「みどり」(地域協働社会)は都市を包囲する

  

森本 優

2011/01/21


 

共生と分かち合い

 

 脱人間至上主義・脱「経済成長」(共生と分かち合い)こそが、今後我々地球市民に求められてくることだと確信する。

 確かに、脱「経済成長」という選択は、成長神話に取り憑かれた現代人にとっては受け入れがたい話かもしれない。

 しかし、成長のために、経済の効率性・生産性のみを追及し、人間を単なるモノや家畜としてしか見ない社会になっているとしたら、また、開発のために多くの生き物たちが絶滅し若しくは絶滅しかけ、地球環境そのものが破壊されて人類の存続自体が危ぶまれているとしたら、我々地球市民が取るべき道は、理性的に考えるなら、成長神話からの覚醒と新たな自覚(共生と分かち合い)の共有となるはず。

 ところが、世界では依然として、「経済成長」を前提として物事が論じられ運ばれている。

 ひたすら目先の利益と保身に汲々となっているために、人類の未来のことなどにはお構いなく、理念なき現実路線を突っ走っている大人のなんと多いことだろう。国民生活の質の向上を唱えていたとしても、理念なき現実主義者では、既存の権力体制に組み込まれその手先になってしまうのが落ちだ。

 また、昨今のマスメディアも、財界を中心として政界・官界ともしっかりと癒着しているのか、あまりにも一方的な報道が目に付く。

 主に企業がスポンサーになっているので内容に限界があることは誰にでも推測できるのだが、戦前・戦中の報道が日本を破滅に導く助けとなったように、今度は、経済戦争を後押しして、日本だけではなく地球をも放射能汚染等により破滅に導くことにならないか心配だ。

 やはり、これからの経済は、共生と分かち合いに基づく地域循環型の自給経済圏を自覚的に準備し発展させる方向で論じられなくてはならないだろう。つまり、経済成長の方向性が問題なのだ。

 

TPPに関して

 

 ところで、現政府が準備を進めるTPP等の自由貿易圏(ブロック経済圏)への参加は、旧来通りに競争力の強い輸出産業を成長戦略の要にするため、第一次産業等の競争力のない産業を切り捨てることになる。そうなれば、地域のコミュニティーなり文化なりは高齢化と相俟って急速に崩壊してゆくしかない。

 その点、農産物等の輸出により第一次産業にも競争力をつけさせ成長させることができると現政府は言う。

 しかし、過去の経験からも、競争力が弱い品目では、競争に生き延びることのできる事業体は、あっても極一部に限られることぐらいは誰の目からも明らかだろう。そのような発言は、自由化の本質を隠蔽するためのものでしかない。

 このように経済の効率性・生産性のみを追及し弱者を切り捨てる「経済成長」では、日本社会を極端に脆弱なものにしてしまうだろう。

 すなわち、グローバルな経済戦争の果てに、輸出産業が淘汰されるか海外に多くの拠点を移すようになれば、地域社会という再生の礎を失った日本丸は、そのまま沈没するしかなくなるのではないか。

 まして、気候変動による世界的な天変地異や政治的・経済的混乱、そして地域紛争の激化等の異常事態が高い確率で生じてきている現実を直視するなら、地域の再構築を図ることなく輸出産業を牽引主体として描く現政府の成長戦略では、亡国の謗りを受けることにもなりかねないだろう。

 

緑色革命

 

 さてところで、多くの労働組合が、御用化し企業の体制内に組み込まれてその補完組織に成り下り、雇用と昇給に汲々となっている現状では、食糧・エネルギー・地球環境等の重大な問題に関しては、そのような労働組合に根本的な解決を期待することは到底できるはずがない。

 その為、革命の主体を、労働者ではなく、各地域に根差した生産者や消費者等の、自覚した生活者に求めなければならない。すなわち、この革命の主体たらんとするなら、個々の労働者は、自覚した生活者として立たなければならない。

 そして、日本丸再生の礎となるのは、輸出産業にぶら下がって生き延びる地域社会ではなく、生きてゆくのに必要で基本的なもの・ことは地域で協働して自給し、事業をとおして地域の雇用と福祉を整えコミュニティーと地域文化を保持・再構築する、地域協働社会でなければならない。

 物質的豊かさのみを基準とした経済の効率性・生産性に追われる非人間的な社会ではなく、命の尊厳を守りながら、人と自然、人と人とがつながり合って、活かし活かされる血の通った地域協働社会でなければならない。

 個々の自覚を通した人間革命と、自治体を巻き込んだそれぞれの地域協働社会作り、そしてそれらの緩やかな連携が、来るべき地球市民社会の土台となることだろう。

 

「みどり」(地域協働社会)は都市を包囲する

 

 このようにして、各地域の地域協働社会(「みどり」)が繋がり合って、国内の、更には全世界の大企業と大都市を包囲してゆくことが必要だが、そこで提案する。

 日本丸の沈没を憂え、共生と分かち合いによって特徴付けられる代替社会を希求する、生産者・消費者等の生活者は、連携し協力し合って、先ず、それぞれの地方自治体に「みどり」派の議員を送り込んでいただきたい。

 脱人間至上主義・脱「経済成長」を掲げる「みどり」派は、まだまだ絶対的少数派に止まるだろう。だからこそ、今は用意周到に根を張り巡らせることに意を尽くし、時が来るのを待ち続けなければならない。

 やがて時が来て芽を出し、大小様々な花や樹となってこの地球上を「みどり」で被うようになるには、今、如何に周到に準備ができるかによるのだから。

 

 1998年の年頭に当たって

地球連邦構想案

西暦2010年の年頭に当たり地域・国家・世界・宇宙の各ビジョンを語る

その他

 

以上

 


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