イソップの宙返り・226
 
ミツバチと羊飼
ミツバチが柏の木のウロで蜜作りに励んでいました。これを知った羊飼が蜜を奪ってやろうとしましたが、ミツバチ達は周りを飛び回って針で撃退しました。
羊飼は「退散だ。ミツバチに刺されるのなら、蜜などいらぬ」と言いましたとサ。
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タックス・ペーヤー(納税者)が血の滲むおもいで差し出した税金、まあ言うなれば、ミツバチの貯めた蜜を役人達は、好き放題に取り込みますね。取り込んで、山分け。
これをチェックするのが市長と議会のはずですが、一緒になって取り込むんですねぇ。
市長は出世した職員。議員も利権を獲得したつもりの役人側。まあ、役人の利権のおこぼれに預かっている仲間。
タックス・ペーヤーである市民の利益代表は不在。
     
これを見かねた人達が市民オンブズマンですが、市民オンブズマンに味方する人は少ない。
市民のほとんどは、「オンブズマンなんて強面のまがまがしい人達」って意識しかありませんよね。
市民が支持しないから、オンブズマンが調査する法律的な便宜なんて立法されないですね。
調査が行き届くと、利権にあずかっている議員は空出張がバレないか心配ですし、市民代表ではなく出世した職員である市長は、選んでくれた職員たちに報いようとする意識が濃厚。
それに、職員の給与が上がると自動的に自分の給与もあがるんですねぇ。ええ、議員の給与もね。
それに、この蜜は伏魔殿に取り込んでいるものですから、懐に取り込むのにミツバチ達に刺される心配もなし。こんな美味しいものに手を出さないのは、よほどの変人。
   
オンブズマンには調査権限がないから、おかしいと思って監査委員会に申し立てをして、正してくれなくても、事実関係だけでも明らかにならないかと期待しても、これも情報を開示しない。まあ、真実を調査もしないんだから、開示のしようもないんでしょうねぇ。
あの数ある委員会とかは、地域の大学とか、医師会とか、地婦連から長年にわたって次々と推薦されてきた人達ですから、選出組織のなかでの出世組なんですねぇ。
下手に役所と悶着を起こすと、後輩の出世の道を閉ざすことになりますもんねぇ。
「あの人がモメたから、委員になる道を閉ざした」なんて非難は時々聞く話。
         
こうなると、頼りになるのは出世とか選出母胎への気兼ねがいらない市民オンブズマンだけ、ってことになりますね。
市町とかの草の根から起こったアメリカは例外で、中央国家から始まった国では同じようなものらしいですよ。
市町とかの町内会が基礎になっているアメリカでは、市民に徹底的な情報開示をしているようですね。秘匿すると破廉恥罪で牢屋に放り込まれるらしい。
これとよく似た話は、株主とか株主になろうとする人達への情報開示である有価証券報告書にウソを書いたり、コクドのように事実を秘匿するのを、日本では破廉恥罪とは意識されないですねぇ。
監査委員が、役人に税金を取り込まれるのを見過ごした場合は、破廉恥罪の幇助ですから、委員にも、その選出母胎にも責任を負わせるべきではない?
そうすると、出世した委員達も、選出母胎に不名誉を与える心配があるから、後輩の出世の道を閉ざす心配より、本来の職務に、少しは真剣になると思うけどね。どんなものかしら。
何とかしないと、蜜一杯の柏の木のウロの中でウロウロしている連中に、すっかり蜜を吸われてしまう。