらうがスクランブリングのソフトはWoWoWが握ってゐる。デコーダ1台1台にIDが振られてをり,金払ひの悪いIDにはデコードのキイを送信しないのである。42億個もあるIDをどう管理するのか知らないが,とにかく只観は完全にシャットアウトできるらしい。

契約者から確実に受信料が振り込まれると云ふ事は,視聴率を全く気にしなくて良いと云ふ事だ。これが吉と出るか凶と出るか。元来かう云ふ性格だった筈のNHKの堕落振りを見ると,案外はやくめろめろになるかもしれない。

さう言へばCATVはどうなってるのかな。

さて肝心の番組内容だけど,映画・スポーツ中継・コンサート中継が主体と云ふ話で,正直いって僕には魅力に乏しいものばかりだ。2時間3時間あたり前と云ふ編成なので最初から最後まで観続けるなんて到底できない。

BSシステムを入れて僕が喜ぶ番組と言へば,むしろNHKの演芸物(不定期。正月特番に淡い期待を寄せてゐる)の方である。

何を隠さうWoWoWだけではBS導入を動機づけるに不足だった。もうひとつあるのだ。

WoWoWに割り当てられたチャンネルは映像1に音声4である。しかし本放送はAモウド_ステレオなので音声は2chしか使はれない。それで余った2chを独立した音楽放送に充てるのである。但しこれをやるのはWoWoWでなくて衛星デジタル音楽放送と云ふ別会社(St.GIGA)である。民放がTV・ラジオの両方を送り出すのは何とか法で禁じられてゐるらしい。

内容が凄い。新譜CDを含めて24時間ぶっ通しのPCMディジタル放送だ。***でも結局FMがきれいに受からない現状から,一番たのしみなのはこのチャンネルである。

さうさう,問題がひとつあるね。もしだーれもWoWoWに加入しなかったらどうなるんでせうか。

WoWoWは7年後に600万世帯の加入を見込んでゐるさうだが,そんなに集まるものかしらん。恐ろしく元手の掛かる事業である,加入者不足で倒産でもしたら関係者が全員首を括っても収まらない。

心配御無用。放映する映画にポーノを交ぜれば良いのだ。

BSチューナはVCR(EDV-7000)との絡みがあって,ソニーの物が都合が良い。7000番からBSチューナを操作できるのである。いちおう最上級機のSAT-100GRXを狙ってゐる。

むしろ選択に困るのはアンテナの方で,スペックを見てもよく解らない。細かい数字を追ふよりも調整のし易さと固定の堅実さが重要と考へ,利得と耐風圧の兼ね合ひから50cmクラス・平面アンテナで強力無比な取り付け金具の付いた東芝BSA-F45を本命に据ゑてゐる。

ところで街はまたぞろ省エネ機運である。深夜TVはちょっと控へた方が良いんぢゃないのと郵政省が呟いた瞬間に,各局だいたい3時頃に放送終了となってしまった。いくら認可事業とは言へ腑甲斐無いと云ふ感は否めない。NHKが衛星放送の終日放映を止めないのが却って反骨に見える。

煽りを食ってお気に入りの『鶴瓶・上岡パペポTV』が関東で打ち切りになった。やれやれ。


********から引っ越す眼目のひとつは単車の駐輪場を同じ敷地内に確保すると云ふ事だった。******は下見の段階で行けると踏んだのだけれど,蓋を開けてみると割り当てが無い。この11月に抽籤をやると言ふから期待してゐたのに,やはり駐輪スペイスは手に入らずじまひである。

駐車場なり駐輪場なりの借り賃は家賃に含まれてをらず,別に金を払ふ仕組みになってゐる。その権利と引責は更新制で,つまり越して行きでもしない限り誰も手放す訳は無いのだった。抽籤はさう云ふ空きが発生した時に限って行なはれるものなのだ。御尤もながら悔しいね,どうも。

今年(90年) は自動車免許の更新の年である。免許証には「昭和65年の誕生日まで有効」とあるから永久に遣へるのかと思ったら駄目ださうだ。

初めて免許証を取得したのは82年の1月なのだが更新はまだ2回目である。最初に原付のを取ってから翌年9月に普通免許を受け85年には自動二輪が追加になってをり,その度に自動更新の扱ひになってゐた。気遣ひは不要だったのである。

前回の更新は品川の鮫津試験場でやった。

その年の5月にスピード違反(32km/h)でパクられてゐたからさあ大変,略式裁判に罰金(反則金に非ず)1万7000円に減点6に免停30日を受けて前科者になった挙げ句の更新だから変なヴィディオを観なければならず──若奥様が実は魔法遣ひで旦那を常に遠隔視してをり,彼が向かう見ずな運転をすると時間を遡行させやり直しを図ると云ふもの。歴史の改竄だ,スーパージェッターに見付かったらただでは済まない──えらく時間が掛かった。

神奈川県には二俣川1箇所しか試験場が無い。会社をサボッて平日に行きお負けに雨模様だったにも関はらず彼所はなかなかの盛況である。ベンチが空いてるのに床にしゃがみこんでガン垂れてゐるヤンキー共に舌打ちをしながらも,流れるやうなフォーマットに乗って手続きは早く終はった。視力検査でひとつ間違へたが絶対に落とさない方針らしくて,ハイもう一度なんて言ってくれたよ。

即日交付だから2時間ばかり待ってゐれば当日中に新免許が下りるのだけれどどうせ乗る物は無い,700円はらって書留郵送にしてもらった。

時を隔てた同スケールの写真を並べると,太ったやうな痩せたやうな,よく似た別人と云ふ趣がある。3年でこのくらゐの変化なら大したものだと甘木は言ってくれたけれどやっぱりちょっと老けた気がする。

僕が自動二輪の免許を持ってゐるなんて,現物を見せるまでなかなか信じて貰へない。

できれば単車を買ふつもりだったので,カタログ審査にはおさおさ怠り無い。

  1. 車検が無くて
  2. 安く
  3. 複座であり
  4. デザインの良い
  5. 空冷4ストの機械

が希望である。

猖獗を極めたオンロウドのレーサ_レプリカ(フルカウルで,型番を読むまで区別の絶対つかないやつ)ばやりもやっと鎮静化に向かひ,反動でノンカウル(ネイキドなんて言ってる)の街乗り重視タイプが持て囃されるやうになってきた。それは即ち僕がコガタナを選んだ時に最優先した条件なのだけれど,かうなると乗ってやるもんかてな気持ちになる。

それで今はオフロウドに関心を寄せてゐる。尤も今度はオフロウドでレーサ_レプリカがブームになってゐるのだが。

オフロウドに流れた理由は他にもあって,まづオンロウド車は恐ろしく高くなった,空冷エンジンは冷遇されて殆ど搭載されず,ハンドルの切れ角が小さ過ぎて取り回しに難渋する。

オンで僕の好きなバイクはホンダのVT250 SPADA・スズキのCOBRA/WOLFてなところだが,みんな水冷で45万から55万もする。これはちょっと前のナナハンの値段だ。
昔に比べりゃ金も這入るしちっとは幸せさうに見えるかもしれないが,30万円を超える買ひ物はおいそれとはできない。それに今年は引っ越しと家財の刷新で100万近く遣ひ込んでゐる。

排気量を落とせばそれなりに安くはなるのだけれど,車格も比例して小さくなってしまふ。重いのも困るが車体は或る程度ヴォリウムが無いと窮屈で堪らない。コガタナくらゐの大きさは欲しいのである。

ハンドルの切れ角は素人が見落としやすいポイントで,レーサ_タイプなんか嘗めとんかと叫びたくなるくらゐ切れない。確かに走行中の単車はハンドルでなく重心の移動で曲がるんだけどね,車庫入れや車の間のすり抜けでは最小旋回半径がものを言ふのだ。渋滞に嵌ったとき四輪と一緒に待たないといけないやうでは都市で単車に乗る意味が半減してしまふ。

てな訳で時代はオフロウド。

オフ車は概して大柄で,125ccでもさう見劣りはしない。税制から言っても小型車は圧倒的に有利だ。

スズキのTS125R・カワサキのKDX125SRなんてのは抜群に格好良い。どちらも単気筒2スト水冷で22PSを絞り出し,この数字はコガタナ(2気筒4スト空冷)のそれと同等である。しかも車重が50kgは軽いから僕が少少ふとったにしても機動力は上回る筈だ。コガタナのパワをも遣ひ切ってゐなかった僕なら125ccで充分なのではないか。
しかし数値の上では同じ馬力でも,排気量の差と云ふのは確かにある。CDプレイヤがどれも同じスペックでありながら出てくる音に雲泥の月スポのピンキリの恋の季節の違ひがあるのは周知の事実である。それにせっかく中免もってるんだから細やかな見栄も張りたい。

中型とは126ccから400ccの排気量を指す。車検の無いのは250cc以下でタンデムできるのは51cc以上だから,僕の希望は現実に則して言ふと80ccから250ccの間となる。ついでながら高速道路に載れるのは126cc以上だ。

オフ車の中型は何故か200ccとか220ccとか半端な数字が多い。どぼじで200が半端かと言へば,単車のエンジンは1Lの半分の半分の半分てな排気量が基本だからである。

中型オフ車としてはTS200R・DR250S・KDX200SRなどがある。しかしいづれも高価でちょっと手が出ない。経済性やメンテのしやすさから言っても空冷4ストは外したくない条件である。エポポ・コガタナはスズキ車だった。できたらスズキが良いね。

ありとあらゆる事を慮って,今はヤマハのSEROW225に落ち着いてゐる。排気量は更に半端な225ccの4スト空冷単気筒である。セローと言ふのは酔っ払ひが電車のフォームに撒き散らす奴ではなくてヒマラヤに住むカモシカの事ださうだ。

デザイン今一・カラーリング今二だけど諸元表を見ると文句の付けやうの無いほど優れたバイクである。事実オフ車としては爆発的に売れてゐる。

うるさくジャンル分けするとマウンテン_トレイルのカテゴリに這入るが,実はマウンテン_トレイル車はセロー1種しか無い。オフロウドよりも更にラフな道無き道へ分け入る為にシンプルでタフでトルク重視の質実剛健な奴だ。

あと駐輪場の確保さへできればGOサインである。

獣道や河川を渡れるバイクがアスファルトの上を快適に走れない筈が無い。……しかし僕がセローをイメイジする時の背景は,地震か戦争か,廃墟になった東京の瓦礫の山である。コンクリの破砕岩やギャップをクリアするセロー。僕が生き残ってゐるのがづうづうしい気もするが。


年内の設営は難しいと思はれたBSシステム,ロケット**店の盡力に依って稼働の運びとなった。めでたいめでたい。

12月13日から機種選定と下見を始め(賞与の出たのは10日)18日に発注した。

チューナのソニーSAT-100GRX(\75,000) はすんなり確保できたもののアンテナは二転三転,本命の東芝BSA-F45(\45,000)がもう無いとの事で同じ平面型のソニーSAN-F500(\42,000)に切りかへたがこれも叶はず,結局ロケットに在庫のある内からTDKのBS-TA382(\unknown)に決まった。これにNECのベランダ固定用ポール(何でも良いのだ)にマスプロアンテナの同軸ケイブル10m(半分も要らなかった)を付け,締めて10万6000円。因みにソニー・東芝コンビの試算では11万ちゃうどだった。

日曜日に配達して貰ふ約束だったのにアンテナを決めるので店へ行かねばならず,それから配送可能な日を探ってゐると1週間は遅れさうなので自分でえっちら持って帰った。お陰で1日早くなった。

重さはさほどでもないけど嵩張るのが敵はない。電車でひと駅なんだけど,タクシを使へば良かった。

100GRXの下には55番もあり,CPからして(値段は型番の儘)市場評価はそっちの方が高い。デザインもすっきりしてゐて55番に分がある。100GRXは品切れが危ぶまれてゐたしそれで良いかなと日和るところだったけれど,秋葉原で現物を見比べて100GRXに即決した。重さが全然ちがふのである。55番は3.3kgなのに100GRXは7.7kgもあるのだ。

迷った時は重い方を採れ,音響機器の大原則である。

確たる根拠は無いのだがごく一般的な反射式パラボラ_アンテナはどうしても厭だった。大きなコンヴァータを貧弱な腕が支へる姿がまづ気に入らなかったし,第一あれではコンヴァータ自身が電波を遮って陰を作るのではないか。実に不合理で不自然で不恰好だ。

有力な平面型アンテナが年内に入手できないとなると後はTDKのセンタ_フィードしか無かった。しかしあれも反射型だし50cmクラスを望めば6万5000円もして手を出しにくい。えい,ままよ。衛星の出力upに賭けて38cmのTDKにしよう。もしまともに映らなかったら──推した店員の兄ちゃんをゴルゴの標的にしてやる。

デザインは極めて良い。お椀の中央にツクシがぴょこんと飛び出た格好で,子供にパラボラの絵を描かせたら大抵はこれになるんぢゃないかしらと云ったふう。如何にも小振りで拍子抜けするほど軽く(1.8kg) コンヴァータがホルダと一体化して背面に回ってゐるからますますコンパクトに見える。

頼りない印象すら受けるが,積雪や風圧を考へると小さい方が有利と言へる。ソニーのカタログではサイズに関係無くアンテナの耐風速は最大50m/secとなってゐた。大型台風なら充分マークできる数字である。ただパラボラが飛んでいくだけならまだしも,人に当たったり隣家に飛び込んだりでもすれば洒落にならない。神経質になるべき問題である。

結果から言ふと,TDKは正解だった。

センタ_フィード方式はTDKがNASAと共同開発して素早くパテントを取ってしまったらしい。他社は作りたくても作れないのだ。感度の良さは段トツで,38cmでもパラボラ45cmに匹敵すると言ふ。

人員を確保できなかったので設置は寂しくひとりでやった。組み立てと固定そのものは簡単である,重要なのは一にも二にも角度調整だ。チューナに入力感度メータが付いてゐるので──TV画面にスケールを表示させる──それがMAXに振れるやうにすれば良い。

仮留めの時はまるっきり感度ゼロだったのでケイブルの接触不良かと疑ったのだが,慎重にアンテナを廻してゐたらいきなりざっと入感した。指に心持ち力を入れるだけでスケールが上下する。恐ろしく指向性が鋭い。6本のボルトを締めていく間にゲインがどんどん変はるので気が気ではない。

ソニーのメータで最大34まで振れたが,20あれば鮮明に映る。同じ衛星から送られてくるのに各chで若干の感度差があり,NHK第2>第1>WoWoWの順に成績が良い。BS-2からのNHK第1もまだ受かるのだが,さすがに最低である,それでも20は楽に這入る。

固定してからの視聴では概ね25から30の間で,30を超える事は滅多に無い。今のところずっと良いお天気つづきで,雨天や曇天での具合は判らない。昼と夜とでも有意差を見出せないでゐる。

試験放送でスクランブルされたWoWoWも観た。4月までは無料放送なのでまだ入会してゐない。スクランブリングの度合ひは無段階であって,何とか観られる画面から完全ちらちら状まで自由自在らしい。ちょっとだけよてな観せ方をして,受信契約者を募るつもりなのね。

番組の内容はさて置き画質は圧倒的に素晴らしい,と言ふ程でもなくて状態の良い地上波と変はらんね。ただしゴーストはさすがに皆無である。プリシュート・オウヴァシュート共に全く現はれてこない。

チューナがまだ固いせゐかサ行の音がきつく聞こえる。スペックではFMや普通のTV音声と大差無いけれどSN比が良く,音声だけのエアチェック(St.GIGAね)も充分いける。

尤も単純に比較してはいけない。地上波は東京タワーから0.002万kmの至近距離だが衛星波は往復7万kmをぶっ飛ばしてくる。地上波は数10世帯に分配されてマンション内を引き回された末に取り出されるが衛星波は専用のアンテナから数mのケイブルでダイレクトに入力される。地上波は生産完了の中級VCR内蔵チューナで検波されるが衛星波は最新の高級単品チューナが受信する。モニタはたったの19in.で差が出にくい。

かうして見ると余程の無邪気か悪意を持ってゐなければBS万歳を唱へる事はできない事が判る。まぁ同じ番組が地上波でも衛星波でも放映されるなら,僕は迷ふこと無くBSで観るけどね。

無いよりはあった方が良い衛星放送,将来性も充分なものである。しかしながら10数万円の投資に見合ふ物であるかどうか。今現在では無駄遣ひと言はざるを得ないだらう。

もうひとつ問題があった。BSセットだが,莫迦莫迦しく単純な現象として置き場所が無い。

VA機器は21mm厚合板の自作ラックに収まってゐるのだが既に定員いっぱいである。仕方が無いからLD/CDプレイヤの上に載ってゐたFM/AMチューナをアンプの上に移してBSチューナを押し込んだのだけれど──CDの音が格段に良くなった。4kgのFMチューナよりダンプが効くやうだ──うちのアンプの排熱たるや大変なもので,熱くて天板を触はってゐられないくらゐになるのだ。その放熱が妨げられまたFMチューナにしても下からがんがん灼かれては堪らないだらう,近い内にラックを増やしてやらなければならない。

最後にもうひとつだけ。リモコンがまた増えた。

100GRXのリモコンは大型でBS・VCR・TVの主要な機能をみな盛り込んではゐるのだが,VCRについてはスキャン(最高速のサーチ)のボタンが無くTVに関してはTV/VCRの切りかへボタンが働かない。結局各機器のコマンダを全部だしておかねばならず,小間物引き出しの上は5個のコマンダで埋めつくされてしまった。こりゃ参ったね。こんな事では困んだ。


非業の玉袋,惜しい才能を無くしたと落胆してゐたら,昨日の『ガンバルマン大賞』の雛壇に並んでゐた。録り損ねたけど今日はTVで漫才をやってゐるのを観たぞ。四肢にも脳にも損傷は無かった様子で暴れてゐたからひと安心,あぁ良かった良かった良かったね。

不一

1990年12月24日


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