イソップの宙返り・185
       
漁師の獲物
漁師たちが網を引いていると、ずっしり重かったので、獲物はたくさんあると思って漁師たちは小おどりして喜びました。
ところが、浜辺にあみを引き寄せてみると、魚の姿はほとんどなくて、石などのごみでいっぱいでした。
漁師たちは、がっかりしました。
すると、漁師なかまの年寄りがいいました。
「わしらははじめに、あんなに喜んでしまったのだから、苦い思いも大きいのだ」と。
寓意・欲しいものが手に入らずに、逃げてしまうと、落胆も大きい。
期待をしすぎるとダメージも大きい。
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漁師たちが、がっかりした物と言えば、年金。
先の参議院選挙の争点の一つは年金改革でしたね。
庶民にすれば年金って生きるよすがですから、将来もらえるのかどうかの説明をもっと親切にして欲しかったですよね?
何が何やらサッパリわからなかったですもんねぇ。
でも、親切に説明するとウソがばれてしまうんじゃあない?
ええ、未来予測なんなウソッパチ。何十年も先の未来を予測するなんて誰にできる?
       
例えば、昭和50年(1975年)当時は男女平均の寿命は74歳でした。
だのに年金掛け金率は余裕をみて76歳ぐらいを予定していましたね。
65歳からの支給からすると余命9年を11年にみましたし、当時の運用益は年6パーセントは堅かったから、「カネが余るゼ」なんて喜んでいましたねぇ。
        
ええ、だから政府にだけ儲けさせることはないとばかりに、タクシー会社なんかは共同事業体を作って、年金事業に乗り出しました。
ところが、10年もすると様子が変わってきましてね。
受給者の寿命は延びるワ、運用益は資金余り時代になって低金利。
とても、「カネが余るゼ」なんてものではなくなって、年金事業の共同事業体を構成する個々のタクシー会社なんかは青くなりましたね。
ええ、10年も前からは、共同事業体が大幅赤字になりはじめて、年金共同事業をやめたいから破産とかの方法はない?ってみんなは大騒ぎ。
でも、法制上破産の方法はないし、解散して政府に引き取ってもらうには、加入会社は赤字分を一気に国庫に納付しなければなりません。
赤字分を一気に支払うといっても、個々の加入会社には、そんなオカネは用意できませんでしたね。逃げる方法は皆無。
        
それからは、「とことんになれば、政府は何とかしてくれるだろう」なんてヤケッパチ状態。
そんなヤケッパチな年金共同事業体が、ゴマンと隠れてあるんですよ。
これ何時までも放って置けませんから、何時かは政府の年金事業に吸収しなければなりませんでしょう。
こんなことを考えると、マジメに年金の将来を説明できないでしょうねぇ。
       
マジメ人間のコイズミでは、国民にわかるように説明のしようがないと思うよ。
まあ、角栄の子分だった岡田あたりは「ヨッシャ、ヨッシャ」で丸め込めるかもしれないけどね。
それにしても、何十年も先の未来予測なんて、誰も心からは信用はしないんだから、絵に描いた餅でもいいから、庶民が安心できる説明を誰か考え出さないかなぁ。
まあ、未来予測なんてそんなもの。