5.どんな表紙なの?




 表表紙の構成はほぼ統一されており、いたってシンプルです。一番上に中央レイアウトのタイトル、その下に作家名と訳者名が並んで表示されています。青火星人の3冊目(「去りにし日々、今ひとたびの幻」)からはタイトルの下に罫線が引かれるようになっています。あとは一番下中央に小さくサンリオSF文庫と書いてあるのみで、基本的に表表紙にはこれ以外の文字は書かれていません(シリーズ名や賞受賞の表示を有するものはあり)。
 
表紙画は基本的にイラストを使用していますが、これがサンリオSF文庫の隠れた特徴ともいうべき独特の雰囲気を醸し出しています。一応内容を加味してイメージされたイラストではありますが、全体的に暗めで不気味な印象を与えるものも数多く存在しています。作者別では最も多いのが加藤直之氏で22作品手がけています。独特の素描画に近い漫画的な人物画に、メカ物の組み合わせで独自の世界を創りあげていますが、暗くて抽象的な感覚を与えることは否めません。次に多いのは角田純男氏で15作品あります。この人のイラストは人物画が基本ですが、これが強烈な印象を残すものばかりです。とくにサンリオSF文庫史上最も不気味といわれる「猫城記」の真っ白な猫人はぜひ一度みていただきたいほどの奇怪さを誇っています。そのほか「どこからなりとも月にひとつの卵」の卵から出てくる少女や「コスミック・レイプ」の金色のマリリン・モンローも結構印象的です。最難関本の一冊「生ける屍」の表紙も同氏の手によるものですが、これも相当怪しげな女性のイラストです。その他にはシリーズ物を多く手がける木嶋俊氏が14作品、シンプルな背景が印象的な上原徹氏が9作品、影のある女性と独特の色遣いの背景を組み合わせた小泉孝司氏が7作品、「ロードマークス」が結構気持ち悪い中西信行氏が7作品と続いています。外国人が手がけた作品も多数ありますが、これらは原書のイラストをそのまま流用したのでしょうか(未確認です)。個人的には表紙の不気味さで購買意欲を低下させたのではないかと思われる角田氏のイラストも捨てがたいですが、独特の色合いの小泉氏の作品が気に入っています。とくに「ジュリアとバズーカ」の湖面に浮かぶ女性の後ろ姿は最も幻想的で美しい表紙と思っています。あとは上原氏の「伝授者」も好みです。まあこれらの独特の表紙をみたいがためにコレクションしているといっても過言ではありませんが...
 
新装版や再版で表紙絵が改訂されたものが、私が所有する限りでは4冊存在しています。新装改訂版と表記されているものが「時は乱れて」「万華鏡」「天のろくろ」の3冊、2版で表紙が変わったものが「死の迷宮」の1冊です。


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