イソップの宙返り・120
         
鼠の婿さがし
昔々、或るネズミが、世の中で一番強い者をお婿さんにしようと決心しました。
そこで彼女は誰が一番強いかを考えました。
そして、ついにそれは風であると考えました。
といいますのは、風は高い木や塔、それに家まで、なぎ倒すからです。
そこで彼女は、風に求婚するために、使者をおくりました。
「なぜ彼女は、私などと結婚したいのか?」と風が尋ねました。
「それはあなたが、世の中で一番強いからです」とネズミの使者が答えました。
「それは、とんだお門ちがいだ。ナルホの塔の方が私よりも強い。私がどんなに吹いても千年もびくともしない。そして、私の吐き出す風を蹴散らしてしまうのだからね」と風が答えました。
使者が帰ってこのことを伝えると、ネズミが言いました。
「その塔が強いのなら、私はその方をお婿さんにしたいわ」
          
 こうして、求婚の使者はナルホの塔へ行き、ネズミの願いを伝えました。
すると、塔が尋ねました。
「なぜ彼女は、私と結婚したいのか?」
「それは、あなたが、この世の中で一番強いからです。なにせ、風よりも強いのですからね」と使者は答えました。
塔は「でもね、ネズミは私より強いよ。ネズミときたら、私を絶えず囓り、穴を開けるんだからね」
            
 こうして、ネズミは鼠と結婚することにしましたとサ。
☆     ☆
すべての事に不満な人っていますねぇ。
ええ、こんな人と結婚したら悲劇。特にこんな女性とね。
人間の性格って複雑なものですから、一つの遺伝子で性格がきまるようには思わないけど、この反対に、寛容で不満が少ない性格ってありますね。
            
幸福遺伝子なんて呼び方がありますが、この性格が遺伝的なものだとは断定できないけど、30年ほど家庭裁判所の調停委員をやった経験からの話ですが、3世代続けて離婚していた家系がありましたね。
ところが、この家系の人達は、それぞれ社会的には成功者でした。
すべてに不寛容で不満に満ちているのが成功につながるのかもしれないし、まあ、男は家庭がシックリいっていない人の方が、出世するともいいますね。
あんまり家庭が幸せだと、外でガツガツ仕事をしなくなるのかもしれませんが、でも、こんな成功者は淋しいですね。
          
ところで、連れ合いの話ですが、双方の家庭の価値観が、あんまり違うのも不縁のもとになるようにも思えるんですがね。
ええ、商売人の家庭ではオカネが絶対的な価値でしょう?
こんな家庭で育った女性が、オカネに縁のない学者と結婚すると悲劇でしょうねぇ。
ええ、この世のことですから、例外も多いんでしょうがね。
        
家裁の調停で、よくであった離婚理由に「親が決めた」なんて弁解がありまして。
夫のこんな性格が気に入らないって言うから、「結婚する前からわかっていたんでしょう?」って思ってしまう。
それに親が決めた結婚をするほど自主性がないんなら、ズーット自主性なしで、一生いけばいいようにも思えるけどね。
まあ、今さら面白味がない男だから、離婚するなんて言われてもね。
日本人の男は、みんな面白味がないマジメ人間だもんねぇ。
             
夫が味気ない退屈人間だと言っている本人が、どんなに魅力的な人かと思うと、これがただ、ケタタマシいだけだったりしてね。
今の若い人だけではないけど、結婚相手に求める条件が、背が高く、高学歴高収入なんて外形だけが高い人がおおいようですねぇ。
まあ、思春期の少女には王子さま願望も楽しいと思うけど、ハタチ過ぎての年増(?)が、少女ブルのはみっともないよ。
          
面白味がない退屈ネズミは、同じ退屈鼠と結婚する方が、一生肩が凝らなくていいよ。
って、イソップも言っている。