イソップの宙返り・177
      
クジャクと鶴 
クジャクが鶴をあざ笑って「わたしは金色と紫色の羽根を着ていますが、あんたの翼には美しい色がありませんね」
と言いました。
鶴は、「そうですが、わたしは星の近くで歌い、大空高く飛び上がります、しかしあなたは鶏のように、下界で歩いているのです」
と言い返しましたとサ。
         
寓意・栄誉もなく富を誇って生きるより、貧しい衣服を着ても名声のある方が優っている、ということである。
☆     ☆
いやー、クジャクほどの美しい羽根もなく、鶏どころか泥鰌のように泥の中を這い回ってきたボクは辛いなあ。
この寓意をまともにとると、わが身が侘びしくなるから、ここに出てくる鳥の話に逃げよーっと。
       
泰西名画を見ると庭園にクジャクが放し飼いされていますねぇ。
あれ、むかしヨーロッパでは豪華な宴会では、クジャクの肉を蒸し焼きにして出していたものらしいですよ。
ええ、クジャクは宴会料理の材料だったらしい。
それに、クジャクは何でも食べてじょうぶで、その上にねぐらを決めて、よそへ行かないので放し飼いが可能であるらしい。
いやー、何のことはない料理の材料の飼育を見て、ヨーロッパ貴族は高尚典雅だなんてボクは長らく感心していたんですかねぇ。
        
ところで、孔雀明王ってのがありますねぇ?
あれは、仏教の、と言うよりもヒンドゥー教の、女神なんだそうですね。
で、何でクジャクが神様になったのかと言うと、クジャクは毒蛇を食べても平気なので、蛇の毒を解毒するとの信仰から、あらゆる毒物や病気をいやす力があるとまでされるに至ったとか。
これから更に高貴なものとされたらしい。
ビルマ北部にシャン族ってのが住んでいるらしいけど、ここの人達の間では「クジャクは太陽の鳥。空飛ぶ車で須弥山(しゅみせん)の周りを回っている」という信仰もあるし、中国でもクジャクは霊鳥だったそうですよ。
鳳凰(ほうおう)は想像上の霊鳥ですが、鳳凰の「鳳」は、クジャクの象形文字だそうですね。
        
一方ツル(鶴)のことですが、渡ってくるのは別にして、日本に住んでいるのはタンチョウ鶴だけだそうですね。
北海道のタンチョウ鶴は、その地で繁殖して渡りをしないらしく、北海道旅行に行くと一年中見ることができますねぇ。
まあ、テレビで映されるのは冬の餌付け風景ですがね。
でも、鶴類はよほど飼育しやすい鳥らしく、動物園に行くと、いろんな鶴が飼われていますよね?
あれからすると、渡りをしなくても餌さえあれば、ひとところで暮らせるんでしょうかね?
     
ボクは横着人間ですから、エコノミークラスの狭い座席に座って、10時間以上も旅行するのは苦手なもんで、渡り鳥が年に二回も長距離旅行をするのを見ると、「シンドイだろうなぁ」とすぐ思っていまう。
秋にカンムリヅルがエベレストを、まともに越えて越冬地のインドへ飛翔する映像をテレビでみて感激したことがあります。
でも、あのテレビの説明では、上昇気流と季節風に乗って、羽根をほとんど動かさないで、エベレストを越えて行くんだそうですね。
ボクでも、羽根を動かさないでエベレストを越えられるんなら、来世は鶴に生まれるのもわるくないような気がしています。
いやー、来世も泥鰌かもしれない。