コラム・40
     
お茶の子さいさい
これは、俗謡のお囃しの「のんこさいさい」をもじったことばだそうですね。
ええ、朝メシ前ともいいますね。「簡単、簡単、朝メシ前」なんて言い方をするのは年寄りだけになりましたかね。
ところで、「お茶の子」は、田舎で、朝起きてすぐに、山へ芝刈りとか草刈りに出かける前に頬バリながらする食事のこと。
こんなことを言い出したのは「むかしの日本人は一日二食だった」と言う人があります。だから、今の人達も「朝食抜きでも平気」なんてね。
あんなことを言う人は、日本の田舎では一日6食だったことを知らないのかなぁ。
なるほど、農家では朝餉(あさげ)と夕餉(ゆうげ)だけだと二食だったようですが、その間に間食があったんですね。それに、間食の内容ですが、朝起ぬけの「お茶の子」でいうと、ヒエとかソバの団子で、大きさは小さなメロンほどもあったんですよ。まあ、トーストなら3枚分。前の晩にイロリ(囲炉裏)の熱い灰のなかに、これを埋めておいて、早朝出がけに食べていたらしい。それで、昼食(昼餉)は9時ごろ。
今の都会人間の朝食はせいぜいトースト2枚とお茶だけで、昼食もザルソバ一枚。
朝昼食ともに、せいぜい「お茶の子」。とても朝餉、昼餉ではありませんね。
したがって、今の都会人間は「一日一食」というべきでしょうね。まあ、その代わり夕食に高カロリー食をドカ食いしていることになりますかね。
昔は、動物性タンパク質の摂取がすくなかっただろう、と思いますが、カシワ、野生の鳥もそこそこ食べていたようですよ。ええ、ウサギは一羽二羽って数えるように、分類的には鳥でしたしね。イノシシ、鹿肉は山クジラでしたしね。
        
ところで、「お茶の子さいさい」のお茶のこと。
日本にお茶が入ってきたのは、8世紀の天平(てんぴょう)時代ってことになっていますが、日本の山野には、太古の昔から野生茶(ヤマチャ)がありました。
このヤマチャは日本固有種でして、焼き畑を終えると最初に生えてきたそうです。
ですから、百姓は昔からヤマチャを飲んでいました。
いま飲んでいる静岡産、宇治産とかの煎茶も、実はこのヤマチャとシナ伝来のものや、インド雑種などと交配された混合種だそうですよ。
シナ種について言えば、「日本にお茶が入ってきたのは、8世紀」と言えますがね。それに、抹茶とか献茶にして飲む喫茶だけをお茶とすればですがね。
ところで、ヤマチャは山間部ではいまだに根強い人気がありまして、番茶にしまして、カラダにいい、とか糖尿病にきくとか言われています。
ボクもいただいて飲んだことがありますが、クセのある臭気がありますが、野趣があって、それなりに旨い物ですよ。ああ、健康食品として売っていますね。
    
ところで、「お茶の子」ですが、イギリスのティータイムに挽肉パイとかがでるように、たっぷりとした漬け物とか団子とかがついているものだったようですね。今でもそんなところがありますね。お茶請けにたっぷりと物を食べるのを「お茶の子」と言うんでしょうが、とっちが子だかわからないような食べ方ですね。
  
食べ物のウソと言えば「サンドイッチはサンドイッチ伯爵が発明した」なんて書いている辞典がありますが、パンのあいだにハムとかを挟んで食べる習慣は羊飼いとかの庶民のやりかた。羊について歩きながらの食事はパンにハムとかを挟んで食べるしかないだろうしね。
で、どうして「サンドイッチ伯爵が発明した」ことになったかはハッキリしませんが、「或るレストランが、伯爵の名前を冠してメニューにした」との説が納得しやすいですね。ええ、シャリアピン・ステーキみたいにね。