コラム70 葉ッパのうつわ
 
葉ッパを象(かたど)った陶器のお皿・葉皿は昔から人気のある器ですね。まだ柔らかい陶土の皿に生葉を押しつけて、押形をつけ、上薬の濃淡を楽しむ葉皿も素敵な趣向ですよね。飛騨の高山では陶器ではなく、生葉の朴葉(ほおば)を食べ物をのせる器として売っているようですしね。
生葉のうつわで、ボクらがお目に掛かる第一はカシワ(柏)餅。
ところで、カシワの名は、「炊(かし)ぐ葉」から由来したと言いますね。「炊(かし)ぐ」は古語では蒸すことですから、この語源からカシワの葉は古代では蒸す調理に使われていたと推定されます。
蒸し器といえば、出土するコシキ(甑)。弥生(やよい)時代の甑(コシキ)は鉢形とか甕(かめ)形の器の底に、下の器から沸いた湯気をあげる穴があけられていますが、どうもこの時代にはまだ、簀子(すのこ)はなくて、多数の葉でくるんで小口にして蒸していたらしい。ええ、チマキのようにしてね。だから、小さなカシワ葉でくるんだとしたら数枚あわせて包んだのでしょうね。
ところで、通説ではカシワの名は、「炊(かし)ぐ葉」の総称だったと言われています。ですが、どうして今の柏葉だけが、「炊(かし)ぐ葉」の名を引き継いでいるのかは、ガクシャは奥ゆかしいから言いませんね。奥ゆかしくないボクは、柏葉だけが、チマキのように「炊(かし)ぐ葉」として永らく使われてきたからだと思っていますがね。
    
もっとも身近な葉の器はハラン(葉蘭)でしょうね。寿司の盛り合わせや、幕の内弁当の間仕切りや掻敷(かいしき)に使われてきました。でも、今の駅弁の間仕切りのハランはビニール製になってしまいましたね。30年も前には、家庭で作る弁当の間仕切りにも、葉蘭(ハラン)が使われていました。ですから、狭い庶民の前栽(せんざい)にも片隅にハランが植えられてきたものです。
ボクらの世代では、ハランで間仕切られた弁当は、ちょっとよそゆきの雰囲気でしてね。
まあ、日の丸弁当の隅が仕切られて、卵焼きでも入っておれば、おおゴチソウでした。
     
次にお目にかかることが多い葉の器は、柿の葉ですかね。柿の葉寿司の柿の葉。
吉野、五条あたりの名物ですね。柿の葉は乾燥させて健康茶としてポピュラーですから、薬理効果があるのでしょうね。
だから、柿の葉寿司の芳香はカラダに良いような旨さを感じるのでしょうか。
笹も各地でよく使われる包みうつわですね。
もっと、ポピュラーな食器は竹の皮。握り飯や、おむすびを竹の皮に包んで半日経った昼頃になると、余分な湿気が抜けて、ご飯が美味しくなっています。
それに、竹の皮の内側はつるつるで、清潔なかんじがしますもんね。いまでも、肉屋が薄切り肉を入れるのに使っていますね。あれは、なんとなく旨いような気がしますね。
中華チマキでは竹の皮に包んで蒸します。もちもちしているのに、竹の皮の内側にはくっついていませんね。
ところで、広東料理にハス(蓮)の葉で包んで蒸す料理がありますね。ボクは丹念に葉を取り除いて食べることにしているんですが、あれは、ひょっとすると桜餅の葉を丹念に取り除いて食べるのと同じほど野暮天なのかも知れませんね。いや、はや。