イソップの宙返り・180
         
蝙蝠と鼬
コウモリが地面に墜ちて、イタチに捕まってしまいました。
コウモリは命ばかりはお助けをと頼みました。
しかしこのイタチは、ずうっと鳥と戦ってきたと言います、そこでコウモリは「自分は鳥ではない、鼠だと言いました」
それを聞いてイタチは、コウモリを逃がしてやりました。
しばらくして、コウモリは、また地面におちて、またしてもイタチに捕まってしまいました。
コウモリは、今度も命ばかりはお助けをと頼みました。
しかし今度のイタチは、鼠を憎んでいると言いますした。
そこでコウモリは、自分は鼠ではなく鳥だと言いました。
こうして、コウモリは、二度も窮地を脱しましたとサ。
☆     ☆
コウモリ(蝙蝠)は好な人と嫌いな人とがある動物ですね。
日本にいる普通のコウモリは害虫を捕ってくれますから有益な動物なのに、何やら気味がわるい。
ええ、果樹園を大群で襲うオオコウモリ類は、まあ評判がわるいのは当然としてもね。
コウモリは今も町中でも、夏の夕方には飛び交う姿がみられます。
コウモリを呼び寄せる童歌(わらべうた)は全国にあるそうで、「コウモリ、コウモリ、草履(ぞうり)が欲しけりゃ飛んで来い」といって草履を投げ上げるのもあれば、「落ちたら卵の水飲まそ」などと誘うのもあるそうで。
辞典をひくと、イギリスにも「コウモリ、コウモリ、帽子の下にやってこい。ベーコン一切れくれてやる」と歌って、帽子でコウモリを捕らえる遊びがあるそうですよ。
       
世界各地で、コウモリを死者の霊魂として敬い、殺さない風習があるんだそうですね。
ところで、中国には縁起物の置物にコウモリがありますね。
乞食坊主がコウモリと桃を抱いているのとかね。
あれ、蝙蝠(こうもり)の「蝠」が「福」に通じることから、おめでたいしるしとされているんだそうですね。
      
ところで、コウモリのように、あっちについたり、こっちにつくのは潔癖家にかかると、卑怯の象徴のように言いますね。
ええ、これを非難して自主外交だなんてね。
でも、戦国時代の話になりますが、信長が攻めてくると戦国大名達は、あっちについたり、こっちについていますよね。
たまに、自主独立を叫んで、玉砕している大名をみると、潔いと思う人と、大名は潔いかもしれないが家臣領民にとっては迷惑だなぁ、と思う人とがあるようでして。
       
太平洋戦争で、頭の上から落ちてくるバクダンや焼夷弾の下を逃げまどった、ボク達世代には、勇ましい対外強行路線よりも、「コウモリのように卑怯な、のらりくらりでいいから戦争だけはやめてくれ」と思ってしまう。
でも、戦争を経験した人でも、好戦派がいますねぇ。世の中には「喉元過ぎれば、あつさ忘れる」人って多いみたい。
外交って、潔いよりも、のらりくらりの狡猾な世界なのにね。