コラム・56 干物(ひもの)の話
    
アユは、秋になって卵を抱くと産卵場所の川の中流域へ下ってきます。ええ、「下(くだ)りアユ」、産卵場の瀬に群れる産卵直前は「瀬付きアユ」というそうですが、産卵後は「錆(さび)アユ」と言われます。まもなく斃死(へいし)する直前。
卵を抱いた「下(くだ)りアユ」、「瀬付きアユ」からウルカをとったあとのゴミとか、産卵後の「錆(さび)アユ」を干物にしてダシジャコとして利用する所があります。
30年も前には、高知の日曜市にでていましたが、あんなじゃまくさいものを作る人もなくなったようですね。
売っている鮎醤油の鮎ダシは、また別の物かもしれませんがね。
産卵後の「錆(さび)アユ」は、マズくて生では、とても食べられませんが、天日干しにしてダシに使いますと、旨みがでます。もちろん、若鮎、落ち鮎の干物も、干すと一味ちがいますね。
         
ちょっと出かけたおりに、漁師町で向かいの海沿いの道端に干物が干してあるのを買ってくると、あれ、美味しいですね。太陽にあたって、それに海風にふかれたから、美味しいのでしょうね。そのうえに旅の楽しい想い出が加わっているからでしょうね。
最近店で売っている魚の干物は電気乾燥らしいし、それに柔らかい一夜干しですね。
干物といえば椎茸。干し椎茸ですが、百貨店あたりから進物として送られてくるものの中には白っぽいものがありますね。白っぽい干し椎茸なんて、見るからにまずいように思うけど、褐色の干し椎茸がキタナイと思う人達がいるらしいですね。
まあ、人は好きずきなんでしょうが、白っぽい干し椎茸を半日も太陽にあてると、日干しに近い味になるって人に教えられて、やってみたら、そんな気分になりました。
あれ、太陽光線でグルタミンとかの美味成分がふえるらしいですね。
       
特殊な干し方といえば、韓国の明太(ミンタイ)はスケトウダラの身の凍し干し(こおらしぼし)なんだそうですね。ええ、凍乾品。鱈子の凍乾品もあるそうですね。
福岡の名物、明太子(ミンタイコ)は韓国風の凍乾製造方法の改良型だそうですね。
凍乾製造は魚を凍結、融解を繰り返して乾燥させるらしい。まあ、原理は寒天と同じですかね。高野豆腐(凍り豆腐)も同じ加工原理らしい。
今や、凍乾製品の代表はフリーズ・ドライで作るインスタント・コーヒーですね。
インスタントコーヒーを発明したのは、日本人だとよく言われます。ええ、凍り豆腐(高野豆腐)の技術の応用だとね。たしかに、ドラム乾燥法と言われている方法で粉末コーヒーをつくったのは日本人で、それも1900年代初めらしい。ですが、インスタント・コーヒーは香りが生命ですね。香りを残す本格的なインスタント・コーヒーは、1946年のマクスウェルの噴霧乾燥法だとされています。
ですが、外国の技術を導入して国産品もでていますが、今でもインスタントコーヒーの高級品は輸入物だそうですね。香りを残すノウハウの技術革新競争は熾烈なんですね。