イソップの宙返り・115
         
鳩と蟻
ある時、蟻が遊んでいると、急に水が出て押し流しました。
蟻が浮き沈みしながら、流れて行っておりますと、木の上にとまっていた鳩が、これに気が付いて可哀想に思って、小枝を投げてやりました。
蟻は、これに乗って岸辺に辿り着いて助かりました。
ある時、猟師が竿の先に鳥モチをつけて、あの鳩を捕ろうとしていました。
蟻は、あの鳩に助けられたことを思い出しました。
蟻は「よしよし、できることがある」と思って、その猟師の足にシッカリと噛みつきました。
猟師は痛さにビックリして、鳥モチのついた竿を投げ出してしまいました。
鳩は、これを知って、危機一髪のところを逃げ去りましたとサ。
         
寓意・こんな風に、人から恩をうけたなら、何とかして報いをすべきものである。
☆     ☆
恩義に報いるほどの大層なはなしではありませんが・・・
極東の凡俗の頭を悩ますのは、贈り物。
ええ、送る方も、もらった方も。
でまあ、メジャーな国民的行事は盆暮れの贈り物。
日ごろお世話になっている人に、感謝の気持を送ることは美しい行事ではありますが、職業によっては、あれ、同じ物がむやみと到来するんですねぇ。
       
ボクは不思議な職業に長年従事しておりまして、医者と弁護士は、本来持っていくべきクライアント(顧客)から、逆に贈り物がくるんですよ。
ところが、物貰いになれてくると、人間って賤しいものでしてね、貰っても感謝の気持ちが薄れてくるんですねぇ。
しかも、到来した品物を「どこのがいい。気が利いている」なんて比較しているんですねぇ。
               
感謝の気持ちだけとは言えないのは、上級公務員の官舎に行くと、狭い玄関に山積みしている歳暮、中元。
あれは「オレは、こんなに到来物があるほど、大物なんだゾ」なんて自慢しているようにも感じる。
まあ、官舎が狭いから置場所が玄関しかないのかも知れないけどね。
でも、公務員の場合は歳暮か賄賂かが、紛らわしいですねぇ。
裁判所の判決を読んでも、「社会通念の範囲内」なんて判断していますねぇ。
でも、公務員はポストによっては、百貨店が引き取る金額にして、盆暮れ、それぞれ数百万円にもなるらしい。
これが、何で賄賂にならないのかなぁ。
         
これに引きかえ、涙ぐましいのはサラリーマンの上司への盆暮れ。
これが、合計数十万円にまでなって、その上に住宅ローンのボーナス時払いをすると残らないで、子供の服一つ買ってやれなかった、なんて嘆きも、よく聞くでしょう?
こんなことをダラダラ喋っても、何の役にもたたないでしょうから、一つ経験談をします。
         
派閥の軋轢のきつい会社がありまして、まあ、どこの大会社でも派閥争いはありますわなぁ。
そこの或る課長さんが、百貨店に出店をしている、まあ老舗の佃煮屋から、危険分散に派閥双方の本社役員に中元歳暮を贈っていました。
ところが、その佃煮屋のアルバイトが、注文主の課長さんに送るべき前期の贈り先一覧表を、贈り先に送ってしまった。
まあ、「前はこんな方々に贈ったんだから、今度の歳暮もどうですか?」なんて勧誘は、よくおこなわれていますよね。
  
でも、この勧誘状で、この課長さん、二股膏薬がバレちゃった。
自分の忠節を誓っている派閥からも見捨てられて、すぐに左遷。
なんで、左遷されたかわからないので、秘かに調べると、佃煮屋の勧誘状の発送先間違いが原因だったとわかったけど、時すでに遅し。
ところが、こんな間違いはえてしてあるんですよ。
ボクとこにも、送り主に行くべき勧誘状が誤って送られてきたことがある。
            
イソップ風の寓意・二股膏薬を張るときは、派閥ごとに別の佃煮屋から贈ること。
ねえ、たまには役に立つことも言うでしょう?