イソップの宙返り・88
           
ミツバチとゼウスの神
ミツバチが自分のミツを人間にあたえるのが惜しくなったので、ゼウスの神のもとへ行って「巣に近づく者を刺し殺す力を与えてください」と願いました。
ゼウスの神は、その吝嗇に腹をたてて、ミツバチが人を刺すと、針が抜け、ハチが命を失うようにしましたとサ。
寓意・他人にねたみ心をいだくと、自分が損なわれるものである。
           ☆     ☆
極東の凡俗といたしましては・・・
「女は嫉妬ぶかいい生き物である」なんて言うけど、ボクの経験では男のほうがはるかに嫉妬深い。
女の嫉妬なんて単純。
道を歩いていて向こうからやってくる人を爪先から頭の上までジロリと見て、着ているものの品定めぐらいでしょう?
           
男の嫉妬は、グットこらえて表情に出さないだけでなく、自分の意識からも消そうとするから、複雑なコンプレックスになる。
何しろ、嫉妬なんて黒々とした意識下のもんですからね。
これを、ますます意識下へ押し込むと、何とも不思議なこだわりになるんですよね。
           
まあ、こんな話よりもミツバチの生物学的分析でも、しましょうか。
何しろ、♂は働くばかりで、女王に仕える働き蜂。
嫉妬と同じように、何やら男のフビンを象徴するみたいな話だもんねぇ。
            
ミツバチのミツを人間が利用したのは古くからだそうですね。
スペインのバレンシア付近の洞窟には「ハチミツ狩り」の壁画があるそうで、これは9千年くらい前のものらしいですからね。
               
日本で飼っているニホンミツバチ。集蜜力や家畜としての飼育可能性などはセイヨウミツバチの方が優れているらしい。
まあ、日本人は工夫が巧いから養蜂も、それなりに優れているらしいけど。
          
ところで、テレビでしか見たことがないんだけど、巣箱って巣枠が入っていて一枚一枚の巣を動かして、ミツを取っていますね。
あれは「可動式巣枠入り上開き巣箱」って言うらしいけど、あれが発明されたのは19世紀になってからとか。
1851年、アメリカのラングストロスって人の発明だそうです。
それまでは、自然の巣を袋に入れて、潰して蜂蜜を取り出してきたらしい。
9千年間もね。
巣を袋に入れて潰すと、ミツバチは死んでしまうし、群れも分解してしまうでしょうねぇ。
           
巣箱を上開き式の巣枠入りにするなんて、誰でもすぐに考えつくように思えるけど、こんな単純な発明でも、長年の不便をしのいだ上でのことらしいですよ。
            
ところで、この項目を書こうとして事典をひっぱっていて、はじめて知ったのですが、ハチって、あの「円舞」と「尻(しり)振りダンス」で距離と方向を仲間に知らせるんですってね。
「円舞」は、すぐ近くに花があること、「尻振りダンス」はちゃんと8(はち)の字を描き、その中央を動くときに、腹部を激しく回転振動させるんですって。
距離は回転振動数に反比例するとか。
100メートルだと15秒間に10回、1キロだと5回、6キロだと2回ってね。
           
方向を伝達するのは、もっと精緻。
描く「8」の字の中央の直線上を動く方向と、重力の反対の方向(真上)との角度が、巣箱と太陽を結ぶ線に対する花の方向を示しているんだそうですぞ!
アンタわかった?
エヘッ、今からミツバチになろうとする人は真剣に覚えてね。
たとえば、ミツバチの動きが真上を向いているときには、太陽の方向に飛んで行けば花があるってことになるとか。
それにしても、これを研究して発見した昆虫学者って根気のいい人がいるなぁ。
            
ええ、ハチって賢い生物なんですねぇ。
それにしても、賢い!
人間よりも数等賢いように思える。