イソップの宙返り・187
       
二つの背負袋 
プロメテウスがある時、人間を作って、二つの背負い袋を前後に背負わせました。
一つは他人の悪の入っているもの、もう一つは自分の悪の入っているものでした。
そうして、他人の悪の入っている袋は前に、自分の悪の入っている袋は後ろにぶら下げました。
こういうところから、人間は他人の悪は遠くからでも見えるが、後ろに背負っている自分の悪は見えないようになりましたとサ。
      
寓意・このことから、自分自身のことはわからないクセに、ちっとも関係のない人々のことに嘴を入れる、おせっかいな人間が出来上がったのです。
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そんなことを言うけど、自分の悪の入っている袋を目の前にぶら下げて、どうして生きていける?
マスコミは他を非難して、正義ヅラしているけど、新聞をとっている人はご存じのとおり、新聞の販売拡張員なんて、スゴイですよね?
あれ、どう見てもギャング。
本社は、あのギャングを販売店に雇うことを強制していると聞きますね。
あんなあくどい販拡をしても、購読者は、すぐに解約してしまうんでしょうにね。
ところが、もっとスゴイのは、販売店にたいする販売拡張キャンペーンと称する押し売り。
「1割拡張せよ」と強制すると、購読者が増えようと減ろうと1割増で送ってくるらしい。
堪えかねた販売店が、公正取引委員会に、ぼんぼん申し立てをしているから、全くのウソではないらしいですよ。
ええ、新聞だけではなく、メディア全部でかばい合って報道しませんがね。
         
第一線の新聞記者に嫌味をいってやると、「あれは営業のこと。編集は正義を追求して公明正大にやっている」と答えるけど、販売店泣かせも、ギャング販売拡張員だって彼等の社に違いはないでしょう?
でも、第一線の新聞記者にすれば、「自分の悪の入っている袋を目の前にぶら下げられて、どうして生きていけるの?」ってことになるんでしょうかね。
       
もう一つ、気になっていることは医療ミス。
医療ミスの報道を見るたびに、心苦しくなる。
ヤヤコシイ手術をやっているのは大病院。大学病院とかのね。
大学病院とかの大病院に勤務している医者の勤務状況を見ていると、むちゃくちゃ。
過労を越えて過酷労働。
あれでよく、あの程度の医療ミス数ですんでいると思う。
ほんとうは、もっと多いんでしょうが、患者がわも「理解あるで感謝」で目をつぶっているんでしょうがね。
まあ、運命とあきらめてね。
     
それにしても、報道の世界では第一線記者は駆け出しのピイピイがやることになっているでしょう?
少し世の中のことがわかりはじめると管理職に出世するんですよ。
だから、記事内容は一向によくならない。
でも、これは日本だけのシステムのようですね。
アメリカとかの新聞をみると記事に署名がありますね。
ええ、有名な記者が直接記事をかいています。
日本では、少しベテランになると第一線から退いて管理職になるから、第一線記者は駆け出しの若輩。だから、署名記事なんて出ようがないらしい。
       
それにしても、かく書いているボクは、隠居だから言えているんでして、現役でやっていると、いつも「自分の悪の入っている袋を目の前にぶら下げ」ていたんですから、こんな立派なことは言えなかった。
ええ、いつも「目の前にぶら下げている自分の悪の入っている袋」を見て忸怩たる思いで暮らしてきましたがね。
何もやらないと立派なことが言えることもたしか。