イソップの宙返り・86
            
占い師
占い師が広場に陣取って見料をかせいでいました。
突然ひとりの男が走ってきて、占い師の家にドロボウが入ったと告げました。
占い師は、飛びあがって走って行きました。
これを見ていた人達は、
「他人のことは見立てるのに、自分のことは予言できないのか!」
と言いましたとサ。
寓意・自分のことも満足に出来ないのに、他人のことに気をまわす人がいる。
            ☆     ☆
過去のことは、誰も知らないだろうとして、シタリ顔で話をすることは出来ても、将来のことの予言めいたことを言うのは、すぐバレてしまうでしょう?
将来のことを言うのを、西洋では予言。
日本では神から託された言葉って意味の託宣(たくせん)と言いました。
            
将来のことを言う託宣が、いかに当たらないかは「ゴタクを並べる」って言葉にまでなっていますよね。
ゴタクって、御託(宣)のこと。
口から出任せを宣(のたま)うこと。
庶民が使う熟語にまでなっていますから、みんなが知っている、当たらないことの代表。
          
将来のことの予言をするコツは、いつ起こるかを特定しないこと。
そして、いつかは必ず起こることを、予言することらしい。
しかも、曖昧な詩とかでね。
ヨーロッパに洪水が起こるとか、世界に戦争が勃発するとかね。
こうすると、並べたゴタク(御託)のうちには予言していたようなものが出てくるんですよね。必ずね。
             
野球のナイターを観ていると、周りの人の言うことが面白いですよね。
代わったピッチヤーが打たれると「打たれると思った。あれは監督の采配まちがいヤ」なんて、ゴタクとも、後知恵ともわからない叫びがでてきますよね。
お宅のダイガース狂、どう?
          
エヘッ、気がつくとボクも言っている。
昔、ざこばのコマーシャルに
「川藤を代打に、ださんかい!」
川藤が出てくると、
「ほんまに出して、どうするんヤ!」
なんてのがありましたね。
夏を過ぎると我が家では
「ムーア(投手)を代打に、ださんかい!」
なんて、ボザイていましたがね。
ああいうのを、ゴタク(御託)を並べるって言うらしい。
            
中継ぎピッチーなんかが出てきて、メチャメチャに調子の悪いのがいるでしょう?
いきなりフォァボールを連発したりね。
あれ、ブルペンで投げているのを観れば、ピッチング・コーチにはわかると思うけどね。
「コーチはアホか?」なんて思ってしまう。
でも、あれ、わからないのよ。
               
わたくしごとを申しますが。
ボクむかし、甲子園球場で投げたことがあるんですよ。
イエイエ、そんな立派な野球ではなくてね。
業界の親睦野球にね、「甲子園だとタダだ!」って引き回してきた先輩がいましてね。
甲子園球場の最少観客数を更新したって話。
だって、いやいやながら付いてきた出場者の家族40人だけだった。
            
前日のピッチヤー選考で、ボクが調子がよかってね。
「ええやんか、おまえやれ!」「まかしとけ」ってことになりまして。
翌日ピッチヤーズ・マウンドに立つと、ストライクが取れないのよ。
力むと、ますます悪化。
フォァボールの山で、あえなく降板。
       
まあ、将来を見とおすのは難しいってお粗末の一席でした。