歌舞伎 実盛物語
(さねもりものがたり)
♪ 義太夫狂言(「源平布引滝」三段目)
♪日時:2004.05.30(sun) 22:00〜 NHK放送(芸術劇場より、平成15年5月 歌舞伎座・収録)
♪配役:
斉藤別当実盛:尾上菊五郎
百姓・九郎助:市川左團次
その妻・小よし:市川右之助
その娘・小万:中村芝雀
御台・葵御前:市村萬次郎
矢走仁惣太:片岡亀蔵 など
♪内容:
九郎助住家
琵琶湖畔の九郎助の家。小よし、葵(庶民の姿)がいる。葵は源氏の木曽義賢の妻で身篭っていたが、その夫が平家に敗れたため、九郎助の家に匿われていた。そこに九郎助と孫の太郎吉が帰宅。孫は琵琶湖で手に旗を握った片腕を拾ってくる。旗を広げるとそれは源氏の白旗(象徴、重宝)であった。庄屋が来て、実盛と瀬尾十郎兼氏がやってくると告げる。二人は葵を探しているのだ。二人が現れ、九郎助を詮議する。瀬尾は身重の葵を見つけたら、子供ともども始末するつもりであった。小よしは夫と謀って、赤子を抱くようにして奥から出てくる。二人は錦に包まれた赤子を見せるように指示すると、そこからは例の片腕が出てくる。瀬尾は腕を生んだという話は聴いたことがないと一蹴。しかし実盛は故事に因んで即興でこじつけ話を作り、そんなことも在り得ると言い聞かせる。半信半疑ながらも瀬尾は納得させられ、一人引き上げようと家を出る。そのまま藪に身を隠し、監視を続ける様子。
実盛が家に上がると葵が今度は奥方らしい衣装で現れる。そして危ないところを救ってくれた実盛に礼を言う。実盛は今は平家側で働いているが実はかつては源氏方であったのだ。
例の片腕は自分が切ったと言うと、九郎助は娘の腕と知って激怒。実盛を責める。実盛は浄瑠璃に合わせて、舞いながら経緯を語って聞かせる。丁度そこへ小万の遺体が運び込まれる。その死体に片腕に白旗を握らせて、腕を継ぎ、九郎助が井戸の中へ叫ぶと、あら不思議、小万が息を吹き返す。が一言二言語るのが精一杯で命が尽きる。
急に葵が産気づき、男の子を出産(後の義仲である)。
九郎助は太郎吉をその子の家来にと実盛へ願い出る。実盛は太郎吉に、小万の腕を手厚く葬って今後は、”手塚”太郎と名乗れと言う。そこへ隠れて一部始終を見ていた瀬尾が押し入る。太郎吉はその隙をついて、瀬尾に刀を突き刺す。死の間際、瀬尾は、小万は実は自分の娘であったと語る。つまり太郎吉は瀬尾の孫であった。そして太刀に太郎吉の腕を添えさせ、自ら首を切り落とす。太郎吉の最初の手柄とさせる親心であった。
実盛は馬を曳かせ一度、太郎吉にも乗馬させて、一回りすると、悠々と引き上げていく。
♪メモ:
以前にも同じく「源平布引滝」の三段目だけを見た。
前回の実盛は誰?
歌舞伎が隆盛を迎えた江戸時代は徳川の時代。徳川家は源氏の流れを謳っているから、歌舞伎でも源氏びいき。平家が悪者である。従って、本舞台でも身を潜めていた葵御前の危機を元源氏方の実盛が救う、という筋になっている。
♪参考資料:歌舞伎ハンドブック(藤田洋・編 \1,500
三省堂)
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更新日: 04/11/06
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