イソップの宙返り・140
    
野生のロバと飼われたロバ
飼われたロバが日向ぼっこをしているのを見て、野生のロバが羨ましがりました。
その後、飼われたロバが荷物を担ぎロバ追いに棍棒で殴られるのをみて、
「いやいや、もうおまえを果報者とは思わない。ひどい災難と引き換えにたらふく食べていることがわかった」と言いましたとサ。
寓意・災難と抱き合わせで得られる果報は、羨やむほどのことはない。
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最近は、若い人がキッチリとした会社に勤めないで、フリーターになるのが多いそうですね。
若い人の20パーセントが、フリーターになっているそうですねぇ。
そりゃあそうですねぇ。堅い職場だからと思って、過労もいとわず勤めてきたら、銀行は倒産。そこまでいかなくても、難破船が積み荷を投げ捨てるように、リストラ整理ですからね。
コツコツと勤める気にはならないのも、わかるような気がする。
それに、大会社勤めをしている先輩の話を聞いても、年中「辞めたい、やめたい」って思っている人が8割だそうですからね。
               
ビジネス社会は二極化すると言われていますねぇ。
ええ、「仕組み化」するのと、「仕組み創り」するとかにね。
「仕組み化」って、物の本を読むと、システムとかビジネスモデルを創り上げると、あとはその仕組みをまわすだけ。
その典型として、ファミレスとかコンビニとかがあげられていますが、そう言えばコンビニとかは、仕組まれたシステムが動いてゆくのでしょうから、アルバイトや外部発注のアウトソーシングでまわっていくんでしょうねぇ。
         
「仕組み創り」は「仕組み離れ」した人達によって、ビジネスを創りあげてゆくことらしい。
ええ、こんな風に二極化してゆくと、その中間は存在が許されないってことになるんでしょうね。
サラリーマンのほとんどは「単純な仕事はイヤだ。自分にはもっと何かできるはずダ」と思って暮らしていると言われていますが、二極化してゆくと、こんな中間派は社会の余り者になってしまうのかも知れない。
         
そう言えば、日本で発明されたDVDにしても、光ピックアップ・DVDソフトから信号を読みとる心臓部だけはソニー、三洋とかが確保しているけど、そのほかの単純部分は、安い労働力のチャイナとかでつくっているようですね。
何しろ、チャイナの人達の給与水準は日本の20分の1なんでしょう?
            
「労賃が20分の1なら、安く作れるだろうなぁ」なんて他人事みたいに思っているけれど、日本の国のなかで、二極分化してゆくってことは、「仕組み化」システムに組み込まれて、単純労働化してゆく階層は、給料が競争相手のチャイナと同額のになってゆくことになるのかなぁ。
そう言えば、今でもすでにファミレスの従業員のほとんどは時給800円の世界ですねぇ。
         
二極化って、巨万の富を得る「仕組み離れ」して「仕組み創り」に成功した組と、時給800円組に二極化することになるのでしょうかね?
そして、「単純な仕事はイヤだ。自分にはもっと何かできるはずダ」と悩んでいる中間層の存在を許さないビジネス社会になって行くという意味なのかも知れない。
        
そう言えば、SF物には、人類が二分化してしまっている社会が描かれているのがありますねぇ。
「自分にはもっと何かできるはずダ」と考えながら、少々の不満と、少々の満足をもって心静かに生きてきた世の中の中間派は、もう存在が許されなくなるのかなぁ。
      
仕組み創り派になれと言っても、みんながみんな創造力があって成功できるとは限らないしね。
みんなに「野生のロバになれ」と言っても、野生のロバは自由だけれど、野生には餓える自由もあるからなぁ。
野生のロバをやってきたボクには、どんな人にでも自由業がいいと勧めることができないし、どんな人にも仕組み創り派になれとは、よう言わんですね。
         
それにしても未来学者って大胆な予測をするなぁ。
40年前に当時を代表する未来学者が集まってやった賢者会議では、肝心の公害も予測できず、未来予測のすべてが間違っていたもんねぇ。
二極分化も、あんまり心配しなくていいのかも知れない。