イソップの宙返り・204
    
兎と狐
儲け屋と評判のキツネがいました。
ウサギが好奇心を抱いて、
「君は儲け屋と呼ばれているけれど、本当にガッポリ儲けているのか?」
と訊きますと、
キツネは「ウソだと思うなら、ボクの家へきてごらん。一席設けるよ」
と言いました。
ウサギがついていきましたが、キツネの家のなかには食料はなくて、食べ物と言えば、従いていった当のウサギしかいませんでした。
「お前の名の由来がわかった。儲けるではなくて、ダマすのだ」
とウサギは気がついて言いましたとサ。
☆     ☆
オレオレ詐欺、振り込め詐欺も最近は手が込んできましたね。
アメリカではフイッシング(釣り)詐欺って言うんだそうですね。
日本のオレオレ詐欺も最近は、警官役とか病院の医者の役とか、複数の声優でやるそうですね。何やら、会社組織にまでなっていて、こんなのをオレオレ・カンパニーっていうらしい。
ダマされた人にこんなことを言うのは気の毒だけど、声を聞いてもわからない孫だとか、中には息子までいますね。
勘ぐった言い方かもしれませんが、電話の声だけでは本人かどうかも、わからないんですから、よほど疎遠な孫とか、息子なんでしょうねぇ。
         
寄りつきもしないし、声も忘れてしまっているほど疎遠な孫、息子をカタって助けを頼んできたからといって、何百万円ものオカネを送金する人って想像できないですねぇ。
あなた、送る?
ボクなんか、本人がやってきても、どうかなぁ。ボクは薄情なんかなぁ。
ボクなんか、親戚の若者が就職の身元保証人を頼みにやってきても、断ったことがあるもんねぇ。
ぜんぜん寄りつきもしていなくって、とつぜん身元保証人を頼みにくるなんて、それだけで信用しなかった。
        
話のついでに身元保証のことですが、身元保証って、本人が問題を起こすと、とてつもない額の補償を求められます。こんなの困るんですね。
「ええー? どうして、そんな多額を使い込んだの?」ってことが、ある日とつぜん起こる。
「雇い主も、もうすこし気をつけてくれよ」ってことになりますから、身元保証人があんまり気の毒なケースが多いので、身元保証法って法律が作ってありまして、諸般の事情を勘案して、裁判所はまけてくれます。
それにしても、4分の一は払わせられる。
あれ悔しいよ。使い込みをしたヤツ本人にも、使い込みを放任した会社にも腹が立つよ。
こんなヤツの親や兄弟にかぎって、知らん顔。
身元保証人になっていない親や兄弟は法律上は責任がありませんからね。
法律上の責任がないから、こんなヤツの親兄弟は道義的な責任もとらないんですよ。
ええ、世の中には、こんなのが多い。
         
でも、どんなに疎遠な親戚にしても「就職がきまった」って喜んで、やってきているのに、身元保証人を断るのは難しいですよね?
それと借金の連帯保証人。
あれ、どうしても断れない場合は、保証する額の10分の1の現金を出して、「これで、こらえてくれ」って言うのがコツ。まあ、返ってこないカネだと認識してね。
10分の1のカネをやるのも惜しい相手なら、連帯保証をする義理もないでしょう?
その時にあったカネが返ってこなくても、諦めればすむことですが、連帯保証をしていると、ある日とつぜん請求がくる。「本人は夜逃げした」なんてね。
自宅は奥さんの所有名義になって、いつの間にか離婚していたなんてのまでありますね。
あれ悔しいよ。使い込みをしたカネを、一緒になって浪費した元ヨメサンが温々として知らん顔。
あれは、ほんとに悔しいよ。
「請け判(連帯保証)の厄なしに一生を過ごせたら、一人前」って諺があるぐらいだもんね。保証を断るのは、それほど難しい。