イソップの宙返り・197
   
カラスと水差し
喉を渇したカラスが水差しのところへ行きましたが、水のところにまで嘴がとどきませんでした。
ひっくり返そうとしましたが、しっかり立っていて、それもできませんでした。
考えているうちに一計を案じました。
それは、小石を水差しいっぱいになるまで、放りこむことでした。
こんな風にして、カラスは水を飲むことができましたとサ。
寓意・智恵が力を凌ぐことがある。
☆     ☆
近鉄が球団をオリックスと合併しました。まあ、球団名のバッファローズは残ったけど、ボクらから見ると、お助け的な合併のように思えますね。
その直後にはライブドアと楽天が新球団の申し入れをしました。
あれを見ると、どうして近鉄は球団を譲渡しないで、お助け合併にしかしなかったのか、と不思議に思ってしまう。
イジマシイ話かもしれないけれど、新規加入料の何十億円かの対価では譲れたはずでしょう?
       
ボクのまわりには、プロ野球球団に関係のある数人がいるもんで、「近鉄はヘタしたなぁ」って言ったら、「あんな得体の知れない者には譲れないよ!」って返事がかえってきた。
たしかにライブドアとか楽天は老人には得体の知れないヤツなんですねぇ。
ええ、老人のボクには、その心理よくわかる。
頭では、老人から見て得体の知れないヤツでないと新しい事業ではない、ってわかってはいるけど、立派なビルとか工場をもっていない事業は、実体がなくて不安。得体が知れないって感じてしまう。
       
新しい事業でも、介護関係だと大きな建物があるでしょう? 目に見える立派な施設があると、何やら納得のいく事業のように思えるんですがね。
近鉄は古典的な鉄道事業ですから、巨大な線路とか土地がありますね。ライブドアや楽天には線路も土地もないもんねぇ。
近鉄が尻すぼみになった原因はバブルの土地投機が原因らしいけど、ボクらにすれば、所有している広大な土地ばかりが目に入って、目に見えない借金の膨大さはわからないもんねぇ。
        
オリックスとの合併を発表した席に座っていた近鉄の経営者はさすがに古い企業だけあって、何やら伝統に裏付けられた貫禄もあり、立派な人達に見えました。
それに引き換え、ライブドアや楽天の経営者は軽々しく見えましたね。ネクタイもしていないし、一人でヒョコヒョコと出てくるんですよね。
ボクのような年寄りには、お供を引き連れた社長を見ると立派な経営者に見えてしまうもんねぇ。
でも、あの人達は球団を譲渡する智恵もなく、何十億円かの対価をパーにした人達なんですねぇ。
それに、バッファローズ・フアンまでガッカリさせたもんねぇ。
ガッカリさせられたバッファローズ・フアンは大阪の南から名古屋へ行くのにも、近鉄に乗ってやろうって気がおこらなくなったんではない?
いえいえ、近鉄経営者を智恵のないカラスだと思ったわけではありませんがね。