美浦村の馬頭さん


 馬頭観音菩薩をご存じでしょうか?私のまわりの人々は愛着を込めて『馬頭さん』と呼びます。

 このページへ辿り着いた方の中には競馬ファンも大勢いることでしょう。それは現在の美浦村の知名度に『日本中央競馬会美浦トレーニングセンター』(以下、美浦トレセン)の存在が大きく貢献しているからだと思います。そして今、国内で目にする馬の多くは競走馬や乗馬で使われるサラブレッド種やアングロアラブ種ですからそれも当然のことと思います。
 しかし、これら外来種とは別の馬たちが、永い歴史の中をつい数十年ほど前まで私たちと共に暮らしてきました。暮らしの中で馬たちは大切な財産であり家族でもありました。そういう大切な馬たちの安全と成長を祈りまた死んでいった馬たちへの供養のために多くの馬頭観音が全国に建立されてきたのです。ここ美浦村も例外ではありません。美浦トレセンが建設されるよりずっとずっと昔から、村内の路傍には行き交う人々や牛馬を見守るようにして「馬頭さん」は立ち続けているのです。

 『美浦村石造物資料集』によれば村内には35基の馬頭さんがあるそうです。中には個人宅でお守りされているものもあるのでその全てを見ることはできないかもしれませんが、美浦村の四季を背景に馬頭さんを少しずつ回ってみようと思います。

  夏    



今年は5月ともなればすでに初夏

(13)村内のとある競走馬育成牧場の馬頭さんです。毎月8日には花やお菓子をお供えしているそうです。

(14)大字布佐鍛冶内。幡神神社境内。天保2(1831)年。上下に割れてしまったのを繋げてある。

(15)大字上舟子鹿島神社前。天保十巳(1839)年および明治34(1891)年。鹿島神社鳥居手前のお宅の敷地内にお祀りされているが道からも見られる。右手の大きな馬頭さんが天保年間、左手のが明治のもの。

[参考文献]
(1)美浦村石造物資料集 美浦村史編さん委員会 1986。
(2)日本の神様読み解き事典 川口謙二 柏書房 1999。


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