三井の、なんのたしにもならないお話 その二十

(2006.4オリジナル作成/2024.3サーバー移行)


 
 
嗚呼、ぢっぷでぃすく

(Zipの後始末話増補)


 
 ちかごろはPCデータの外部記憶媒体(メディア)も実に多様になり、それぞれ一長一短もあるので、うれしいことに選択に困るほどです。ただ、選択の自由も「優勝劣敗」になるのは競争社会の常で、メディアは「価値保存」の機能も重要であるだけに、「勝ち馬に乗って」いないとこれはまた困ったことでもあります。


 私はこの10年以上、主なメディアをZipディスクというのにしてきました。ご存じない方もある今日このごろなので、あえて説明をしましょう。アメリカのi-omega社というのが開発・製品化した磁気ディスクとそのドライブで、見かけは懐かしのフロッピーディスク(これも近頃見ることが少なくなりました)にちょっと似ていますが、もう少し大きく、また厚みがあります。操作方法や書き込み・読み出しなどはほぼフロッピードライブ並みです。買ってきたディスクをドライブのスロットに入れて、それだけで自由に使える、初期化だの書き込み操作だのといった面倒なことは基本的に要りません。通常1リムーバブルディスクドライブとして認識されます。現在のWINDOWSやMacOSといったものにはこのドライバが入っていますので、ドライブもつなぐだけで使用できます。



 私がこれに頼ることに決めた時代は、まだデータ記録メディアとしてはフロッピーディスク全盛の頃で(そのちょっと前までは、アプリソフトもフロッピー入り、それどころかまだHDが普及せず、フロッピー2枚だけで動いているなんて、現代では想像を絶する創世記だった)、CDがちらほら出てきたかなというところ、CDの書き込みなんていうこと自体大変に高度高額な技術でした。そういった前近代の時代ですから、フロッピーの100倍もの容量のある記録媒体が同じように手軽に使えるとなれば、一も二もありません。記録を調べると、最初のZipドライブを買ったのがちょうど10年前の96年3月です。あと、実はすでにこのころからリムーバブルHDというのも登場し、私も使っていたのですが、当時のことゆえ扱いは慎重を極める、またもちろん値段は高価だったのです。当然、いまのGBの容量単位ではありません。ウン十桁も下のサイズで、これでした。


 Zipディスクは手軽ですが、なによりドライブがなければ使えません。どこに持っていっても、PCだけでなくドライブがあることが必要です。ここにほかの業界同様のデファクトスタンダード争いが始まったわけですが、10年以上たった現在では、残念ながら勝負はついてしまったと言わざるを得ません。当時最大のライバルと思われたMOディスクに対し、Zip陣営は不利とされた容量を相次いで拡張していったものの、結果的にはディスクの高価さなどが作用し、シェア拡大はなりませんでした。私は別に恨みもないけれど、いまもMOというのは基本的に使っていません。


 ただ、皆さんご存じのように、現在ではMOも影が薄くなっています。ほとんどのPCについているCDドライブを使用するCD-R、CD-RWには勝てなかったこと、そしてそれ以上の脅威がUSBメモリとなったことです。このUSBメモリがどうやらZipの息の根も止めてしまいそうで、私としてはちょっと気がかりでなりません。



 ZipがMOに勝てなかったのにはそれほど深い理由もないとできるかも知れません。Zipと深い関係を結んだのがapple社であったからだ(当時はMacの得意とした画像データなどを保存できる大容量のメディアが少なかったからとか)という説もありますが、いまではMacでもZipドライブをつけているのはまず見ません。それでも、WINDOWSだってZipドライブのドライバーを内蔵してるくらいなので、それだけが不利とは考えられないことです。しかしながらうえにも書いたようにディスクの高さはいつまでも変わらず、これは致命的でした。現在も一枚ウン千円という水準はほとんど同じで、気軽に使い捨て気分で扱えるものではありません。それは当然、量産効果との好循環を作れなかったせいだとも言えましょうが、メーカーのポリシーが「ディスクでゼニを稼ぐ」ものであったからという説もいまだ有力です。もしそうならば、もちろんこれは選択の間違いです。


 ドライブの「同盟軍」も相次いで撤退をしてしまいました。ライセンス生産やOEM供給やコンポーネント組み込みを含め、EPSON、富士フイルム、ロジテックなどZipドライブを販売していた企業はすべて手を引き、いまはもうi-omega本社しか製品を出していません。さらに昨年には、富士フイルムはディスクの販売も中止しました。これはおそらく、売れ行き不振のためというよりi-omegaがすべて独占したいと志向したせいと思われます。なにより、Zip起死回生のためであったはずの750MBディスクを富士フイルムは出せませんでしたので。apple社似の選択かも知れませんが、「孤立無援の戦い」に持ち込むというのは、どう考えても「ソニーβ-max陣営敗北の教訓」の正反対です。いずれにせよ、大型店の店頭サプライコーナーにも、もうZipディスクの姿を見ることはまずありません。



 私はともかくこの10年間、懸命にZipを主媒体とする体制維持に努めてきました。デスクトップ機にはすべてATAPI接続の内蔵Zipドライブを入れてあります。モーバイル機用に外付けドライブもずいぶん買いました。一年間英国に滞在した際には、モーバイル用の外付けドライブを持っていくとともに、滞在先の大学で買ってくれたデスクトップPCに日本語WINDOWSをインストールしてしまうついでに、街中でATAPI接続の内蔵ドライブを入手してきて、これを装着してしまいました。そのまま帰国時には残してきたので、いまはどうなっているでしょうか。
 しかしまた、ディスクの容量が100MB→250MB→750MBとアップするたびにドライブも買い換えねばならなくなりました(下位互換はありますが、最大容量を使えないと意味がないので)。外付けドライブにもi-omegaはずいぶん改良を加えてくれたのは事実でして、初期には外部電源をとって、SCSIボードで接続してなど非常に面倒、およそモーバイル向きでもなかったのですが、そのうちPCMCIAカード接続可能、さらにバスパワー供給になり、現在も生き残っている250MBドライブの基本形はUSB接続でバスパワー供給、つまりUSBケーブル一本で使えるようになっています。持ち歩いてもそんなに不便はありません。
 ただ、750MBドライブでまた外部電源付きに戻ってしまいました。これは重大な弱点といまも思っています。それでも、FireWire接続の750MBドライブは電源不要でいいのですが、モーバイルPCではこのインターフェースはないのが多いので、あまり意味がありません。




 ここまでがんばってきた私も、気がついてみるといまはもうZipを使うことはかなり少なくなってきています。Zipドライブどころか、ディスクを持ち歩くこともありません。最大の理由はUSBメモリの存在です。この便利さには残念ながらZipどころかどのようなメディアも勝てません。あんなに小さく、持ち運び容易なものに2GBなどというとんでもない量のデータが収まってしまう、ドライブ一切不要、USBインターフェースさえあればどのPCにも差し込むだけで使用OK、読み書きは高速、こんな楽なものはないとせねばなりません。学生にももっぱらこれをすすめるようになりました。同じフラッシュメモリでもカメラやレコーダに使っているSDだ、CFだ、スティックだというようなものには完全な互換性は確保されていないのですが、なによりそれぞれのドライブがなければ話しにならないのですが、USBメモリだけは正真正銘ユニバーサル使用可能なのです。
 唯一の欠点は、あまりに小さいので忘れる、私はまだなくしたことはないものの、PCにつけたまま置き忘れはちょくちょくやっています。せっかく苦労して作り上げたデータを、いざというときに置いてくる、使えない、これは情けなくなる話しですが、なにもUSBメモリのせいとは責められません。自分のうかつさを呪うばかりです。


 もちろんUSBメモリに永久保存をするのはいかにも無駄だし意味ないように思えるので、そういうものはいまではCD-RかDVD-RAMに保存するようにしています。私はCD-RWとかDVD±RWといったものにはどうもアクセスフリーとしての信頼が置けず、ああいったものは年中書き込み書き換えをするためではなく、そのまま永久保存用と考えるべきものという先入観もあるので、あとにも記すようにむしろそういった使い方をしています。その意味、DVD-Rであってもいいんですが、DVD-Rの数GBというデータ量をいっぺんに保存をするという機会はさすがにほとんどないので、その役はCD-Rに任せる、映像や音声などかなりの量のデータを次々に保存していく際にはDVD-RAMを全体のファイルボックス役に使う、こういった使い分けに結果としてなっています。後者は当然DVD±RWであってもよいのでしょうが、私はDVDメディアを使い始めたときからDVD-RとDVD-RAMだけ持っていたので、それに特化してしまいました。


 CDやDVDメディアも光ディスクであるので、経年変化は避けられない、永久保存は無理という説もありますが、今のところ(そうはいってもCD-Rのみですが)10年近くを経過しても異常なく読めます。一応安心していられます。なにより、いまのPCにはほとんどDVD/CDドライブがついているので、これもどこでも使用できますし、メディアの値段は安いですし、ですからひとにデータとして渡す場合に安心便利です。書き換えや誤使用の心配もありませんから。


 ところが、大きい声では言えませんが、Zipを見限ろうかと思うようになった最大の理由はこの信頼性なのです。フロッピーはもうダメです。私がPCを使うようになった15年以上前あたりから書き込んでいる、データを入れてあるフロッピーはいまでは読めないことが珍しくありません(悪名高いNEC独自規格フォーマットのせいだけじゃない)。磁気メディアというものはそういったものと割り切るしかないでしょう。
 それ以前、前PC時代のメディアである磁気テープにも相当トラブルがおこっています。私は前世紀の人間なので、カセットテープどころかオープンリールテープといった「文化財」に入れた音源をかなりいまも持っているし、ですからそれを再生できるマシンが不可欠で、電気安全なんとか法なんていうのはとんでもないのですが、残念ながらテープの劣化がすすみだしています。特にカセットテープについてはお気をつけ下さい。両端のリール部分につないでいるテープは非常に経年変化を生じやすく、ためにいまでは簡単に切れてしまいます。オープンリールのリーダー部分は切れても残りを適当に巻き付けて使えるものの、カセットテープでは切れるとおおごとです。そのうちビデオカセットも同じ運命になるのか、これは見守るしかありません。ましてテープは無事でも、塗布されている磁気幕の傷や欠落はもうあって当然と割り切らざるを得ません。


 ですから同じようにプラスチックの薄板に薄い磁気幕を塗ってあるだけのフロッピーディスクがもたないというのは避けがたいこととも思います。アナログの音声などと違い、デジタルデータでは欠落や傷は致命的で、それで読み出し不可能になってしまいます。しかしそれだけではなく、Zipディスクがもたないというのはかなり解せません。経年変化がそうすすんでいるはずはないだけではなく、あまり使っていないディスクでさえ、読み出し不可能のトラブルがおこるのです。表面接触型の磁気ディスクである以上、フロッピーと同じように、頻繁にアクセスを繰り返せばやがてトラブルがおこるという説は以前からありました。でもそれほど使っていないディスクのはずなのに、突然「読めない」、あるいは勝手に「初期化しますか」などと聞いてくるようになる、これはたまりません。


 私が想像するには、これにはある程度やむを得ない、一定確率で生じうる機械的トラブルや経年変化といった問題だけではなく、どうもディスクやドライブの品質問題があるのではないかとも思えるのです。最近は750MBといった画期的な容量を誇る割には、ディスクの出来はちゃちに見えます。まして、ドライブ自体はともかくコストダウンに努めたせいか(それでなんとか生き残ってきたのですが)、見ていても不安になるようながさつな動きをし、外観も雑に感じます。「カチッと入った」というディスク装填時のフィット感がユーザー的には重要なのですが、なにかきちっと入っているのかいないのかわからないような不安感の残るフィーリングになってきています。まして、上記のようにi-omegaが孤塁を守って生き残ろうという体制です。世界じゅう一カ所でドライブもディスクも作っている、ひたすらコストを下げてきた、その「マイナスの成果」が出てきたと言えない保証もありません(あと、i-omegaブランドでしかいまも発売していない750MBディスクの出来の悪いこと、貼られているラベルにはボールペンでも字が書けない、印刷してある紙製カバーの裏も同じ、また以前からそうだったがプラケースは滑りやすく落っことしやすい)。

 現に、「読めないZipディスク」の復元を請け負う商売も堂々できています。もちろんほかのメディアでも似た問題が多々おこって商売のネタになっている、その一部ではありましょうが。


 私の想像が見当はずれであろうがなかろうが、現にかなりの「読めなくなったディスク」を抱え、相当の損害を被った身としては、これを信頼し続けるわけにもいきません。当面の防衛策は、できるだけのリスク分散です。残すべきデータは、PC内のHDにまず保存する、そして上記のCD-RやDVD-RAMへの保存をはかる、同じものを故意に数カ所に残す、こういった対応です。最悪の事態がおこってもゼロにはなりません。


 PC内のHDの容量が非常に大きくなり、ここにデータを置いておくのが簡単でいいという志向が強まったのが、Zipに限らず外部メディアの衰退を招く原因の一つでもありましょうが、それはもちろんポータビリティや交換性を欠くだけではなく、HDほど危ない記録装置はないという説もあります。あんなものが高速回転と非接触書き込み読みだし動作を続け、なんの間違いもなく正確に長期間動き続けると考えるのが無理ともされます。最近では破壊工作をするウィルスの侵入も怖いでしょう。でも、私は今のところHDのクラッシュ、データ消失という経験はしたことはありません。ただ、私の使い方からいって、HD内に重要データをとどめておくということもできません。



 Zipディスクというのは悪いものではなかったな、といまでも私は思っています。ただ、ここまで孤立し、またいくら執着してもトラブルに悩まされるとなると、私としても「負け馬にこだわる」美学なんかではなく、ギブアップの日は近いかとせざるを得ません。もちろん、本家のi-omegaが「やーめた」となれば、それでおしまいです。もうディスクも手に入らなくなります。i-omegaもZipだけでは生き残れないと見て、兄弟のような各種ディスクメモリに加え(ほとんど普及しませんでしたが)、最近はリムーバルHDなどを出し、なんとかメディアの世界での存続を図っている状況です。一時は大学のPC教室などでZipドライブ標準装備化をした例もかなりありました。それだけ営業はうまかったのでしょう。しかしこれだけ世の中から見捨てられ、またサプライやメンテナンスも不十分になってくれば、これも徐々に消えていくのみとなりましょう。




(2014.2)

あれからもう8年


 こんなZipディスクへの追慕を記してからもう8年近く、予想通りとはいえ、Zipディスクは完全に消えてしまいました。
 本体のアイオメガ社は2008年に他社に買収されたそうで、Zipドライブを含め、完全に供給はなくなったのです。ディスクのみはどっかから入手することも不可能ではないらしいのですが、誰が今さら買いましょうか。


 間違いなく、USBメモリはほかのメディアを駆逐してしまいました。MOも同じ運命でしょう。CDやDVD、BDは別の用途で大いに活用されていますが、それはそれ、私の想像通りに、大量データの保存や頒布用として、頻繁に読み出しや保存を繰り返すものとしての、USBメモリとはまったく位置づけが違いましょう。

 これからはクラウドの時代だよっていうプロパガンダもお盛んですが、まあこれもまた、用途が相当に違うでしょう。手元にあって、いつでもどれにでも利用でき、安価簡便なUSBメモリにはさすがに太刀打ちできるものはなく、私もいまはもっぱらこれです。うえには、「2GBなんていうのまで出てきて」なんて記してしまいましたが、当然ながら大容量化の流れはどんどん進み、いまどき2GBなんておもちゃ並み、32GBレベルでもごく普通です。128GBだってありますよ。

 私は先日韓国ソウルでの会議の際に、近ごろの歳のせいか、いろんなデータ入りのUSBメモリをみんな置いてきてしまい、USBメモリ最大の「弱点」を性懲りもなくまたやらかしたとがっくりしました。しかし幸い、主なデータは「たまたま」PC本体にバックアップ用保存してあったので、なんとかなりましたし、これで急ぎ作ったpptファイルのデータを主催者側に渡すためには、店で4GBのUSBメモリを買い、用いました。大した値段じゃなかったし、日本では見ないような超小型品でしたですね。



 このように、「置いてくれば」なんにもならないUSBメモリですが、実はほかにかなりの不安を感じています。アウトになるものが珍しくないのです。あとで記す、2013年のハードディスク抹消「サイバーテロ」事件のようなことも困るので、USBメモリも決して頼っていはいけない、万一に備えてバックアップはとるという習慣、今さらながら重要性を再認識させられる状況です。


 要するに、USBメモリの内容が突然読めなくなる事態です。すべてについて起こるというわけでもないのですし、その意味で製品の品質問題もあると感じるのですが、ともかく警戒を怠れません。

 どうもいちばん危ないのが、K社製の32GBのやつで、研究教育用に校費でいくつか買った、それが相次いでアウトになってきています。まったく読めない、データの存在をPCが認識できなくなるのです。そうなると、再フォーマット再使用もできません。完全にお陀仏になってしまいます。これらのK社製品だけということでもないので、K社を非難するわけにもいかないのですが、発売時点では最大容量であったこと、またそれだけにかなりよく使ったことも災いしているのかも知れません。



 USBメモリなどの記憶媒体であるフラッシュメモリには限界も寿命もあるというのは、かなり前からの公知の事実です。読み書きの動作に対する限界回数、また半導体本体の寿命というのは、避けがたいものとされているわけです。半永久的なものとすることはできません。フラッシュメモリは画期的な発明と言えるでしょうが、なんにでも万能というわけにもいかないものです。

 こういうフラッシュメモリで構成されたシリコンディスクたるSSDを、ハードディスクの代わりのコンピュータ心臓部にするのも、その意味かなり危ないことのようにも感じます。もちろんハードディスクにも寿命や故障はありましょうし、クラッシュ事故の起こる確率はずっと高いのかも知れません。ただ、ハードディスクのトラブルの場合、「生きてる」ところを読み出すとか、再利用するとかもできそうなので、フラッシュメモリの方が事故の損害が大きそうです。


 それを考えるに、USBメモリの便利さに頼りすぎて、痛い目に合うことがあるというのは、十分に覚悟し、対処を考えておいて当然でしょう。大原則はバックアップをとっておく、それに尽きます。私は最低限数ヶ月に一度は、メインのUSBメモリのバックアップをとっております。それも同じUSBメモリだと意味ないようにも感じますが、両方同時にいかれるというのもそうはないでしょうから。

 Zipディスクの中味は、ほとんどDVDやCDやハードディスクに移しました。常用するデータは、もちろんUSBメモリに入っています。Zipとは完全に縁が切れました。けれども、こんどはUSBメモリが二の舞となるのか、それはそうすぐには起こりそうにはないのですが、でも過信は禁物、当然のことです。




(2020.6)

あああ、Zipディスク


 さらに6年、のべにして15年近くも過ぎると、もうZipディスクなどという存在自体なかば忘れかけております。
 でも、忘れるわけにも行かないのは、一時期これで、個人的なデータを、原稿から画像からpptから、音声、動画に至るまで、相当保存しておいた、そのディスクの山でした。探したら、長持ちボックス一つ占領しておりました。

 前記のように、メインのメモリはほかに切り替え、移したはずなので、これを今更使うことも100%あり得ませんが、ともかくお邪魔虫です。腰が抜けそうなほど重いのです。「終活」のために、要らないものはどんどん処分しないといけません。

 ただ、まとめてどどーんとゴミに出しちゃえ、ともいかないのです。この中には、ほかのメディアに保存していないファイルもあるかも知れません(事実結構ありました)。外部にそのまんま流れてはまずいものもあります。「業務」に関わるもの、個人情報、かなりヤバいものもあり得ます(流れても、再生の手段がないかも知れませんが)。


 というわけで、ぜーんぶ調べ、ファイルを必要に応じて転送保存し、そのうえでディスク上のデータを消すことにしました。それが終わったら、まとめてゴミに出します。
 そのためにはまず、Zipディスクドライブを探さねばならず、ここで一苦労でした。かなり後まで、PCにドライブを付けてもいたのですが、いまではどっかにお隠れになってしまっています。それをなんとか掘り返し、探し出せば、出てくるわくるわで、のべ10台は下らないですね。PCに内蔵させるのから、外付け、それもSCSIだ、PCカードだ、FireWireだと、なんといろいろあることか。いまどきの標準である、USB一本で、というのは一台しかありませんでした。

 さあ、それで再生確認しながら転送作業を行っていくと、えらいことに気がつきました。Zip創世記の100MBディスク(四半世紀前には、それでも感動したもの)でも、ほぼ間違いなく再生できるのに(ただ、これは100MBディスク専用のドライブでないと最新最終の750MB対応ドライブでは、消去操作はできないというやっかいさです)、最後の世代だった750MBディスクが危ないのです。大部分が再生できません。まともに回らず、もちろんなかのファイルを読み込めません。中には、読めるディスクもあったりするので、なおやっかいですが、大部分はアウトです。


 これ、個々のディスクの状態といった問題を越えていますね。いちばんあとの世代の製品なのに、ダメなのですから。もちろん、750MB対応のドライブで、ほかの100MB、250MBディスクはほぼ問題なく読めるのです。

 なんともはや、呆れたものです。私の勘では、この750MBディスクの記録ファイルインデックスを表示する部分に重大な欠陥、急速な経年劣化があるのではないかと思料されます。


 まあ、今更に「なんとかしろ」とねじ込みたくても、相手もありませんから。アイオメガ社というのはいい加減な企業でした。ヒットエンドランというのは、米国の「べんちゃあ企業」の決まり手なのですね。

 これも今更ですが、あらためて思い知らされるのは、殆どのZipディスクのケースの出来の悪いこと。見てくれ綺麗で、また半透明で(初期のディスク付属のケースは透明でしたが)、いいように見えるのですが、これがみごとなくらいに滑るのです。何枚か重ねて持つ、運ぼうとすると、滑ってみんな落っことすのが常です。積んでおいてもよく崩れます。
 そういう「使い心地のよさ」、「手に馴染む」なとどいうような感覚一切無視というのが、この企業が末代まで残してくれたレガシーでした。いかにも◇▽○らしいなどと形容したら怒られましょうか。


*にしても、です。実は未使用のZipディスクが50枚近く残っているのです。私がもう使う予定は100%ありません。誰か引き取ってくれないかな。




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