イソップの宙返り・205
       
ヘルメスの贈り物
ヘルメスがウソ八百と悪巧みを満載した車をひいて、世界中を駆けめぐりました。
各地で、それぞれ積み荷の一部づつを配ってまわっていました。
ところが、アラブ人の土地にやってきたときに車が故障して立ち往生してしまいました。
アラブ人は車が空になるまで、奪いつくしました。
そのために、アラブ人達はウソ八百と悪巧みに埋もれてしまったのです。
☆     ☆
ヘロドトスは、その著「歴史」の中で「アラブ人は世界一盟約を重んじる」と書いているそうで。
ヘロドトスの「歴史」は権威ある著作ですよ。それが、「世界一盟約を重んじる」と書いているんですね。
「何とか民族は、こうこうである」なんて、十把一絡げに決めてかかるのは文明論なんてものではなく、ただの笑い話なんでしょうねぇ。
だって、そうでしょう?
「アラブ人には正直な人もおれば、不正直なヤツもいる」では笑い話にはならないもんねぇ。
      
ボクが大学を出て入った或る商事会社で、先輩に教えられたことなんですが、「インド人は契約とは違う低品質なコットンを送ってくるが、パキスタン人は石を詰めて送ってくる」なんてね。
この手の話は人に与える印象が強烈なセイで、ボクは今でも憶えていますねぇ。
そう言えば、有名な笑い話に、こんなのがあります。
「この世に存在しないもの。
イギリス人の美食家。ドイツ人の浪費家。身持ちのいいフランス人。陰気なイタリア人。日本人のプレイボーイ」。
何か、真実を言いあてているような気がしますね。
         
でも、イタリア人にも、陰気なヤツっていますよ。北部のミラノあたりにはシカつめらしい顔をして街を歩いているのがいますねぇ。
そうそう、ボクは音痴のイタリア人を知っています。それにハニカミ屋なんですねぇ。こいつが。
ある時「日本では音痴でも、女の子をクドクのがヘタでも、生活に不便はないけど、イタリアでは、どうなの?」って訊いたら、深刻な顔をして返事しなかった。
まわりのヤツが、「だから、こいつ独身なのよ」って教えてくれた。
     
この世に存在しないものに「イギリス人の美食家」とか、「イギリスには料理はない、あるのはお総菜だけ」っていいますね。
「イギリスには料理はない、って言うのはイギリス料理を知らないからだ」って言う人があるけど、ロンドンの一流レストランはフランス料理屋ですから、やっぱり料理と呼べるほどのものはないんじゃあない。
ところで、お総菜って家庭料理のことでしょうねぇ。料理はレストランで出す、美食のことらしい。
でも、家庭料理のお総菜って美味しいですよね。京のおバンザイって人気がありますもんねぇ。だから、イギリスのお総菜には美味しいものがあるんでしょうねぇ。
       
この世に存在しないもの、「ドイツ人の浪費家」って言うけれど、ボクが仕事で出会ったドイツ人は、気前よく奢ってくれたけどね。
割り勘のことをドイッチェ・カウンテング(ドイツ風勘定)って言うけど、時と場合によっては、奢ってくれるものらしい。
それに、ドイツ人は割り勘のことをスコッチ・カウンテングと言い、スコットランドでは、割り勘のことをダッチ・カウンテング(オランダ風勘定)って言うらしい。
ええ、みんな悪口はつけ回しにするものらしい。
        
ケチと言うと、ナニワのケチが有名ですね。日常では浪費を悪徳だと思っていますが、出すべき時にはパアーっとだすんですよ。このために普段はシマツ。
出すべき時にも出さないヤツのことをシミッタレって言いまして、ケチとは別もの。
だから、関西人には、美食家もおれば、浪費家だっていますし、身持ちのいいのも、陰気なのもいますよね?
でも、関西人だけではなく、日本人にはプレイボーイと言って、シックリするのはいないなぁ。ただのシミッタレた遊び人だけのような気がする。