イソップの宙返り・239
  
イチジクは冬になると葉を落とすので、隣人のオリーブから「丸裸だ」と罵られました。
オリーブは「私は冬も夏も葉で着飾って常緑だ。君なんか、美しいのは夏だけだなぁ」といいました。
このように得意がっていると、突然雷が落ちて、オリーブを焼き尽くしました。イチジクには触りもしませんでした。
寓意・富や好運を誇る者は非業の最期を遂げるのだ。
☆     ☆
「非業の最期」とまで言うのは憚られますが、スーパー・ダイエーの話。
ダイエーは関西発祥ですし、社長の中内氏は神戸在住でもありますので、事業のはじめから興味を持って見てきました。
スーパーは大店法(大規模小売店舗法)で出店規制されていましたので、ダイエーは出店に苦労してきました。
1994年5月に大店法が改正され、運用基準が緩和されて、新規出店がほぼ自由になりました。「これで、ダイエーは爆発的に発展するだろう」とボクは思いました。
ところが、この大店法が改正されますと、大型スーパー間の競争が過激になり、ダイエーが危機に陥りましたね。
こうなってから考えると、大型スーパーは、それまで大店法で保護されていたんですねぇ。
規制緩和で大型スーパーが過当競争に巻き込まれるとは、ボクは予測できませんでした。
でも、中内氏が「経営の神様」と崇められ始めたころ、地元では「有頂天になって、危ないデ」なんて囁かれはじめていました。でもボクは、こんなに早く「非業の最期」を迎えるとは予測できなかったなぁ。
その後の流通機構の進歩、変化はスゴイですねぇ。ボク達年寄りが出入りしていた場所は次々と萎れてしまいました。こんな時にはとりわけ「ああ、ボクも時代に遅れてしまっているんだなぁ」と痛感しています。
         
時代の変化にあまり影響をうけないはずの農業もスゴイことになりはじめていますね。
先日、デジタル放送の267チャンネルを見ていたら、アメリカの収穫機械が紹介されていましてね。あなたもご覧になりました?
農産物のコストは収穫経費が60パーセント占めるらしく、これの経費削減の話。
収穫機械化と言いますと、例えばトマト。トマトは振り落とし収穫の方法を採っていましたから、ヘタがありませんでしたね。ええ、店頭に並んでいるトマトに蔕(へた)がないことには気がついていたんですが、今は振り落とし収穫は古いんだそうですね。振り落とし収穫だと実が傷んで商品価値が落ちるので、地面30センチぐらいの背の低い栽培をして、機械で持ち上げ収穫をしているとか。ええ、実も葉や蔓と共に根こそぎ収穫して、葉と蔓は粉砕して畑の土に混ぜ込んでいるようですね。
       
レタスの収穫はさすがに全自動とはいかないようですが、持ち上げて外葉を取り除くのだけは人力、後のフイルム被せ、箱詰めからは機械化しているようですね。
オレンジの収穫は、ジュース用は機械による幹ごと振り落としをやって、下に落ちた実をバキューム掃除機みたいなので集めているようですが、腐った実を選別するのはコンピューターでやっているようですね。
もっとスゴイのは一個採りの果物。掃除機の吸い込み口の先にコンピューター・センサーが付いていて、糖度を感知して、熟れている物だけを採っているようですね。そのまま、吸い込み口の先で掴んで回して収穫していましたね。
あの番組の収録は3年も前のものだったので、「機械が、まだ高価なので一部農家だけがやっている」といっていましたが、あれから3年経った今は一般化しているのかもしれません。
まあ、あの収穫機械化は、人件費の安いブラジルからの農産物に対抗してのコスト・ダウンだといっていましたがね。
     
また、流通機構の話に戻るんですが、冷凍は今、CAS(電磁気による細胞活性冷凍システム)だそうですが、これで食品の流通機構が、また革命的に変わってきているようですね。
ええ、ボクはブラジル産のカシワをよく食べています。鶏インフルエンザのおそれもなく、生の国産物とほとんど変わりませんしね。
収穫機械化して、コスト・ダウンした野菜果物が入ってくると、生産方法も収穫方法も遅れてしまっている日本の農業は、スーパー・ダイエーみたいに「非業の最期」になるのではないかと心配。
世の変わりようのスサマジさは、年寄りはただ目が回るばかりですが、事業をやっている人は恐ろしいでしょうねぇ。
今までは、同業者との競争を意識しておれば良かったけど、今はまったく違う業種の技術革新が突然押し寄せてくるんですからね。いや、世の変わりようはスサマジイ。