小倉百人一首/卿(参議または三位以上) 17人




中納言家持
006 鵲の渡せるはしにをく霜の しろきをみれはよそ更にける

参議篁
011 和田の原八十嶋かけてこき出ぬと 人にはつけよあまの釣舟

中納言行平
016 立わかれいなはの山の嶺に生る まつとしきかはいまかへりこん

中納言兼輔
027 みかの原わきてなかるゝ和泉川 いつみきとてか恋しかるらん

参議等
039 浅ちふのをのゝしの原忍ふれと あまりてなとか人のこひしき

権中納言敦忠
043 あひみての後の心にくらふれは むかしはものをおもはさりけり

中納言朝忠
044 逢事のたえてしなくは中ゝゝに 人をも身をもうらみさらまし

大納言公任
055 瀧の音はたえて久しく成ぬれと 名こそなかれて尚聞えけれ

左京大夫道雅
063 今はたゝおもひたえなんとはかりを 人つてならていふよしも哉

権中納言定頼
064 朝朗うちの川霧たえゝゝに 顕はれ渡る瀬ゝのあしろ木

大納言経信
071 夕されは門田のいなは音つれて 芦のまろやにあき風そふく

権中納言匡房
073 高砂のおのへのさくら咲にけり とやまの霞みたゝすもあらなん

左京大夫顕輔
079 秋風に棚引雲のたえまより もれいつる月のかけのさやけさ

皇太后宮大夫俊成
083 世中よ道こそなけれおもひ入 山のおくにも鹿そ鳴なる

権中納言定家
097 来ぬ人をまつほのうらの夕なきに やくや藻しほの身もこかれつゝ

参議雅経
094 みよし野ゝ山の秋風さよ更て 故郷さむくころもうつ也

従二位家隆
098 風そよくならの小川の夕暮は 御秡そなつのしるし成ける


[メモ] 公卿歌人では、源三位頼政の不在がまず気になる。「紅旗征戎吾が事にあらず」と断言した定家には、頼政の身の処し方に対する反発があったのだろうか。『八代抄』を見ても定家は頼政の作を二首しか採らず、この名高い武将歌人に総じて低い評価しか与えていない。また、堀河歌壇の代表的歌人の一人源国信は「百人秀歌」には採られたものの、「百人一首」では外されてしまった。


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