イソップの宙返り・178
      
狐と猿
狐と猿が旅の道連れになって、家柄を競い合いました。
とある墓地にさしかかると、猿が泣き出しました。
狐が、そのわけを訊ねると、猿はお墓を指さしながら、
「ご先祖が解放した奴隷の墓石をみて涙がでてきたんだよ」と言いました。
狐が「やれやれ、好きなだけウソをつくがいい。生き返ってオマエに文句を言う人は、いないからなぁ」といいましたとサ。
       
寓意・文句を言う人がいないと、嘘つきはホラのつき放題になる。
☆     ☆
今は家柄・血統を自慢する人はなくなりましたねぇ。
よく言われる話に「親王さんが5人ずつ子供を産むと10代で日本の人口1億人を越える勘定になる」そうですね。ええ、億単位の計算機をお持ちなら、5の9乗してみてください。
でまあ、家柄血統といえば天皇家ですが、今の天皇家は室町時代の区別をいうと北朝の末裔ですよね?
南朝と北朝は、どちらが正統かと言うと、南朝であることは間違いないところでしょう?
いえいえ、これはボクの説ではなく、明治政府の公式見解。
明治政権成立の支持思想は「国学」ですから、国学者からすると南朝が正統ということになるらしい。
     
で、昭和天皇は、これを気にされていたようで、周囲の人達が「三種の神器が継承さているから北朝の末裔が正統」って気休めを言ってきたそうですね。
ええ、ただの気休めってことは三種の神器そのものが偽物臭いんですからね。
三種の神器の一つの神剣(草薙の剣)はたしか安徳天皇とともに1185年壇ノ浦で海底に沈んだんでしたね。
源氏側は必死になって捜したけれど、出てこなかったんでしょう?
平家物語では必死に捜したけれど、出てこなかったのに後日岸に流れ着いたということになっているらしい。
いやー、重い剣が流れ着いたなんて有史時代ではとおらないでしょうにね。
まあ、いいや。
草薙剣はスサノオノミコト(素戔嗚尊)が出雲で八岐大蛇(やまたのおろち)を退治したときに尾の中から出てきた剣。まあ、当初は天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)と呼ばれていたことになっていますが、日本書紀では日本武尊(やまとたけるのみこと)が野火の難にあったとき、この剣で草を薙(な)ぎ、向かい火をつけて難を逃れたということから草薙剣に変わったということになっていますね。
でも、はっきりしていることは天武天皇が病気になられたときには、この草薙剣が祟(たた)っているとのことになって、熱田(あつた)社に預けられていますねぇ。
草薙剣が皇室の神剣であったのなら、なぜ天皇に祟ったのかも不思議ですが、皇居になくて熱田社に保管されているのも不思議。
          
何で、三種の神器にこだわっているのかと言いますと、天皇は血統ではなくて神聖な位なんだそうですね。
ええ、歴代の天皇は天皇位を運ぶ舟なんだそうですよ。
何やら遺伝子の話みたいになってきましたがね。
で、天皇位を運ぶ舟だとすると、譲位儀式は重要な意味をもってきますよね?
譲位儀式は践祚(せんそ)と言いますが、践祚は神器の伝授で譲国になることになるらしい。
こうなると、三種の神器の伝授がなければ譲を国ることにはなりませんよね?
ことほどさように、日本では家系ってええかげんなんですよね。
血統もええかげんでしょう?
     
藤原氏が出でくるまでは、皇后はヒメミコでなければならなかったようですが、あれからは歴代の皇后は藤原氏でしょう?
血統にしたって、先の何乗の話のとおり皇室以外のものが皇后になれば、その都度二分の一になりますからね。
ボクら庶民にも養子養女の制度があるでしょう。
養子養女は財産承継だけではなくて血統まで承継したことになりますよね。
まあ、こんなことから日本人はあまり階級を意識しなくなったと言いますね。
ええ、こんな由来は別にしても、日本の今は階級のない社会(モノクラス・ソサエティ)。
今時、家柄をいっても、人がバカにするだけ。
何とも、すがすがしい社会になったものですねぇ。