6.裏表紙は何がかいてある



 裏表紙には要約と紹介が掲載されていますが、これが20文字×20行の最大400文字という異例の長さを誇っています。どれくらい長いかというと、当時のハヤカワSF文庫は19×14の266文字(現在はもっと文字数が減って15×13の195文字)、創元SF文庫は最大18×14の252文字(現在は25×7の175文字)とサンリオの約2/3程度の文字数しかありません。しかしはっきりいって長ければいいというわけではありません。あまりに長すぎて最後まで読む気がおきず、買う気をそがれた人も多かったのではと邪推してしまいます。内容もなまじ文字数が多いためだらだらとあらすじが紹介してあってどんなストーリーか逆にわかりにくくなっており、本文を読む前から難解という印象を与えてしまいます。最も難解なもののひとつと思われるものを丸々紹介してみましょう。
2039年−地球全体が超システムで統合されている時代に奇妙な病気が流行しはじめた。熱い太陽は全身がまだら模様に、深海魚は鱗状の湿疹が浮きあがる。ともに社会への不適応からくる分裂性逃避症候群だ。この病気が精神的にも物質的にも安全を保障している平和な社会-ブレイン・コンタクトの管理のもとにイメージメーカーのシナリオに従って空間幻覚(スパシオニック)と模像知覚(シミュレーション)を通じて夢想する太陽や海や草原といった偽りの冒険を与えてくれる超システム社会を脅かしている。それでなくても技術者同士のいさかいに端を発した超システム間の戦争、拡大するメカニズムの危険を予言して何百万もの弟子から信奉されている無政府主義者の活動があるのだ。それにしても熱い太陽と深海魚は病気といえるのか?空の彼方の楽園への燃える生と、冒険への欲求、そして母の子宮という海へ、世界の奥底にひそむ安息と神秘への欲求が何の病気なのか? フランスSF界の鬼才による力作
売れ行き不振で多くの在庫が断裁処分にされたといういわくつきの
「熱い太陽、深海魚」の紹介文ですが、売れない理由もわかるような...






7.値段はどうだったの?



 当初は280円で始まった定価ですが、初期の頃は300円台が主流で時に分厚い短編集が500円台といった程度でした。しかし後期には軒並み600円台となり最も高価な「サンディエゴ・ライトフット・スー」は何と740円の値段がついています。今でこそ1000円近い値のつく文庫本もみられるようになっていますが、10年以上前にこの値段は決して気軽に買えるものではなかったと思われます。


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