イソップの宙返り・184
     
目の見えぬ人
目の見えぬ人がいて、どんな生き物でも手の上に載せて触ると、どんな物か言い当てました。
ある時、山猫の仔を渡すと、撫でてみて、こんな風にいいましたとサ。
「狼の仔か狐の仔かわからないが、はっきり言えるのは、こいつを羊の群れの中に入れるのは具合がわるいことだけは、わかる」と。
寓意・悪人の性質は体つきだけでもわかる。
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人を外見だけから判断する方法って、初めての人と出会う機会が増えている現代には必要な知識かも知れませんね。
まあ、「人は見かけによらぬもの」とも言いますから、外見だけで人を判断するのは危険だと心得ていなければなりませんが、外見判断も必要な知識ではあります。
         
人を外見から判断する方法の古典的なものに人相学があります。
まあ、昔から「額が広く、髪の生え際が高く、眉が秀で、耳は頭について肉が厚いこと。それに鼻先が豊かで、目には眼光があって目元ハッキリ」なんてのが健康福徳に恵まれる人相ってことになっています。
まあ、こんな顔の人に出会うと、人相学なんてわからないボク達でも「感じのイイ人」って印象をうけますね。
        
ところで、最近、人相学は科学的になり始めているんだそうですね。
始まりは、犯罪捜査での目撃者の似顔絵からだそうですよ。
指紋も数値化されて検索が早くなっているそうですが、顔も数字化、記号化が進んでコンピュータ検索ができるようになっているらしい。
これから人相を分類して性格を判断する方法に進もうとしているとか。
ええ、コンピュータによる現代人相学と言うらしいですよ。
        
昔からの人相学、観相学では体つきの3分類ってのがありますね。
一は肉づきがよく丸マッチい体型。栄養質とも言うようですが、こんな柔和な感じの人は、「性格は円満快活、細かいことにこだわらず人当たりもよい。欠点は決断力に欠け、飽きやすい」って事になっています。
二番目は、筋肉がしまっている闘士型。「積極的で行動力に優れ、実直で粘り強く、負けず嫌いだけれど、頑固なところがある。そんなことから対人関係に難がある」ってことになってきました。
3番目は頭が大きく、頬がこけ頤(あご)がとがっている。まあ、逆さラッキョウとも言いますね。こんな人は「知的で思考力に優れ、神経もデリケートで美的感覚が発達していて、学者、思想家、芸術家タイプ」なんてね。
次は目つき。「目鋭ければ心鋭し。目柔和なれば心柔和なり」とされています。
高い鼻は自尊心が強く、低い鼻は消極的性格を表すんだそうです。丸い鼻、まあダンゴ鼻は人がよくて、金銭に恵まれる相。
      
でも、どうですか?
あなたのまわりの人にこれを当てはめると、「そんなことないデ」なんて事が多いんではない?
例えば、丸マッチい体型の人って、細かいことにこだわらず鷹揚なんて印象を受けるけど、意外に神経質な人って多いんではありません?
ボクらは外見だけからの印象で、「ふくよかな人って、あんまり気にしないだろう」なんて勝手にきめてしまって、気配りのない口をきいたりしてしまいます。
言われた本人は意外に気にしていたりしてね。
単純な人相学から、思わず人を傷つけてしまうことってありますよね?
           
顔を数値化しての、コンピュータによる現代人相学が、今後どんな風に発達してゆくか楽しみではありますが、なまじっかな人相学から、雇用選別がなされたり、差別が蔓延しないか、やや心配。
      
18世紀に骨相学ってのがハヤリまして。まあ、人相学の一種。
オーストリアの解剖学者ガルと、ドイツのシュプルツハイムが流行らせたそうですが、この骨相学は非科学的で不当な差別を助長させるとして、オーストリア政府は、その普及を禁止したことがあります。
コンピュータによる現代人相学が、こんなことにならないように気をつけなければ。
何しろ、「人は見かけによらぬもの」が昔の人の知恵でもありますからね。