イソップの宙返り・81
        
オオカミと子羊
子羊が、川で水を飲んでいるのを見つけ、オオカミが、もっともらしい口実をつけて食べてやろうとしました。
そこで、川上に立って、「おまえが川の水を汚すから、オレは飲めない」と言いがかりをつけました。
子羊は「下流で飲んでいるんだから、上流の水を汚すことはない」と答えました。
そうすると、オオカミは「去年オレのオヤジに悪態をついた」と言いました。
子羊は「1年前には、ボクはまだ生まれていなかった」と説明しました。
そうすると、オオカミは言いました。
「どんなに言い訳しても、オレはお前を食べるんダ」と。
寓意・悪事をはたらくことを決めている相手には、どんな弁明もきかない。
           ☆     ☆
極東の凡俗といたしましては・・・
むかしの話になりましたが、夜景見物に港にいっていた若いカップルが5人組のワル達に襲われて、なぶり殺しにされた悲惨な事件がありましたねぇ。
あれは、名古屋の近くでしたっけ?
        
ボクが経験したのに、悲劇にならないで事なきを得た事件がありました。
表現に気をつけないと、差別問題にはなると思いますので、まどろこしい言い方になることをお許しください。
             
これも、夏に、夜景見物に出かけた若いカップルが5人組のワル達に襲われた難儀の話。
行っていた先は、百万ドルの夜景で有名な六甲山。
六甲山には車を停めると、車内から夜景を楽しめるポイントが数カ所あります。
その場所の一つで、車内にいたのですが、とつぜん不審な2台の車に取り囲まれたそうです。
           
このカップルは、取り囲んだ車に接触しながらも、急発進して通行車両の多い表六甲道路へ逃げました。
シツコイ相手で、追いかけてきて、その内の1台が前に回り込み急停車。
若いカップルの車は止まりきれないで、追突。
後での話ですが、相手のワルの車の修理費用の見積もりが15万円でしたから、中損程度の追突だったらしい。
こうなると、表六甲道路は、そこそこ通行車両がありますし、神戸の人間は親切なヤジウマ達ですから、数台が「どうした、どうした」で寄ってきてくれたらしい。
当時はケイタイ時代以前だったんですが、自動車電話を持っている人が警察に連絡してくれたとか。
ところが、このワル達は、堂々としたもので、警察が来ると追突の被害届をしたそうです。
        
後ろを見ると、もう1台は後ろにピッチリ付けていたようですよ。
ところが、警察に状況を説明しても、「まあ、事故としては、追突に責任がある」なんてわかったような処理しかしてくれなかったとか。
あげくの果てに「示談をしてこい」ってことになったらしい。
         
若いカップルは、そんな恐ろしい相手と出会って、示談の話なんて出来ないから、保険会社に相談して、任せました。
任せられた保険会社の担当者は、元野球選手で勇敢な人でして、求められるままワル達の家まで、「話し合い」で出かけました。
まあ、とりわけご近所の親切な地域でして、何人ものクリカラモンモンが寄ってきまして、ポンコツ車の代わりに、新車をよこせ、で一夜軟禁状態になったらしい。
          
ほうほうのていで、ボクとこに駆け込んできたんです。
もうこれは、問題なしに債務不存在確認訴訟の提起。
債務不存在確認訴訟って「弁償するものは何もない」ってことを裁判所に確認してもらう手続き。
ボクは、こんなことになるとキツイから、集団強姦の未遂事件だと訴状に書いてやった。
でも、そうでしょう?
男達が5人2台の車に分乗して、カップルの車を取り囲んだんですからね。
さすがに、ワル達は裁判所には現れず、欠席判決で目出度く終わりました。
         
やられかけた、若いカップルは阪神間で育った人達でしたから、ワルになれていて2台の車に取り囲まれた時に、接触までして逃げているんですねぇ。
ところが、親切な保険会社の担当者は穏やかな育ちの地方の人。
相手の家が、取り分けご近所に親切な地域とは知らないで、ノコノコでかけたらしい。
取り囲んだクリカラモンモン達は、決まり文句の「誠意がない」だったとか。
          
誠意って、親族間のことだと思うけど、まあ何とでも言うわねぇ。
悪事をはたらくことを決めている相手には、どんな弁明もきかない。
「どんなに言い訳しても、オレはお前を食べるんダ」と決めているんだからねぇ。
相手の車を壊してでも、逃げる智恵は子供には教えておくことでしょうね。
とりわけ穏やかに育てた子供達にはねぇ。