イソップの宙返り・195
      
黒丸鳥がイチジクの木にとまったが、まだ熟れていなかったので、熟れるのを待っていました。
それを見て、狐が言いましたとサ。
「夢を見るのもいいが、腹の足しにもならぬ希望に身を任すなんて、バカのすることだよ」
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希望と夢は、時として同じ意味でつかいますね。
希望は、こい願うこと、あることが実現することを待ち望むことですが、将来の希望は夢とも言いますね。
「少年時代の夢を追う」、「大きな夢を抱く」、「未来の夢を描く」と遣う夢は希望と同意語ですね。
夢には「夜中に見る夢」なんて別の意味もあります。
「夢のない人生なんて、生きるにあたいしない」は夢想に近いものかもしれませんが・・・
     
ところで、主題からはずれてしまいますが、「夜中に見る夢」の話。
正夢(まさゆめ)って、夢に見たことがその後の事実と符合することを言いますね。
「夢合(あ)う」って熟語がありますから、昔からよく経験したことかもしれません。
で、悪い夢を見てしまったときに、これが現実になっては困りますから、呪文を唱えたくなりますよね?
ええ、悪夢を見たときに縁起直しにいう呪文にはいろいろあるようですが、簡単なのは「さかゆめ、さかゆめ(逆夢)」だとか「さかまこと、さかまこと(逆実)」って呪文があります。
あんまり複雑な呪文では、寝ボケ頭では唱えられないので、逆夢(さかゆめ)か逆実(さかまこと)と唱える人が多いみたい。
ボクは母親から子供の時に「さかゆめ、さかゆめ」と言えと教えられましたよ。夢見が悪いと「バクバク」と唱えてバク(獏)に夢を食わせるなんてウガッタことを言う人もいますがね。落語の咄かもしれない。
ところで、こんな呪文は「夢違(ちが)え」って言うんだそうですよ。
      
夢と言えば、初夢。
初夢は「一富士、二鷹(たか)、三茄子(なすび)」が知られていますが、あれは徳川家の故地・駿河の名物だと言うことになっています。
そう言えば、家康は鷹狩りが好きだったらしいですね。
でも、あなた、富士や、鷹(たか)や、茄子(なすび)の夢なんて見たことある?
それより、宝船の絵があるでしょう?
七福神が船に乗っている絵柄。時々手拭いにして売っていることがありますね。
あれを枕の下に置いて寝ると吉夢をみると言いますね。ええ、良い初夢を見ることになっています。
       
いっそのこと、枕カバーに宝船の絵のデザインなんて、どうでしょう?
年中、宝船。
あの宝船は、本来は悪夢をもっていってくれる船だったという説もありますから、悪い夢を見たときに、寝ボケ頭で複雑な呪文を唱えるより簡単かも知れない。
何やら、夢のような話になってしまいました。