イソップの宙返り・240
      
犬と鍛冶屋
犬が鍛冶屋に住んでいました。皆が仕事をしているときは、どんなに喧しくても、ぐっすり寝ていました。
ところが、皆が食事を始めると、むっくり起きあがってきました。
鍛冶屋が言うことに「重たいハンマーの音にも目を覚まさないのに、奥歯を噛み合わせるあるかなきかの音に飛び起きてくるのは、どういう訳だ?」
寓意・人の言うことを聞かない人間でも、利益が期待されることには、いそいそと耳を傾ける。
☆     ☆
ええー、上方(かみがた)には変な諺がございまして、「武士の子は、茶碗の音で目を覚ます」ってのがあります。変な諺ですよね?
「武士は刀の音で目を覚まし、貧者は茶碗の音で目を覚ます」ってのが基になっているようですね。ええ、「武士は食わねど高楊枝(たかようじ)」のアイロニー、皮肉。
「武士の子は、茶碗の音で目を覚ます」は全国的な諺ではないのでしょうねぇ。武士蔑視の上方特有のアイロニーなんでしょうねぇ。
あなた、お聞きになったことないでしょう?
上方には、さらに「士農工商は貧乏人の順番」なんて言い方まであります。
ええ、士農工商は江戸時代の身分の高い順番でしたね。それを「貧乏人の順番」なんて言うところが上方的。
最近は「役人は、ゼニの音で目を覚ます」ようですね。江戸ザレ唄風に言うと「役人の子はニギニギが好き」ってことになりますかね。
      
役人の裏金が摘発されました。それもボクの住む神戸地区が目立って多いですね。
あの元は出入り業者からリベートをねだって裏金にしてきたんですよ。ええ、これが元祖。
それが高じて、役所のカネにまでエスカレート。
役所の忘年会では会費3000円が常識。今時、3000円で何ができる?
参加者は「幹事が、然るべくやってくれている」と思ってきました。
こんな汚職モドキは、何も役所だけではありませんね。
正義の具現者ヅラしてきた報道機関でも、そうしてきましたよ。
記者クラブの忘年会でも、そのクラブを抱えている役所とかが、寄付してきました。
さすがに、「おかしい」ということになって、ある年、もらった寄付を返しにきたことがありました。そりゃあ、記者は役所とかを批判する立場ですもんねぇ。
       
ボクが関与していたのは、役所的な或る組織でしたが、記者クラブが寄付を返しにきたことが大問題になりましてね。「寄付を返したってことは、非難的な記事を書くつもりではないか?」とね。
どんなに自省しても外部の目の批判がないと腐敗するものですよ。ええ、井の中の蛙。組織は自己満足の陥穽に陥るものですよね?
だから、外部からの批判があって民主主義社会はなり立つ。
マスコミとか世論の批判によってなり立つ社会。そんなことがわかっていても、人は自分とか自分の組織が批判されるのを嫌いますねぇ。
批判はオカネを出してでも聞きたいもののはず。だのに、マスコミが批判すると、「誰が密告した?」なんて大騒ぎになりますね。
ええ、「批判が正当か、批判された事実が真実か」なんて、そっちのけでね。
裏金作りがバレるのは「密告」騒ぎでしょうが、批判は耳を傾けるいい機会なのにね。
      
批判、反対説によってなり立っている学会でも、気に入らない批判がでると、同じような騒ぎになりますね。
人の教えに耳をかさない「裸の王様」になりたいのは人情なのかもしれない。