イソップの宙返り・208
      
蚤と運動選手
ノミがピョンと跳ね、男の足にとまり、追っても追っても跳ねまわって咬みました。
男は怒って捻りつぶそうとしましたが、ノミは飛び跳ねて逃げまわりました。
男は弱って言うのには、
「ヘラクルスよ、ノミ相手の時にこうだと、競技のときには、どんな風に私を助けてくださるのでしょう?」
寓意・些細なことで神の助けを呼ぶものではない。
☆      ☆
ギリシア神話のヘラクレスと言えば、天を支えている彫刻があります。
あれはヘスペリデスの園から黄金のリンゴを盗み出す時に、アトラスにかわってしばらく天を支えた話だそうですね。
天を支えた話は、エウリステウスの神託で不死となるための12の難業の一つ。
この12難業を書き連ねますと、
〔1〕まずはネメアの不死身の獅子退治。彼はこれを記念してネメア競技会を、また別の機会にはオリンピア競技会を創始したとか。
〔2〕はレルネの水蛇ヒドラ退治。
〔3〕アルテミスの聖なる鹿の生け捕り。
〔4〕エリマントス山の猪の捕縛。
〔5〕3000頭の牛を飼いながら30年間掃除したことのなかったアウゲイアスの家畜小屋を、1日できれいにしました。
〔6〕スティムファロス湖の猛禽(もうきん)退治。
〔7〕クレタの狂い牛の生け捕り。
〔8〕ディオメデスの人食い馬の捕捉(ほそく)。
〔9〕西の果ての島に住むゲリオンの牛を奪うこと。このとき、地の果てまで到達した記念として、ジブラルタル海峡を挟むスペイン側とアフリカ側の山に「ヘラクレスの柱」を立てた。なんてことになっています。
それぞれに、勇ましい格好の姿が彫刻されています。以上はギリシア彫刻をご覧になるときのご参考までに書き上げました。
      
ところで、ギリシア神話の神々は、何とも不道徳でしょう?
ヘラクレスの出生の話からして、ヒドイですよね。ヘラクレスの母はアルクメネ。アルクメネは、遠征に出かけている夫アムフィトリオンの不在中にゼウスと不倫。だから、ヘラクレスはゼウス神の子。
これを知ったゼウスの妻ヘラが、そと子ヘラクレスに様々な虐待をします。
ヘラは二匹の蛇を揺り籠に入れたが、ヘラクレスは両手でそれを絞め殺しました。
ヘラクレスは後年、3人の子供を得ますが、ヘラクレスはヘラに発狂させられ、わが子3人を火中に投じて惨殺します。
これも、絵画・彫刻の題材ですね。
        
ところで、どうしてギリシア神話の神々は、不道徳で悪魔的なんでしょうかね。
ギリシア神話って古代ギリシアで突然現れたものではなく、インド・ヨーロッパ諸族神話に基づくものだそうですよ。
インド・ヨーロッパ諸族は強烈にヨーロッパ諸地方に進出していった種族なんですよね。
歴史の教科書では進出だとか、移動なんて表現しているけど、あれは進出・移動してきたインド・ヨーロッパ諸族の末裔たる現ヨーロッパ人の表現ですよね?
ええ、無人の荒野へ進出・移動してきたものではないですよ。ヨーロッパ中央部にしても先住民はいたんですからね。進出・移動によって先住民は追い払われ、抹殺されたんですよ。
後の時代になりますが、「アメリカ発見」とか、「ゲルマンの大移動」なんて綺麗事に言うけれど、追い払われ、殺戮された先住民にとっては悪魔の襲来。
    
ヨーロッパの古代史は殺戮の歴史。
この事と神話が悪魔的なこととは深いかかわりがあるのではないかと思えますね。
悪魔的な神話は、侵略の歴史を語り残しているのでは?の話は、何しろ大論文になりますから、また別の機会に。