イソップの宙返り・139
        
母の猫
亡くなった母には、二人の子供がありました。
弟の方は親孝行で、雨の日も風の日も毎日お墓に参っておりました。
ある雷雨の日、雨風をついて母の墓に参りますと、猫が墓からとび出してきました。
この猫を連れて帰り、毎日、米一合を食べさせますと、食べさせたお米の量だけの黄金を産みました。
         
これを知った、一度も墓参をしたことのない親不孝な兄が、沢山の黄金を得ようと、この猫に十倍の、一升の米を食わせました。
すると、猫は死んでしまいました。
      
弟は、死んだ猫を大事に葬り、その塚の上に木を植えました。
木が、見る間に大きくなり、黄金の実がなりつづけましたとサ。
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この話は、日本の昔話でございまして、イソップ寓話のなかに紛れ込ませて、すいません。
     
墓参、先祖祭りって言うと、お盆。
あれは、なぜか仏教行事ですねぇ。ええ、お坊さんを呼んで、お経をあげてもらう家がおおいのでは?
          
お坊さん業界の説明では、シャカ(釈迦)に目連(もくれん)って弟子がいたそうで、亡くなった母親が地獄に墜ちて、逆さに吊るされて苦しんでいるのを救おうとして、シャカ(釈迦)に教えられて、7月15日に供養して祭ったとなっているそうで・・・
逆さ吊り(倒懸・とうけん)の梵語(ぼんご)がウランバーナ(ullambana)。これが訛ってウラボン。これを略してボン(盆)となったと言っている。
           
「あなたの母親が地獄で、逆さに吊りになって苦しんでいるから、これを救うのに、ありがたいお経をあげてやるから、お布施を出せ」って説明は、何やら霊感商法を連想させてしまう。
ええ、「家に不幸が続くのは、先祖祭りが悪いから、センゾが怒って罰をあたえているからである。この仏像を80万円で買ってセンゾ供養をすると、罰があたらなくなる」って言う霊感商法。
         
センゾって、先祖と漢字を当てますが、漢字が来る前からの日本古代の言葉。
一家をなすのを「センゾになる」と言いますから、孫ができれば、あなたもセンゾ。
亡くなって、はじめてセンゾになるわけではありません。。
それに、ボンって言葉も仏教用語ではなく、センゾ祀りの供物をのせる器物の古称がボニ。これが語源。
ホトケも、センゾ祀りの食器・ホトキから来たセンゾの間接表現。仏教とはなんの関係もない。
       
それに、どんな家でも、母親が地獄に墜ちたなんて考えられる?
あんなに、優しくて献身的だった母親が地獄に墜ちたなんて、考えられる?
ボクの母だけではなく、どこの母親でも、地獄に墜るような人ではありませんでしたよね?
どこの家でも、母親は愚かなほど立派だったでしょう?
          
だから、あんなに優しかった母親が、センゾの祀りかたが気に入らないからと言って、子孫に罰をあてる?
ボク達の感覚としては、センゾの御霊は山の上とか、家の棟の上から、「子孫が何とかやって行ってるか」と心配して、いつも見守ってくれているように思ってきたのではありません?
それに、あんなに家族に献身的だった母親が、死んだからといって、子や孫をほっといて、サッサと紫の雲に乗って十万億土も離れた極楽浄土にいってしまったとは思えないんですがね。
       
ええ、親孝行も親不孝も区別せずに、何なら金を産む猫でも、ニワトリでも、やれるものならやりたいと思ってくれているはず。
こんなセンゾ信仰って、ボクだけではないように思うんですがね。
あなた、どう?