あっという間に眠ったドラゴンを、ドラコは引きずるように家に送っていった。
 その光景は壮観。何せ体長十メートルはあろうかという巨体を、スレンダーな体型の美少女ドラコが、(かなり重そうにしていたとはいえ)持ち上げ空を飛び去っていったのだから…。
「竜族もいろいろと大変なんですわね」
 ウィッチがドラコを見送って呟いた。
「さて、そろそろ俺たちも帰らないと、なぁ?」
「そうだね、もうあと少しで日が落ちちゃうもんね」
 パノッティがすけとうだらの言葉に頷いた。
「でも〜、ルルーさんが〜、全く戻りませんね〜」
 ハーピーが思い出したように言った。
「シェゾ?」アルルが腕を組んでシェゾを睨み付ける。
「ぐー!ぐぐっぐー!」肩の上のカーバンクルもアルルにならう。
「お、おっかしいなぁ…確かに時間で戻るはずが…」
 シェゾは決まり悪そうにルルーを見た。
 ルルーはといえば、はしゃぎまくっているサタンの相手をしている。
「どうだ、さっきの私の戦いっぷりは?かっこよかっただろ?」
「う〜ん、でもさっきの戦い方はちょっと地味だったわ。ただ眠らせるだけだなんて」
「それはドラコの弟だ、無闇に傷つけるわけにはいけないからな」
「うーん、それもそうよね。ま、せっかくがんばったんだからごほうびあげる」
「え?」とサタンが露骨に嬉しそうな声を上げたのも束の間。
 ルルーはしゃがみこんで自分と話していたサタンの顔を引き寄せ、頬に軽く唇を当てた。

挿し絵 「るるるるるるぅ〜さまぁ〜…そそそそそそんなぁっ!」
 ミノタウロスが頭を抱えて絶叫した。
「よ、よりによって…」「止めを刺されなくても…」
 こめかみを押さえるアルル、口元を引きつらせた笑みを走らせるウィッチ…この事態に直面した者達の反応は様々だったが、思いは一つだった。
『もう、だめだ…』
 サタンは、頬を押さえ陶然とした表情で、何故か「てぇのひらに〜太陽を〜すかしてみぃれぇばぁ〜♪」などと口ずさんでいる始末。
「ちょっとぉ、みんな…どうしちゃったの?」
 自分の行動の重大さをはかりかねているルルーが不安げに周りを見回していると、突然ルルーの身体があの白い泡をぶくぶくと湧き立たせ始めた。
 絶望に突き落とされていた皆の表情が明るくなる。
 放出された泡の中から出てきたのは…いつもの、ルルーだった!

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