第5章 星に願いを〜日本のアウトドア事情

PM6:00。スイス村に到着。ピークの時間なのに場所は空いていた。 静かでなかなかいい。ただ、二人とも風呂に入れないのか汗クサイ。 早速、晩ご飯の支度。私はご飯とフカヒレスープの担当。てらちゃん は焼肉の仕込みを始めた。
米焚きは難しいと言われる。でも、そんなに難しく考える必要はない。 たとえ、お焦げがひどくとも、べちゃべちゃであろうとも、新鮮な空 気をおかずに大自然の中で食べればどんなご飯も美味しく感じてしま うのだ。
私はコッフェルに米3合を入れ、EPIのコンパクトコンロで焚き始め る。始めの10分が肝心。強火でちょうど10分で吹き上がるように火 を調節。吹いたら、12分で弱火でチョロチョロと焚く。少し焦げる においがしたら、火から離し、裏返して蒸らす。20〜5で蓋を開けて かき混ぜる。でき上がり。
てらちゃんの準備もできたので、早速焼肉を始める。でき上がるまで 私はフカヒレスープを作る。
少し離れたところに、バイク乗りのおにいさんがテントを建てていた。 さすらいの野宿ライダーである。私も本来ならあのスタイルをとるはず であった。彼のバイクはカワサキのネイキッドタイブの400Mだったと 思う。(暗かったのでよく見えなかった。)さすがに、キャンプ用品は シンプル。バイクは乗せる荷物に限界があるのでどうしてもシンプルに せざるをえないのである。ましてや、私の場合、撮影器材も積まなくて はならないので事が深刻である。
話を元に戻そう。晩ご飯ができ上がったので早速食べ始める。二人し て贅沢な夕食である。レタスに焼肉をくるみ食す。非常にジューシー  である。フカヒレスープもうまい。でも、二人で3合のご飯は多すぎた。 せめて、一人1合にすべきだ。野宿ライダーのおにいさんに分けてあげ ようかと思ったが、おにいさんはすでに寝ていた。
食事のあと、夜空を見ながら、お互いの将来について語り始めた、自分 のやりたいこと、ネックになっていること、会社の中での自身の在り方 などを真剣に話し合った。結論的に結局自分の作品を作り続けるしかな いことでお互い納得した。
ビールが切れたので気分転換に周辺を散歩することにした。この頃から なぜかキャンプ場にやってくる人がちらほら現われ始めた。野宿ライダ ーのおにいさんのまわりにうるさい家族連れのテントが周囲を包んでい た。なんか可愛そう。
我々のテントの周辺は車の乗り入れは禁止されていたのにも関わらず、 管理人がいないのをいいことにせいかRVを乗り入れ、その横にテントを 張る人が多い。下のキャンプ場は許可されていたので行ってみることに した。下はどうもグランドを臨時のキャンプ場にしたとしか思えない。 だだっ広い広場にテントとRVだらけ!情緒のくそもなかった。まるで、 どこかの国の陸軍の野営キャンプ場である。立派なテーブルとコンロ。 5人位入れそうなでっかいテント。キャンピングカー、RVの見本市みた いだ。その中で、立派なキャンピンググッズに囲まれながらもカップラー メンをすする家族がいた。邪道だ!せっかく家族にとキャンプに来たんな らちゃんと飯を作ったらいいのに。これでは、キャンプの意味がない。 なさけない!今の日本は間違っている!!道具と車だけは立派だ。 なかには50Mの原チャリの集団で侘しく鍋の中のものをすすりあっている のもいた。すごい、彼等には拍手を送りたい。
やっぱりキャンプはシンプル イズ ベスト!スタイルはどうあれ、自然 の中で飯を作って食ったり、遊んだりするのが本当のキャンプだ。 偉そうな事を言ってしまったが、ラッキーだったのが我々の周囲は木が生 えて居心地がいいのと人が少ないことである。情緒いっぱいのキャンプを 楽しめた。
ようやく、テントの中に入り話の続きである。私は彼の彼女の事をつっつ き始めた。付き合うきっかけから今までをしこたま聞いた代わりに、私は 意中の人アイちゃんの話をしなければならなかった。彼は彼女のハートを どうすれば射止めることができるのか真剣に話してくれた。とにかく、当 たって砕けろという。これまで、3回も当たって砕けたのに酷な話しだが、 それでも懲りずにアプローチしている私っていったい、、、?
彼に昨日彼女に電話したことを話すと、思いッきり小突かれた。
「このアホ!!いつの間に!」
もう、ブーブー言われた。
恋愛談義に花が咲いていたが、いきなり、てらちゃんが
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
と、でかい声を張り上げた。彼の寝袋のファスナーがバカになって途中か らバックリとはずれたのである。彼はディスカウントスーパーで安物を買 ったのである。いくら直してもすぐに外れてしまう。
彼と私の苦闘は夜中の2時まで続くのであった。

次の日の朝、5月3日AM6:00。やたら外がうるさいので、目が覚めた。
外に出てびっくり!!周囲はテント銀座と化していた。昨夜、我々の周囲 には何もなかったはずである。いつの間にこんなに増えたのだろう。テン トを張るのにタブーとされていた斜面にも堂々と張っている。ガキが走り 回り、4WD のRVがそこのけそこのけという感じでブンブン音をたて、斜 面を下る。

モーニングコールはガキの声と車の音

思わず昨日の豊かな気持ちで迎えた朝と比べてしまった。ひどい!てらち ゃんも起きて目を丸くした。
早速、朝ご飯。食パンとベーコンエッグである。シンプルだが、旨い。ベ ーコンエッグを焼くのが楽しいのである。周りはうるさいがグッドな朝食 で気分はすっきり。野宿ライダーのおにいさんはもう早々と出発していた。 さすが、一匹狼。やること渋いゼ!
片付けをし、出発の準備。テントを乾かしている間にテニスをすることに した。管理棟でラケットとボールを借り、いざプレイすると、もう滅茶苦 茶!!隣の中学生のプレイとは雲泥の差である。
テニスのあとは乾かしたテントを畳む。我々のあとに場所を譲ってあげた 家族はもうテントを張り、お父さんはダウンして寝てしまっていた。
話によると、この家族は大阪の堺から仕事が終わってすぐに駆けつけたそ うだ。つまり、徹夜で車を飛ばしてきたのだ。サラリーマン戦士は休日も リゾート戦士となって家族の為に戦い続ける。我々も家庭を持つとこうな るのだろうか。背筋が寒くなる。
今日は日本のリゾート事情をかいま見た気がした。国土が狭いせいなのか も知れないが、でも、もう少し自然やその土地の文化と対話する余裕を持 てないだろうか。せっかくのアウトドアの意味がないのではないかと問題 提議してしまった。

さあ、変な二人のヒューマニティーを求めての珍道中も今日が最終日!! 丹後半島を一周し、温泉もつかって楽しむぞ。
名付けて「丹後七姫ツアー(なんのこっちゃ)」!!!
てらちゃんは早くもターゲットの温泉地を模索していた。

全国のアウトドアファンの皆様。
ごめんなさいね。
でも、マナーとルールは守りましょう。
RVも場所をわきまえて乗りましょう。
せっかくの自然が台なしです。

つづく


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こさっく茶房/コサック藤澤
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