もう一つの日本 

(日本改造計画私案) 

 

森本 優

2011/11/30


 あらゆる意味で危機的状況にある日本と、更には世界全体を立て直すため、以下の通り提案します。

 

統治の根本理念

 様々な知見を寄せ集めるだけでは本質的な問題が見えにくくなりますので、ここでは初めに、統治の根本理念を定めてから、次に、それを根幹として現在派生してくるはずの諸理念・諸政策を描くことにします。

 先ず、命を繋ぐために如何なる世界を子孫に残さねばならないかが、人類、否、地球上の総ての生き物に課せられている根本的な命題なのだと考えます。

 そこで、命を繋ぐためには、我々生き物には、命を育む豊かな自然と、更に人間には、健やかな成長を保障する地域コミュニティーの存在も必要であると考え、そのことを私は、世界を統治する上での根本理念に据えてみたいと思います。

 

現状認識

 ところで、人間が持つに至った強欲(飽くことなき物質的欲求)により経済的利益のみが強く追い求められ、その結果として自然は損なわれ、地域のコミュニティーは崩壊しかけています。

 都市は富と人を集め、様々な形で人々の心に強欲の火を焚きつけ、大量生産・大量消費の刹那的・享楽的な消費文化を現出させます。そして弱肉強食の野蛮な経済システムの中で、貧富の格差は非常に大きなものになり、また企業群は、資本の論理から発現してくるこの弱肉強食の土俵の上で踊らされ続け、グローバルな経済競争を強いられています。

 ところで「国家」は、何時の時代においても、時の権力者・支配者(層)にとって都合の良いように整えられ運営されてきました。そのため、「国益」とは、時の権力者・支配者(層)の利益に他ならず、その利益を実現する「国策」のために、地域住民が翻弄されることが多々生じてきたのです。

 特に戦後日本では、官僚・政治家・経済団体等が癒着し、そこで形成された利益共同体によって国が主導されてきたと言えます。

 しかしこれからは、「開国」の波に乗ってますます国際金融資本の支配が露骨に強く及ぶようになるので、さほど遠くない将来、日本の自主性・自立性が完璧なまでに奪われてしまうような事態にまで陥るかもしれません。官僚・政治家・経済団体・マスコミ等を飼い慣らして世論を導き、「開国」・「国際協調」・等々といった美名の下に、日本の自立的な再生の芽は摘まれようとしているのです。

 食糧安全保障に関して言えば、耕作農地大規模化政策は、この金融資本による大土地支配への地均しとなりかねません。自由化で真っ先に影響を受けるのは規模拡大した経営者です。国際競争に敗れ大恐慌で没落した経営者の背後から姿を現すのは、巨大な資力を持つ投機家・金融資本の類ではないでしょうか。そして農地が放棄され支配されてしまってからでは、日本の自主性・自立性など主張できるはずもないのです。

 また、ひとたび一定程度の農地が支配されるなら、食糧危機に乗じて、食料品の価格は安くなるどころか暴騰してゆくことは明らかです。

 自衛隊に関しても、「国際協力」云々と言った建前の下で、日本国の為と言うより、利益追求を至上命令とする金融資本・多国籍企業・軍需産業等が整える世界秩序維持のため、又は端的にそれらの利益追求のために、利用され戦争を遂行することにもなりかねないでしょう。

 ところで、グローバリゼーションに絡め取られている以上、世界的な経済破綻なり天変地異なりがひとたび起こるなら、日本でも大きな影響を受け、国内の政治・経済も麻痺しかねません。そのような状態が続く場合、もし国内の地域コミュニティーも廃れてしまっていて充分に機能していなければ、日本丸はそのまま沈没してゆくしかありません。

 そのため、このような最悪の事態に備えて私達は、究極的なセーフティーネットであり日本再生の礎となる地域コミュニティーの輪(必要最低限のモノ・コトは地域で生産・流通・消費する地域自給経済圏)の再構築を急がねばならないのです。

 自由化・世界平準化の流れは如何ともし難く、日本の政治・経済も九分九厘その波に呑み込まれ翻弄されることになります。しかし住民の自覚と相互の信頼・絆によって、その波に押し流されることなく各地に自給経済圏が根付くことができるなら、大恐慌や天変地異等の苦難が襲ったとしても、やがて慈愛に溢れた新しい波動を持つ地域協働社会が芽生え、日本、更には世界を再生へと導くことになるでしょう。(「みどり」(地域協働社会)は都市を包囲する 参照)

 

諸理念・諸政策

 

自然との共生

 原発の停止・廃炉

 環境汚染・放射能汚染等の予防・除染

 遺伝子操作・化学物質等の合理的な規制

 環境に配慮した産業の育成

 新エネルギー・自然エネルギーの開発・推進

 エネルギーの地産地消(環境に配慮した規模のものに止める)

 大都市の縮小化・緑地化

 Etc

 

 私達は、自己保身に汲々となり経済的利益のみを追求して来たために統治の理念を失い、今回取り返しのつかない原発事故を誘発させてしまいました。このことを深く反省し、本来の天道に戻るべく、これからは自覚的に自らの行動を律しながら、社会のあり方を身の回りから変えてゆかなくてはなりません。

 

地域コミュニティー

 個人の尊厳に配慮した多様な生き方の尊重

 情報開示

 参画と協働による公正で不当な差別のない住民自治

 地域自給経済圏の再構築

 地域内食糧・エネルギー自給力の向上

 Etc

 

 大都市の縮小化と地域経済の活性化を図るため、大都市や被災地から過疎地へIターン・Uターン等する人を援助するための、一定期間一定額の所得を保障するベーシックインカム制度や就農・起業を補助する制度を積極的に導入することも有効だと考えます。これは、地域資源を見出し活かしうる人材を確保する必要があるからです。

 従ってこれらの制度は、第一次産業に従事する場合だけではなく、加工や流通、そして教育・医療・福祉・観光等のサービス分野においても適用されるべきで、特に若い人たちに新しく事業・産業を興していただくことが主眼となります。

 以上のようにして、日本の立て直しは、地域コミュニティーの再構築から始めなければならないと考えます。

 

日本改造計画

 地方分権(権限・財源の移譲)の推進

 連邦制(道州制)の導入

 連邦国家の行政権能の制限(外交・防衛等必要最小限に絞る)

 比例代表制による一院制の導入

 国会議員定数の縮減

 官僚組織の縮小・改編

 自衛隊組織の縮小・改編(州自衛組織・連邦自衛隊制の導入)

 州行政庁の設置(産業・教育・厚生・治安等の行政権能を持つ)

 Etc

 

 連邦制導入の利点として、各州の行政庁に高度な統治機能を持たせることにより、連邦国自体が機能不全に陥るような事態においても、リスクを分散させることができます。

 また、行政をできるだけ住民に近づけることで行政を透明化し、住民・議会による監視能力を高めることも可能となります。

 更に、今の官僚組織を改編して旧来の悪弊を取り除くことも可能となります。この場合、明治以来の官僚主導型中央集権国家を一度解体し、そこに蔓延る政・官・財・マスコミ等の癒着構造を洗い流してからでないと、日本の再構築は充分意義のあるものとはなりえません。単にコスト削減を主目的とした「地方分権」では足元を掬われるだけでしょう。

 国際紛争において、州自衛組織・連邦自衛隊共に海外に派兵することは認められません。あくまでも自衛に徹する住民のための組織とします。装備もそれに見合ったものに限ります。

 各州の首長は、非常事態に備えて適時、連邦国を統括する総理を交え、連携するための話し合いの場を設けます。

 

以上


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