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三井の、なんのたしにもならないお話 その三十五

(2013.10オリジナル作成/2024.3サーバー移行)



 
 
あっと驚く大事件

−または、まさしく暴君ねろの暴挙


 
 
 
 
 この夏の猛暑にめげて(という言い訳を取り繕って)、いつまでも続く暑さにうんざりもしながら、なんとか仕事をしていたら、えらい大事件が起こってしまいました。まったくもって、何とかの法則の通りに、悪いことはまとまって降りかかるものです。

 
 
 事態は簡単、デジカメ画像を主に保存していた、1TBの外付けハードディスクから、それらがいっさい消えてしまったのです。

 
 原因はかなり見えています。ことのきっかけは、この暑さのせいか、仕事場のメインPCがおかしくなってしまいました。突然にダウンしたりしはじめたのです。こういうことも長年のうちには珍しくもないので、さっさとあきらめ、サブであったPC(こっちの方が新しくて、WIN7機)の方に全作業を切り替えました。ソフトを追加でインストールしなきゃならないとか、設定を行うとか、手間もかかったのですが、いつでも切替はできるように体制は整えてはあったし、これまでのメインは悪名高きWIN vista機で、そして私も辛抱強くつきあってきたけど、もうほぼアウトであるS社製ですし。もちろんS社自身はとっくに消え、いまではO社の名です。

 
 そういうことで、メインのマシンの切替は想定内でもあり、あまり問題もおこらずすすめられたのですが、そのうちに妙なことに気がつきました。画像データを大量蓄積してあるはずの外付けHDDがなぜか見つからないのです。まさかね、と思いつつ、新たなデータをセーブしようとしていて、はたと気がつきました。

 このHDDも以前はS社機に接続していたのですが、そちらが調子悪いとなって、新たにメインに「昇格」させたE社のにつなぎ替えてあります(もちろん、S社機もE社機も、そして古いS社のWIN Xp機も、すべてホームネットワークに組んで共用してきたのですが)。そのドライブ番号もちゃんと出ていたので、なんにも問題なしと思っていたのに、気がつけば大量の画像データの入っているファイルがとんと見あたらないのです。

 
 当然焦りました。そして実に迅速に、原因に思い当たりました。このメイン機入れ替えでのソフトインストールや設定起動などの作業のうちで、某社の「ねろ」とかいうAV情報操作総合ソフトを動かした、その際になぜだか、「バックアップ機能」というのが立ち上がり、まあバックアップもいいかと軽い気持ちでそれも起動設定した。そして気がついたら、このソフトのバックアップファイルの保存場所というのが、画像ファイルを保存していた外付けHDDになっていた、そこにはこいつのバックアップ保存データしかない!!!!!!!!!

 前からあったはずの膨大な画像ファイルが影も形もなくなってしまったのです。じぇじぇじぇどころじゃない!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 ともかく大損害どころじゃありません。画像の数は万を超えましょうか。それらの撮影の手間、画像にかかわったさまざまな思い出、自分では傑作のつもりの絵、重要な記録、ぜーんぶ跡形もないのです。

 
 ただ、絶望も怒りも、さしてこみ上げては来ませんでした。ショックが大きすぎというだけでもありません。まあ、さもありなんかなというのは、常日頃ある程度覚悟はしていたのです。デジタルデータは容易に大量に記録保存できるけど、また容易に消えてなくなることもあるのだということを。

 
 過去に、痛い目にあったことも決して少なくありません。おのれのミスで消してしまうとか、記録しておいたメディアがおかしくなって、パアになるとか、何度も経験済みです。教訓は、ともかくバックアップですよ。情報は集中利用管理する、しかし情報はまた分散保存する、これが大原則です。




 
 
 ですから、直ちに状況確認と、対策と、バックアップからリカバリーできる範囲を想定してみました。HDDなどから消えたファイルを復元できるという話しもあり、そのためのソフトや、これで商売やっているところもかなりあるようです。ただ、その可能性はいったん否定しました。あてにするだけあとの失望も大ですし、なにより慌ててそれらの手引きなど読むと、ファイルを消してしまった直後ならほぼ復元可能だが、時間が経ち、書き込みを繰り返すほどに難しくなると、明言されています。状況を思い起こすに、この文字通り「暴君ねろ」のようなソフトが動き出してから、すでに半月以上が過ぎています。

 実際にフリーのリカバリーソフトを使って試してみました。うんともすんとも言わず、過去の膨大な画像データのかけらも見つかりません。

 
 それより、バックアップされているはずのデータのことを急ぎ考えてみました。相当あるはずです。実はこのHDD自体が二代目で、前の画像データ保存用がだいぶ詰まってきたので、もっと容量大きいのを買い、そちらに全部いったん移し、それからまた新たな保存データをのせはじめたのです。ですから、前のHDDがそのまま、ある時点までのバックアップになっているわけです。調べると、2010年頃までの保存データが、そこにちゃんとあることがわかりました。ひとまず息をつけます。

 
 さらに、過去の苦い教訓から、バックアップはたくさんあるほどよいということで、このほかにDVD、BDなどに、時々ファイル単位で相当の保存をかけてきています。全部とは言えないけれど、重要なイベント関係など中心にまとめて、ディスクにそれぞれ入っているはずです。HDDと完全に重複ですから、そのときは無駄な手間のようにも感じましたが、こうなるとムダどころじゃなく、救いの神です。2010年以降のは、かなりそこから復元できるはず。

 
 そして、第三のセーフティネットとして、最近撮影の画像のデータは、だいたいそのままカメラのメディアに残っているはずです。私のケチな性分で、SDカードなど、撮ったまま画像を永久保存する気にはならず、消してまた使うのが日常なのですが、それでもそんなに頻繁にデータ消しをするわけでもないので、かなり手元にあるわけです。

 ただ、悔しいことに最近になって、メモリメディアの「整理清掃」をやったばかりでした。記録されたファイルをぜんぶ消し、初期化して、サラの状態で今後の撮影に備える、当然のようにやっちゃったのですね。

 
 それでも、この第三のセーフティーネットにもバックアップがあります。デジカメやこれらのフラッシュメモリメディアもあまり信用ならんというのは、これも経験済みなので、重要な撮影をした際にはもうその日のうちに、USBメモリなどにも画像データ保存する、それが難しい環境下ではとりあえずPC内に保存する、これをほぼ習慣化してきました。もちろんそれらも永久保存するわけではありませんが、相当数は手元にあるのには確信が持てました。

 
 
 それで、早速に新しいHDDを買ってきて(ファイルの「消えた」HDDはもうあきらめるべきであっても、「証拠」としても残しておきたい気になるので)、あっちこっちから画像データを寄せ集め、復元していく作業に入りました。こんどのは2TBで余裕十分でもありますから、ともかくぜんぶコピーする、徐々に整理していく、そういう流れです。

 
 私の画像データの整理は、ファイルフォルダに撮影年月日で名をつけ、あわせて重要なイベントや場所名も加える、そういうやり方です。そこに、カメラは別でも一緒に撮った画像のファイルはまとめて入れておくわけです。DVDやBD上には同じ名のフォルダが保存されている場合もあります。一方、カメラのなかやUSBメモリなどの方では、カメラ毎にフォルダが作られているので、これらをいったんコピーし、整理確認しながら復元するしかありません。もちろん相当重複があるわけですが、重複部分はコピー時にエクスプローラが指摘してくれるので、間違って重複してない画像を消さないように気をつけながら作業する、単純で時間はかかりますが、徐々に現状復帰していきます。ありがたいことです。




 
 
 本業をおっぽり出し(言い訳すれば、こんな状態で不安と恐怖を抱えたままでは、仕事にも集中できんと)、画像データ復元整理作業にかかることのべ3日で、相当の回復ができました。おそらく、画像数にして90%位にいくのではないかと思います。ダメージはかなり抑えられました。

 ただ、記憶をたどっていくと、大きなイベント関係の画像で、結局多くのデータが見つからないままのが一群あることを発見してしまいました。2年前、会議で行ったストックホルムのです。私はまさに撮影のバックアップや非常事態対応という「リスクマネジメント」の実践で、だいたい二台以上のデジカメを持っていき、万一に備えているわけですが、このストックホルム行でも一台の撮影画像ファイルは見つかりました。しかしもう一台の撮影分がどこにも見あたりません。うえに書いたように、こういった大きなイベントの画像はまとめたフォルダごと、ディスクにも保存するのを習慣としていたのですが、このときにはいろいろあったせいなのか、ストックホルム行のフォルダがほかに保存されていなかったのです。見つからないのが撮影総数の半分以上にはなるはずですが、もうこの分はあきらめるしかないのでしょうか。

 
 そのほかに、小さなイベントの関係などで、結局ほかにはない、消えたというのもある程度あるでしょう。それらの存在自体を、こまめに撮影ノートなどに記録しているわけじゃないので、まず失われたことそのものにまだ気がつかない恐れです。

 
 もうひとつ、これはかなり失われていると思われるのが、スキャナで読み込んだフィルム画像です。近年、先デジカメ世紀のを含め、フィルムの画像をかなり取り込み、同じようにそれぞれ撮影年月日のフォルダで整理する、あるいはデジカメと同時撮影のものは一緒に入れておく、等々をやっていました。後者のはフォルダ全体がディスクにバックアップ保存されているのもありますが、多くは新たにフォルダをおこしたので、HDD以外には記録されていませんでした。これらはもう捜しようもありません。

 
 もちろん、それらにはフィルムという永久保存の原データがあるわけなので、デジタル画像のように、一瞬で影も形もなくなってしまったのではありません。そこがアナログのつよみです。しかし、ご存じの方も多いように、スキャナでフィルムを読み込んでデジタル画像化するというのは、単純だけどけっこう時間を食う作業です。その私の作業時間が無になってくれたのです。このダメージは小さくありませんね。



 

 
 
 それにしても、トンデモソフトです。この「暴君ねろ」というのは、もともとあんまり使い勝手もよくなく、けっこう引っかかるものではあったのですが、それでも私は音声データの編集とか、画像変換とか、動画を見るとかで使うこともありました。「できます」のはずの機能がどうしてもよくわからず、使えないというのもままありました。しかし、どういうことなんですか、勝手にひとさまのだいじなデータを大量抹消して、知らんぷりしているというのは。

 
 思い起こすと、うえに書いたように、なぜだかこれの「バックアップ」というのが立ち上がった時、まあそれもいいかと設定をした、その際にたしかに「バックアップデータ保存ドライブ名」を聞いてくるところはあった記憶です。それをバックアップ対象の本体メインにしても意味ないので、たまたま外付けHDDにした、画像保存用のでまだ余裕もあるので、ここにドライブ指定した、そこまでは覚えています。しかし、「このバックアップ指定ドライブにある、ほかのファイルはすべて消去されます」、「よろしいですか?」なんて聞いてきたことなんかないのは間違いありません。もしあったら、とんでもないことと中止・変更をするに決まっているじゃないですか。

 
 「バックアップソフト」 が勝手に、既存のデータを抹消する、これはもうブラックジョークの域を超えすぎです。「このように、バックアップを設定しておかないと、痛い目にあいますよ」という警告のつもりなんでしょうか。ふざけるなよ!!!!!!!!!

 
 まあ、このメーカーにウン百万円の損害賠償を要求してもよいかと考えますが、裁判をたたかう、とくに外国企業相手に、というのがいかに困難か、そのくらいは十分想像ができますので、あえては泣き寝入りをするしかありません。ただし、利用者の権利として、多くの皆様とともに、「警戒情報」は共有することにしましょう。このソフトは、まさに「暴君」ですよ、どんな目にあわされるか、十分覚悟してから買って下さい、と。

 私?わが情報環境の安全性確保のため、直ちに暴君を一掃しましたよ、当然。

 
 

追記


 思い起こせば、私のPC利用元年の1988年以来(それ以前はワープロというヤツを使っていました)、この25年間のうちでデータの記録保存用にHDDを使うようになったのはそんなに長いことでもありません。「嗚呼 ぢっぷでぃすく」という項(お話し20)をご覧になって下さい。

 創世記には、HDというもの自体がPCにはなかったし、本体に装備されて、そこにソフトも入れるようになったのはかなりのちのことだし、HDD外付け化というのも相当に値段が下がり、容易に使えるようになって可能になったものでした。その間、フロッピーディスクはじめさまざまな記録用メディアが現れては消え、これらと悪戦苦闘の数々を重ねてきたわけです。ですから今もって、昔の作文やら表やらはこれらの「歴史の遺物」的メディアに収まったままです。


 ただ、デジカメの時代に入ると、画像という個々のファイルのサイズが桁違いに大きくなるため、私も結局保存用にはHDDを用いるようになった次第です。USBメモリで持ち歩くわけでもないので。そういうこれまでの経験もあるから、DVDやBDでの保存もしているし、またそのおかげもあって、HDD上の万余の画像ファイルを勝手に消されても、驚天動地、怒髪天、絶望のどん底ともならなかったのかも知れません。



 

びっくりどころか

 このキョーフの暴君ねろソフトで、同じ目にあって、HDの中味をぜんぶ消された被害者はやはり多数いるようです。

 捜してみたら、2ちゃんでそういった書き込みを発見しました。2ちゃんでも、「役に立つ」情報もあるのでしょう。


 私の経験とまったく同じようで、バックアップというのを適当に起動設定したら、「一発で」バックアップの場所とされたHDを消されたもようです。消えた膨大なファイルの復元を、やはり懸命に試みたようですが。「バックアップツールってあるでしょ?あれが急に起動してきて、 バックアップします?みたいなことになってクリックしてしまい 外部HDをフォーマット?したようだ。」(ママ)


 すんごいですね。まあ、アメリカあたりで天文学的な損害賠償をすでに請求されているかも。


 私も、作り手の独断的論理と手順でできていて、非常に使い勝手が悪いとか、トラブル続出で安心できないとか、不親切なつくりで、お手上げになるとか、そういったソフトに出くわしたこともずいぶんありますが、これだけ悪質かつ危険、甚大な損害を与える代物は空前絶後です。一種のサイバーテロと言った方がいいでしょう。



朗 報

(2013.11)


 朗報です。
 うえに書いたように、ともかくあちこちのバックアップからの回復を試み、相当数の画像ファイルを戻せたところで、くだんのサイバーテロの被害にあったHDDに関し、落ち着いて「ファイル復元」を試みることにしました。

 店頭で「ファイル復元ソフト」の販促用見本ディスクを拾ってきて、起動し、HDDを検索させたところ、かなりの数のファイル名が出てくるじゃありませんか。もっともそこまでHD上の検索が終わるのに、3日くらいかかっているのですが。


 そうなると、なにがなんでも復元は試みてみたい、もちろん見本じゃそれはできないとなっているので、慌てて製品版を買いました。7千円以上するのは痛かったけれど、ダメージ回復の可能性にはとうてい代えられません。

 見本版の検索画面をそっととっておいて(もっともその間に、WINの悪名高き「更新作業」が勝手に起動し、終了しちゃったんですが、これまた念のために、検索状態の保存をしておいたので、すぐに起動、検索画面現状に復帰)、製品版を動作させ、「ファイル復元」を試みれば、どんどん戻ってきます。ウン万までいきました。ただ、それで止まってしまったので、ああこれ以上は無理なのかといろいろ試みているうちに、わかりました。要するに、復元ファイルを保存するために、かつてのバックアップHDDに書き込んでいたら、そっちが満杯になっちゃっただけだったのです。そこで保存先を付け替え、復元作業を続行できました。


 なにより嬉しいのは、メジャーなイベントで半分以上の撮影画像がなくなってしまった、2011年ストックホルムのもほとんど回復できたことです。さらに、近年重ねていた、フィルムからのスキャン画像も相当数が戻ってきます。ファイルフォルダ自体のままに復元されるので、再整理もあまり困難ではありません。


 やはり、日本のテクノロジーをなめてはいけませんね。サイバーテロ同様の暴君ねろがあれば、その暴虐からの復旧を委ねられる、優れたソフトもあるわけです。相当に上書き書き込みが行われてしまったはずのHDDからこれだけ復元できるのです。7千円以上の費用もムダではありませんでした。




(2024.2)

 さて、この大事件から既に10年あまり。

 で、危険極まりない「テロリスト」的ソフト・暴君ネロはもちろん市場から一掃され、天文学的な損害賠償を負担させられたのかと思えば、どうもそういった話しは聞こえてこず、しかも店頭には相変わらずその名のアプリソフトが並んでいます。
 世の中どうなっているんだ、という慨嘆の思いしきりですが、まあそのくらいの「トラブル」はフツーあるものだというのが「常識」なのかもね。

 しかもその割りして、マイクロソフトのwindows更新なんかは、不快になるくらいの頻度で「勝手に」実施され、しかも、それを含めて使い勝手や機能がどんどん変更されたりするのです。あれもこれも、「セキュリティ向上」だとか、そういったうたい文句でね。


 私が一番参ったのは、webページを見るためのブラウザソフトがどんどん変更され、しかも「以前あった機能がなくなってしまう」なんていうのがざらであること。そちらも「セキュリティ上の問題」などといった理由で実行されているようで、しかも大昔と違い、ブラウザソフトを「買ってくる」(ないしは「有料でダウンロードする」)なんていうことは絶えてなくなり、だいたい無料で使っている次第。ほかで稼げる仕組みを持っているようですから。そのため、「私も無料で使っている」Google Chromeなんていうのは、いつの間にやら「複数ページの分割表示」機能に対応しなくなってしまいました。

 これはもっとも、HTMLのver5から行われた変更の結果のようですが、以前のブラウザでは対応してくれていたのですから、Chromeの方で「勝手に」表示機能を変更したものと考えるしかありません。なんせきょうびは、こうしたブラウザソフトなどは「親切にも」いつの間にかバージョンアップ・修正してくれているようですから。


 こういう「勝手に〇〇」というのに黙って従うしかない、まさに消費者の「選ぶ権利」などない、それが時代の進歩なんでしょうかね。




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