イソップの宙返り・141
       
カエルの王
カエル達が共和制を立てていましたが、だれも不満で、雷の神である木星に王さんを下さいと祈りました。
木星の神は、カエルのためにわざわいの少いことを考え、ただの木切れを王にするように送りました。
カエルは、はじめは悦んで、うやまい尊びましたが、そのうちに慣れてしまい、王が温和なので、敬う心をなくして、ついには侮るようになりました。
木星の神に、「もっとシッカリした王を下し給え」と頼みました。
木星は、今度は怒って鷺(さぎ)を遣わしました。
サギは王になると、カエル達を捕えて食べました。
          
カエル達は、また木星の神に、こんどの王も取替えてくれるように歎願しました。
木星の神は、こう言いました。
「おまえ達の無分別から招いたワザワイ(禍)であるから、自から堪忍するより他にない」と。
☆     ☆
まあ、むつかしい民主主義論はやめにして、指導者でも、スポーツのコーチの話。
コーチって、あの大型馬車のコーチが語源だそうですね。
ええ、黙って乗っておれば、自動的に目的地へ連れて行ってくれるのが大型馬車。コーチの指導に黙って従っていると、目的地へ連れて行ってくれる、って意味。
         
ボクはボクらの世代の通例どおり、子供の頃は野球少年でした。
それもピッチャーでして、このコーチに恨みつらみを言うのではありませんが。
直球・ストレートって、あれ変化球なんですってね!
知らなかった。
ピッチャーがボールを抛ると放物線を描いて打者のところでは、プロの100キロを越えるボールでも70センチも落ちるものらしい。
直球・ストレートで、ボールにバックスピンをかけると、この落差が30センチとかになるんだそうですよ。
そうすると、打者にすれば、放物線を描いて落ちるのが自然ですから、70センチの落差が30センチだと、ボールが40センチも浮き上がってくるように錯覚するものらしい。
        
野球をやったことがない人には、浮き上がってくる直球ボール、といってもわかりにくいと思いますので、説明しますと。
バックスピンのかかったボールって、進行方向に向かって、上方に回転します。
ボールが上方に回転すると、接して流れる空気の速力が下方より速くなります。
この空気の速力の差でボールが上方に持ち上げられるんです。
これは、「ベルヌーイの定理」と言って、飛行機が上昇する原理。
ええ、飛行機の翼の上下で、空気の速力の差ができるようにしてあるのが上昇力を得る翼の断面の構造なんですよね。
           
で、球にバックスピンをかける方法は、直球では5本の指のうち、人差し指と中指でボールの上を握っていますから、この長い二本の指をボールを投げるときに最後まで接して離さないようにします。すると、ボールに少々はバックスピンがかかるんです。
ボク達の時代のコーチは「背中のうしろに腕を残し、それにボールを投げる最後の段階で、球離れを遅くする」って教えてくれました。
こんな風に言っても、あなたよくわかりませんでしょう?
ボクも、よくわかりませんでしたが、こうして投げると、球が無惨には落ちないで、少しは真っ直ぐにゆくようには感じていましたがね。ただ、漠然とね。
          
プロの直球にバックスピンがかかっているのは、超高速カメラの分析と、コンピューター・シュミレーションの後追い確認でわかってきたらしい。
こんなことを言っても、あなたには何の役にも立たないかも知れませんが、ナイターをご覧になるときには、超高速カメラでのスーロー・モーションをやってくれますから、気をつけてご覧なさい。
確かに、プロの直球は浮き上がりながら、走ってゆくように見えますよ。
いや、ホント。
        
ボクのコーチへの恨みつらみは、「球離れを遅くする」なんて教えてくれないで、「球にバックスピンをかけるンや」って教えてくれなかったことですがね。
でも、考えると、こんなこと教えてくれていても、出来なかっただろうから、結果は同じだったようにも思いますがね。
ええ、ゴルフでも、球にバックスピンをかける方法はわかっていても、出来なかったんですからね。
エヘヘッ。