イソップの宙返り・196
      
黒丸鳥と鳩
一羽の黒丸鳥が鳩がオイシイ餌を食べているのを見て、自分も食べたくなりました。
そこで、身体を白く染めて鳩小屋へ忍び込みました。
黙って食べているうちはわからなかったのですが、うっかり鳴いてしまいました。
すると、気付かれて追い出されてしまいました。
すごすごと、仲間の黒丸鳥のところへ戻ると、身体を白く染めているため黒丸鳥の仲間にも入れてもらえませんでした。
この貪欲な黒丸鳥は両方を得ようとして、片方さえうしなってしまいましたとサ。
寓意・飽くなき貪欲はすべてをうしなう。いまあるもので満足しなければならない。
☆     ☆
そんなことを言うけれど、「いまあるもので満足している」と滅亡してしまうのが現代ですねぇ。
まあ、製鐵とかの基幹産業の寿命は長いけれど、流通とかの新しい企業は寿命30年なんて言いますねぇ。
よほどの工夫がないと生き残れないみたいですね。
ダイエーが危機状況だと、言われ出したのは10年も前からですが、ダイエーは、いったいどんなことになっているのか興味がありますので、店舗をときどき覗いてみています。
いま隆盛のコンビニのSHOP99あたりにと比べると値段が倍近いですね。
ダイエーは長い取引先の問屋とのシガラミに喘いでいるみたい。
         
長く取引してきた先を切り捨てるのは至難の業。ボクは企業の再建を専門としていましたが、言うは簡単だけど、従来の取引経路を切り捨てるのは簡単じゃあないですねぇ。
切り捨てるってことは、その問屋とかは倒産することですからね。
そんな不人情は、なかなか出来るもんじゃあないんですよ。
だから、企業再建には冷酷非情な決断が必要。
そのためには、業界の仕来りも、いままでの歴史も知らない、冷酷非情な再建屋が全権力を掌握しなければなりません。
再建屋って裁判所がバックアップする弁護士がなることが多いんですが、これがそう簡単に成功するとはかぎらない。
          
古いシガラミを切り捨てただけでは将来がありませんからね。
将来を見越しての邁進の中で、古いシガラミを切り捨てていかなければなりませんからね。
じゃあ、どんな将来を見越しての展開かですが、これは至難の業。
銀行とか再建機構からやってくる人材に、将来の展望なんてある?
そんな展望があれば、自分でベンチャーを立ち上げるでしょう?
こんな見通しのある人材が、何で沈没しかけの借金まみれの企業に人生を投入してくれるもんですか。
        
ダイエーを見ていると気が遠くなりますね。
ニッサンのゴードン氏は経営学の専門家ですが、やっぱり建て直しにはプロが要りますね。
年俸数億円のプロがね。
でも、銀行と再建機構のちまちまとした人達に、年俸数億円のプロに全部を任せる度胸はあるのかしら。
新しいコンピニのSHOP99と、ダイエーと比べてみて、難しいなぁ、と思ってしまいました。
何しろ、値段、倍ですからね。
       
でも、ニッサンの自動車にしても、ダイエーの流通業にしても、職種自体は寿命の尽きた業種ではありませんからね。
何とか、ならないかと思っています。
       
それにしても、今から業種を選んで就職する大学生は大変ですねぇ。
もし、子供が就職するとなると、アドバイスしてやるにも、親としては途方にくれるだろうなぁ。
歴史書を読んでいると、そんな風に思えてくる。
ええ、戦国時代の滅びた大名なんて、「何で、そんな進路選択をしたの?」なんて思いますよね?
例の後知恵でね。