コラム・4
     
旅館選びのこと
日本旅館でのお仕着せの料理は気に入らないですね。なんで、あんなに量が多いんでしょうねぇ。それに山の中でも、海魚の刺身が出ますね。ものの本によると、日本旅館は田舎の団体客を前提にしているんだそうですね。ですから、旅行は日常と別世界のハレですから、田舎では日常食べない刺身とくるんだそうですね。前の渓流でヤマメが泳いでいる山の温泉で、マグロのドス黒くなった刺身が出るのはセツナイ。高級とは思えない値段だけが高価な旅館では、物慣れた女中さんが、側にべったり座ってお給仕してくれますから、食べないと悪いような気がしてきます。残すと「胃がわるいんですか?」なんて軽蔑の眼差し。美味くもないものを「食べろ、タベろ」と無理強いするのを「無塩(むえん)の平茸」って言いますね。
むかし木曽義仲が、京都に入ってきて、何かの用事で貴族の猫殿を招待しました。
当時の京都では魚は塩漬けが普通でしたから、上等の生魚は無塩(むえん)って呼んでいたらしい。義仲は「むえん」を京言葉での貴重品のことと勘違いしていて、上等の平茸のつもりで「ムエンの平茸だから、食べろタベろ」と無理強いしたらしい。出来すぎているから、まあ、後から作った話かもしれませんがね。
     
料理屋での宴会でも、同じですねえ。どす黒くなったマグロの刺身は、一夜乾しみたい。テンプラは冷たくなっていて「冷しテンプラ」。多人数の宴会だと、朝の内に刺身を盛りつけ、テンプラも早いうちに用意していますから、切り分けて風に当たった刺身は「一夜乾し」、それに「冷しテンプラ」。
日本旅館はホスピタリテイがあるっていうけど、愛用している寝酒でも持ち込んでいるんではないかと、女中さんのじろじろ調べる嫌らしい目つきがホスピタリテイとはとても思
えない。それに、無愛想でも心付けを心配しなければならないし。
布団をあげた埃だらけの部屋で食事するのは、ボクは苦手ですね。
「朝食は食堂で」ってなるとホットしますね。ええ、最近は中級旅館ではこんなところも増えましたね。もっと安い宿だと手間を省いて、セルフサービスのバイキング。あれは、野菜不足になっている長期旅行者、長期宿泊者にはありがたい。
     
まだ注文すると、部屋も定めて予約させてくれないものでしょうかね。劇場の予約をとるときには、「いい席があればいくけど、こんな隅しかないのなら、日をあらためよう」ってなりますよね?
旅行の場合は、見晴らしのいい部屋がないのなら「隣の旅館とか、隣の町とかに泊まろうか」になりません?
これほどのIT時代なのに、客に部屋選びもさせないのは傲慢。まあ、ホテルでもフロントに「お客様は200号室です」なんて頭から押しつけられても、文句も言えずおとなしく従ってきた伝統(?)は、もうそろそろ改めてもらいたいなぁ。それに、部屋代と料理代金は別々に選択させてほしいなぁ。「部屋は少し上等にしたいけど、料理は普通のでいい」なんて時がおおいもんねぇ。
戦後、物の不自由な時代の「泊めてやる」なんて雰囲気では、もうないと思うけどね。