イソップの宙返り・186
      
庭師と犬
飼い犬が井戸に落ちたので、庭師は引き揚げてやろうと、降りて行きました。
すると、犬は主人が近づいてくると、水に沈められると思って咬みつきました。
主人は「やれやれ、こんな目にあうのも致し方ない。お前が落ちるときに危険から救ってやらなかったんだからな」と言いましたとサ。
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イラクの人達を犬の話にたとえるのは失礼なことですが。
救いに来たのを水に沈められると思って咬みついた話から、イラク復興支援に行っている人達への攻撃を思ってしまいますねぇ。
        
ところで、イラクって、かってのメソポタミアの地なんですね。
ええ、世界最古の文明を築いた地。紀元前3000年のシュメール文字は歴史の教科書でも習いましたね。
ユーフラテスのバビロニア、ティグリスのアッシリアですよね。
ところが、文明の十字路といわれる要衝の地ですから、周囲に勃興する国の侵略を次々とうけてきました。
もう一度教科書を開いてみたんですが、紀元前6世紀には隣のペルシアに征服され、それ以後、アレクサンドロス大王に、パルティアに、ササン朝ペルシアに支配されてきたんでしたね。
7世紀には新興のイスラム帝国に支配され、13世紀には、モンゴル軍に攻め寄せられ、バグダードは殺戮(さつりく)の地獄になりました。
さらに14世紀末にはティムールの率いるモンゴル軍が攻め寄せ、生命線の灌漑施設を徹底的に破壊されました。
その後の400年間はオスマン・トルコの支配。
第一次大戦後にはイギリスの委任統治領。その後1932年に一応は独立。
第二次大戦後の混乱ののち、石油収入で潤い始め、1958年軍事クーデターで共和国政権成立。
       
いやー、こう見てくると侵略の十字路といわれているシチリアよりも凄いんですねぇ。
イラクは2600年間ずっと侵略を受けてきたんですから、その抵抗組織もただものではないんでしょうねぇ。規模の大きさ、年代の長さからすると、シチリアのマフィアより、はるかに凄いんではない?
そこへもってきて、各国が経済援助、武器援助をしてきて、武器弾薬がたっぷり国内に蓄積されているんですからね。
2600年間の怨念の塊が、重武装しているんだからね。シチリアのマフィアなんてものじゃあない。
         
こんなところへ行って、「あなた方を助けにきました」なんて言っても、咬みつかれるよ。
井戸に落ちた犬に不用意に近づいて、犬に水に沈められると思われて咬みつかれた庭師みたいにね。
それに、彼等からみると、日本の自衛隊はアメリカ軍と区別がつかないただの侵略軍なんでしょうからね。