コラム・57 チップの難儀
         
外国旅行をして、わずらわしいのは、チップですね。
パック旅行の気安さの一つはチップに悩まなくていいこと。せいぜい、朝起きた時に部屋の掃除係に置くピローチップぐらいですからね。
ピローチップといえば、バリ島で、チップをポチ袋に入れておいたら、その夜、枕に小さな花が置いてありました。オカネを裸でわたすのは、いやですもんね。
個人旅行をして、ホテルにチエックインすると部屋のカギは客に渡さないで、後ろにひかえているベルボーイに渡しますね。で、うやうやしく荷物をとりあげて部屋まで案内してくれることになります。まあ、これは奮発して一流ホテルに泊まったときの話ですが。
さて、部屋まで荷物を運んできたベルボーイは、チップを待っています。ところが、こちらは入国してホテルについたばかりなので、チップ用の小銭は持っていませんよね。旅慣れた人は空港の両替で、チップ用の小銭をたっぷりと用意するものらしいですがね。荷物一個に邦貨100円相当。
持ち合わせがなく、とまどったボクは1000円相当の紙幣をだして、「ツリをくれ」といったことがあります。
日本人の感覚ではチップは心付けか、祝儀(しゅうぎ)ですから「ツリをくれ」と言うのも変なんですがね。お賽銭に「ツリをくれ」と言うみたいにね。
でも、チップは労働に対する報酬らしいから、チップに「ツリをくれ」と言ってもおかしくないらしいですよ。ぼくが「ツリをくれ」と言ったら、ベルボーイは、さっさとポケットから釣り銭をだしてきましたがね。「ツリをくれ」と言う客もあるらしいですよ。現地にながい友人は「そんなことをするのはドイツ人ぐらいやで」と呆れていましたがね。
     
頭を悩ませるのは、タクシーのチップ。旅行案内書には「10パーセントのチップ」って書いてあるから、パリでもだしていたんですが、あれ違うんですってね。
パリでのタクシーのチップは、普通の場合は不要だそうで。
都心の旧市街から出ると帰りのタクシー代金をとられるものらしい。ええ、倍額。
ですから旧市街ぎりぎりまで乗る場合は、気の毒なので、こんな特殊な場合だけ20パーセントぐらいのチップをだすものらしいですよ。
ところで、旧市街とは昔の城壁のうち。メトロ(地下鉄)駅の名にポルト何とかと付いているのが城壁の門があったことを示すとか。
ポルト・デ・クニャンクールとか、ポルト・デ・リラとかね。リラの門なんて、今でもあるのかどうか知らないけど、リバイバル映画でみたばかりなんですがね。
でも、ボクは外国人税だと思って、10パーセントは払ってきましたがね。
しかし、日本でもタクシーのチップは頭が痛いですよね。混んだ駅前乗り場から乗って、運転手が長時間客待ちしていたことがわかっているのに、近距離を嫌な顔もしないで、気持ちよく走ってくれたときには、まあ、「ツリはいりません」ぐらいのことはしても、嫌味をいわれたりしたら、だれでも出す気がしないでしょうしね。
日本人にはチップは心付けか、祝儀ですからね。