イソップの宙返り・165
      
胃袋と足 
胃袋と足とが自分たちの力について論争しました。
足は「足の力が腹を持ち運んでいるのだぞ」と言いました。
すると、胃袋が言い返しました。
「胃袋が栄養をあげなかったら、足があっても持ち運ぶことはできないだろう」と。
      
寓意・軍隊においても、もし将軍たちの頭の働きが優れていなければ、兵隊の数が多くても、何の役にも立たないものである。
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まあ、今時、軍事論をはじめても意味がありませんが、太平洋戦争での失政は補給を重視しなかったことだと云いますね。ええ、胃袋。
この原因は、軍事だけのエリートを陸軍士官学校とか、海軍兵学校で養育したことだとの説があります。まあ、補給の士官を養成する学校もあったようですが、士官としては軽んじられたといいますね。
     
ボクには太平洋戦争を論じるほどの歴史分析の能力も、気もないのですが、最近の法科大学院については、意見があるんです。
日本では法律家って、それ自体が専門職のように思ってきました。でも、法律家って法律解釈だけの専門家であっていいのでしょうか?
      
日本の裁判官って科学的な知識は皆無なんですよ。だから、専門家の鑑定書に頼りっきり。専門家の鑑定内容が誤っているって、どんなに詳細に言葉をつくしても、自分の頭では考えません。鑑定書の結論に盲従するだけ。
鑑定書を全部読むなんて裁判官はまれなんですよ。
何しろ、法律解釈以外の知識は皆無ですから、鑑定書を読解する能力は、はじめからないんです。
ところが難儀なことに、法律家って思い上がっていますからね。何しろ、本人の能力以上に権力で過飾されていますから、法律解釈の能力だけで、世の中がわかった気になっています。
       
何でも、外国の制度がいいとは限りませんが、欧米では法律だけの専門家ってありえないんですよ。
大学の学部に法学部はありません。学部を卒業してから、大学院ではじめて法律学を歴修します。ええ、ロースクール。
ロースクールに入る学生は、医学部とか理学部、それに経済学部とかの卒業生。
       
まあ、フランスでは哲学科の卒業生が多すぎる、なんて弊害もいわれていますがね。
フランスの哲学科は、日本流にいう教養部なんです。だから、文系。
文系の哲学科の卒業生が法律の大学院へ入ると科学の基礎知識皆無。
だから、フランスの法律家も科学的な鑑定書に盲従してしまう、と云われています。
        
日本にだけ学部に法学部があるのは、明治の初めに、外国に不平等条約を改正してもらうのに、急いで裁判所の体裁を整えようとして、裁判官を速成しようとしたからだと云われています。
法律家を速成しようとすると、大学院なんてつくらないで、いきなり法学部を卒業させる制度の方がインスタントですからね。
     
日本には理学部出身の法律家は皆無なんですよ。だから、原子力発電所の危険について裁判をやろうとしても、問題点を指摘できる弁護士もいなければ、理解できる判事もいません。
日本の法律家の欠点は、法律しかわからない法律バカだけという点にあります。
判事の法律バカの世界を何とかしようと、検事、弁護士と判事を混ぜこぜにする法曹一元なんて制度を作っても、法律バカの混ぜこぜですから、やっぱり法律バカだけの世界。
      
司法試験って学部の授業をまともに理解できれば、すんなり通るていどの試験なんですよ。ええ、これは断言できる。
だから、法学部卒業生で司法試験に通らないヤツは本人がバカか、バカな教授に教えられた不運な学生。
法学部の勉強だけで十分なのに、受験塾みたいな法科大学院を作っても、全く意味がない。ますます、こちこちの法律バカを増やすだけ。
それより、大学院であるロースクールには、医学部とか理学部のような法律以外の学士号をもった卒業生しか入れないとするならば、それは意義があると思うけどね。
         
司法試験の合格者を増やしても、社会的な需要を満たすことにはならない。
世の中のことが何にもわからない法律バカがなんぼ増えても、社会的な需要は満たせない。
バランス・シートすら読めない法律バカを社会は求めていないよ。
こんなことを言っても、法律バカ達にはわからないだろうなあ。