基本理念について一言

 

甲府市自治基本条例策定の極私的経過報告その11

 

森本 優(2006/12/05)


見直し要望箇所

森本案

H18.11.30

 

 以下の項目の見直しを重点的にお願いいたします。

 

★ 第2条に基本理念を挿入

私案その1

第2条  市民と市議会と市長は、それぞれ果たすべき役割と責務を自覚し、参画・協働の下で市民の福祉を実現させます。

私案その2

第2条 市民と市議会と市長は、お互いに協働し合って市民の幸福を実現します。

 

★ 修正案第18条の修正 ( 第5章「市長とその他の執行機関」)

第18条弟1項  市長等の執行機関は、この条例の基本理念に基づき、(1)多様な民意に配慮しつつ、(2)公正・誠実かつ効率的に市政を執行しなければなりません。

(3)同第2項  市長等の執行機関は、市民の参画と協働の条件を積極的に整備し、そのための人材育成と適正人事とに努めなければなりません。

 

理由

(1)  修正案では「市民の意思を市政に実現させる」という表現が使われていますが、この「市民の意思」は、ややもすると情報操作や利益誘導、そして根回し等によって、時の権力者・実力者(団体も含む。為念。)の意向が強く反映されたものに実質上置き換えられているのが、残念ながら今の世の中の実情であってみれば、安易に抽象的な形で「市民の意思」(民意の反映)という言葉を出すのはいかがなものかと考えます。すなわち、この表現では、容易に多数決による民主全体主義に転化していきますので要注意です。

 私は、少数派の意思もできるだけ尊重していただきたいという想いから、「多様な民意に配慮しつつ」という表現に変えています。そして、参画・協働社会の実践の過程で、徐々に立憲的な民意の反映方法を、市民自らが試行錯誤の中で工夫してゆくべきものなのだと考えます。

(2)  修正案では「全力を挙げて」となっていますが、この表現では評価項目としては相応しくないと考えます。

市民が市長等を評価する場合、重要で分かりやすい項目としては、「公正」「誠実」「効率」等ではないかと考えます。

(3)  本条に第2項を入れ、自治基本条例策定の結果当然発生してくるはずの市長等の責務を規定する必要があります。

 

★ 「市民会議の設置」条項の挿入( 第7章「市民参画」)

(第35条)  「市は、前条(市民意見提出制度)第1項の結果を踏まえ、市政課題を市民と共有するため更なる議論が必要と判断した場合には、市民と自由に意見を交換し議論し合える市民会議を開催します。

2  市民は、同様に市に対して市民会議の開催を請求することができます。

3  市民会議の内容及び実施手続き等に関し必要な事項は、別に条例で定めます。

 

理由

 修正案第34条の意見提出制度のみでは、市政課題や問題を市民と共有すること(情報の共有ではない。為念。)が困難な場合があるため、市は必要に応じて、議員・行政職員等も含めた、市民一般に開かれた市民会議を開催して議論を深め、市民と問題を共有するよう努めるべきです。

 また、そのような議論の場を設けることではじめて、市民の参画権(修正案第6条)も実質的に保障されるようになるものと考えます。

 

★ 「参画と協働の検証」(仮)条項の挿入

(第37条)  「市は、この条例の基本理念を実効あるものにするため、こうふの自治基本条例検証委員会(以下「検証委員会」といいます。)を置いて、参画と協働の実施状況を検証します。

2  市民は、検証委員会に対して検証を求め、又は意見を提出することができます。

3  検証委員会の組織及び運営等に関し必要な事項は、別に条例で定めます。

 

理由

 甲府市自治基本条例の中心的な柱となる参画・協働の主旨が、市政運営の過程でどのように具現化されているのか、そして、市政運営や市民生活の中でどのように機能しどのような問題が生じているのか、または、具現化されたものが市民の人権保障・福祉の向上に資するものになっているのか、等等について、市民・市議会・執行機関が共に関与する形で検証してゆく必要があります。そしてこのことは、市民との協働が求められている自治基本条例においては、当然なことであると考えます。

 


基本理念について一言

H18.12.5

 

 皆様、ご苦労様です。森本です。

 先日、12月1日の「つくる会」全体会で、市民案としては基本理念は条文に入れないことが決定されました。

 しかし、よりよき自治基本条例を創りたいという思いはまだありますので、あえて一言補足しておきます。今後の参考になれれば幸いです。

 

 当日の会議では、基本理念を入れ込んで、一般市民にとっても分かりやすく親しみの持てる自治基本条例を目指すべきとの意見がありました。

 これに対しては、理念は前文に掲げられており、「市民の福祉」「参画・協働」「公正・平等」「市民自治」等々がそれであるから、それらの「理念」を第2条で「基本理念」として「市民の福祉」だけに限定(「矮小化」)してしまうのはいかがなものか、という意見が制定研究会から出されました。

 「つくる会」会員の多数の方々も制定研究会からのこの意見に賛同されたようで、そのまま基本理念は条文に入れないことになりました。

 しかし考えますに、この論法では、各条文の中にも幾度か出てくる「理念」と第2条として提案されている「基本理念」とが、同一であることが前提となっています。

 もし、前文に掲げられている前記のとおりの幾本かの「理念」の柱と、その柱の中で一番中心となる大黒柱としての「基本理念」とを、自覚して区別し使い分けることができるなら、やはり、「基本理念」として「市民の福祉」若しくは「市民の幸福」を条文として明示しておくほうが一般市民にとっても分かりやすいと私は思います。

 私たち市民の幸福が一番大切なのだということを条文に明示できるかどうかということは、自治基本条例の性格(単なる役割分担をきめたものか、それとも市民の幸福を実現させるものか)そのものさえも決定しかねない重要なことであり(『「まちの憲法」について』参照)、一般市民によって愛され大切にされるかどうかの重要な標となるものと考えます。

 前文(理念)があって更にまた基本理念があるのは、あまり例がなく、必要ないという意見が多数ではありましたが、あえて大黒柱としての一番大切な理念を明示し、市民のための自治基本条例であることを自覚的に強調すべきであったと今も私は考えています。

 

以上です。

ありがとうございました。

 


甲府市自治基本条例をつくる会会議録


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