イソップの宙返り・237
     
ドロボウと宿屋の主人
ドロボウが或る宿屋に流連(いつづけ)して、盗みをはたらいてやろうとしていました。
ある日、祭りがあるというので宿屋の主人が晴れ着で家の前に座っているのを見て、ドロボウは大欠伸をしてオオカミのように吠えました。
「なぜそんなことをするの?」と宿屋の主人が尋ねますと、
「じゃあ、説明しましょう。その代わりここに私の服を脱ぎ捨てておきますから、見張っていてくださいよ。私は三度欠伸をすると人食いオオカミなってしまうんです」と言って、二度目の欠伸をすると、前とおなじように吠えました。
宿屋の主人は恐ろしくなって、立ちあがって逃げようとしましたが、ドロボウは晴れ着の裾を掴みました。宿屋の主人は食べられはしないかと恐れて、晴れ着を脱ぎ捨てて家の中に逃げ込みました。
ドロボウは晴れ着を手にして、立ち去りましたとサ。
寓意・ありもせぬことを信じる者はこんな目に遭うのだ。
☆     ☆
人からオカネを預かる事業、まあ商売がありますよね。介護付き老人ホームとかね。
あれ、経営母体が倒産すると預け金はパーになりますねぇ。経営母体はホームの不動産を持っているから安心のように思いますが、所有不動産にはガッチリ抵当権がつけられています。いざ、倒産すると抵当権のない入居者はパー。
かりに、入居者に抵当権があっても経営母体が倒産すれば、かんじんの介護サービスはなくなりますから、幽霊屋敷は資産的価値はゼロになってしまいます。
それに、入居の時に全預金を預けてしまっていますから、もう路頭に迷うしかなくなってしまう。
どんな事業でも「いつまでも続く」ことはないですからね。いつまでも続くと信じる者は「ありもせぬことを信じる者」なんでしょうねぇ。
   
長期預かり金事業ですから、「地方自治体が監督してくれると安心」だとボクらは思ってしまいます。
ところか、市や県の監督ってあんまり頼りにならない。年金事業の監督責任でわかりましたね。
あの監督は年に一回会計報告させるだけなんですよ。それに、市や県の監督部署には会計監査能力のある担当者は皆無。
だってわかるでしょう? プロの会計監査法人が監査していても、粉飾決算をされると倒産寸前までわからない例は沢山ありますからね。会計監査は難しいもの。
上場会社の会計監査法人は会計帳簿の提出を求める権限がありますし、不審があれば資料の調査をする権限もあります。それでもダマされています。
      
公認会計士はプロ中のプロですよね。資格試験は、やたらに難しい。会計監査法人のほうも粉飾決算にひっかかると資格剥奪になりますから、必死に調べます。それでも、ダマされますね。
公認会計士の資格も能力もない市や県の監督担当者に、監査能力を求めるのは無理。
ボクの案は「預かり金事業者は、市や県に公認会計士の監査を経た帳簿を提出させ、市民に閲覧できるようさせよ」です。
会計帳簿を自由に閲覧できれば、信用度のランク付けができますからね。老人向け情報誌あたりが、「☆☆☆☆」とか「☆☆」とかをつけてくれるでしょう?
それに、市や県の行政経費はゼロですから良い案だと思うけどね。
       
ところが、この案には市や県は興味を持ってくれませんでしたね。
行政経費はゼロって言うことは役人の定員は増えませんからね。部署が増えると部長職も課長ポストも増えますが、この魅力がないと興味を持ってくれませんねぇ。
行政の肥大化する案には、「どれどれ」とばかりに、すぐ対応しますが、ポスト増のない案には不熱心。
ドロボウに晴れ着を盗られないようにするには、自分で調べるしかないようですね。
じゃあ、「どんな風にして調べる?」ですが、公認会計士が正確と証明していない帳簿を調べても意味はないですし、それに、事業者は会計帳簿すら見せてくれない。どうすればいいの?
「晴れ着は人に預けない」しか方法がないのかなぁ。