コラム・49
    
出土品の骨董の話
むかし、韓国の慶州へ旅行したことがありまして、そのころボクは50才代でした。50才代というと、みなさんと同じで、少し経済的な余裕のできた年代でもあり、旅行をすると街角の古物屋を覗いてみることが多くなっていました。
慶州は新羅の古都ですから、そこそこに古物屋が店をだしておりまして、その一つに入ってみましたところ、汚い棚の下に木箱が押し込んでありました。何やら、汚い陶器が見えていたもんですから、少し引き出して見ていると、店のオヤジが、日本人のカモが来たと思ったらしく、恭しく、その木箱のさらに奥から、さらに汚い茶碗を引っ張り出してきましてね。上のカウンターには上げないで、秘密めかしく、しゃがんだままで、ひそひそ話を始めるんですよ。
まあ、言っていることは、「千年も前の珍しい陶器であって、発掘した考古学者の横流し品である」なんて、誘ってるんですよ。
もし、本当なら韓国の文化財を持ち出すのは問題ですよね。
買う気は毛頭ありませんでしたから、あんまり興味のあるような態度はとれませんで、気のないような聴き方をしました。
この小汚い店で見せられたのは、多分今出来の贋物だったと思いますが、広口のメシ茶碗は、日本では夏の抹茶茶碗ですから、墓から掘り出された出土品は、日本では茶事関係者には興味のある品物なんですね。
ええ、茶事の道具は不思議なほど高価ですしね。
それと、朝鮮半島とシナでは、昔は墓あばきが公認された職業でもあったそうで、そんなことから墓の副葬品が、今でも古物屋に出回っているそうですね。
被葬者の日常使っていたメシ茶碗は必ず副葬されたそうですから、墓暴きによる出土品の典型でもあるそうですね。
朝鮮半島では、センゾを葬った土饅頭に松とかが生えることを極端に嫌いますし、子孫があるかぎり毎年手厚くお祀りをする伝統があります。
ですから、土饅頭に松とかが繁ると縁者がいなくなった無縁墓だと、一目瞭然にわかるんですね。無縁墓は暴いても、ただの埋蔵物の掘り起こし。そんなことから、墓暴きが公認された職業だった時代があったらしい。
      
出土品を茶事関係者は珍重するなんて言いましたが、日本では、やっぱり伝来品のほうが珍重されます。まあ、出土品には、まがまがしさが臭うからでしょうね。
伝来品は使っているうちにできた使い傷があります。細かなね。
細かな使い傷があるほうが、茶事では貴重品。それに、大げさな由来でもあれば、ますます貴重なんですね。ええ、細川家の蔵開き品だなんてね。
日本人には奇妙な趣味がありまして、ピカピカの新品よりも、艶を失った古色のあるほうが好まれます。
ですから、窯元によっては、わざわざ古色をだしたものを焼いています。清水の六兵衛窯でも出していますからね。古物屋や、骨董屋によってはわざわざ新品にパフ・グラインダーを掛けて、「古色をだしてますねん」なんてのもありますね。
これを古い物だとして売れば贋物なんでしょうが、ちゃんと古色物としているんですから罪はない。
それにしても、日本人って変な趣味。