イソップの宙返り・69
        
ライオンと牛
ライオンが牛を食べてやろうと策謀を考えました。
そこで、羊の生贄をしたから会食にやってくるように誘いました。
牛は、やって来ましたが、鍋があるだけで、羊の肉は見あたりませんでした。
これは!と思って、立ち去ろうとしますと、ライオンは咎めて言いました。
「何もしていないのに、立ち去るのは失礼ではないか?」と。
牛は「用意されているものを見ると、この会食は羊肉ではなく、牛肉だとわかる」って答えましたとサ。
寓意・悪人のたくらみなど、賢明な人には、お見通しだ。
           ☆     ☆
極東の凡俗といたしましては・・・
年寄りは老後の貯えを持っています。
まあ、体力がなくなって働けなくなると、頼りになるのはお金ですからね。
          
で、これの保全の話。
銀行に預けていても、いつ倒産するかわからない時代ですから、みんな不安になってきています。
老後の貯えは、退職金を預金している人が多いから、平均1000万円を超えています。
で、まあ、1000万円までは預金保険機構が保証してくれるんだから、数行に分散しておけば安心かなぁ、なんて思っています。
         
さっき、テレビを見ていたら、金融評論家と自称するのが「預けようとする、その銀行の株価の変動に気をつける」なんて、言っていました。
株価そのものではなく、変動から、銀行の信用度を判断するって難しいですよ。
ボクら素人は、会社が景気がいいか、どうかは見た目からだけでしか判断できませんよね?
ビッグ4銀行の社員は年に何千万円も給料をもらっているし、社長は年俸を1億円も取っているし、配当はボンボンしてるから、景気がええ会社だと思ってしまいますよね。
だから、みんな大きいところが安心だろうと思って、ビッグ4に預金移動が集中しているらしい。
            
でも、ビッグ4が倒産して預金の払い戻しが出来ない事態になると、大変な経済混乱。
倒産から経済パニックが起こるのか、経済パニックから大銀行が倒産するのか、のどちらかでしょう?
考えてみると、預金保険機構が1000万円返してくれても、経済パニックなら、返してくれたお金は紙屑にまではなっていなくても、まあ、貨幣価値が極端に低下しているはず。
          
この話、57年前の終戦直後の混乱期の経験のない若い人には、わからないと思いますので、少しシツコく話しますが。
エエー、60年ほど前、日本とアメリカが戦争をしましてね。
「どっちが勝ったか?」、と言いますと、日本が負けた。
              
負けて、経済的にも大パニックが起こりまして、経済たてなおしに、まず預金を凍結しました。
凍結解除になったおりには、貨幣価値は何百分の1になっていました。
今でも、悲しい思い出として残っているのは、両親は、ボクが生まれてからズーット、将来の学資用にと、チビチビと預金をしてくれていましてね。
生活に困ってしまって、最後にボクの積み立て預金をおろしたんですよ。
何と、両親の10年間の汗の結晶が、薪3束。
          
今の若い人って、こんな経験聞いたこともないでしょう?
まあ、アルゼンチンからの外報ではお札を束にして、取引していますが、経済パニックになると、ああなる。
         
で、話を元に戻すと、先ほどの経済評論家は、「よく調査をしないで、ビッグ4に預けるのはバカだ」と言うけれど、ビッグ4の一つでも倒産する事態になれば、日本経済全体が崩壊しているはず。
そうなれば、預金保険機構だって、支払いが出来るとは言い切れない。
国がバックアップするといっても、借金だらけの政府だけが健全なはずはないでしょう?
それに、返ってきたお金が紙屑同然じゃあ・・・
           
それで、ゴールド地金に走っている人も多いらしいけど、恐慌になった時にはゴールドって、過去の例では意外にリスクヘッジになってないんだそうですね。
           
「じゃあ、外銀のドル建て預金」とも考えるけど、日本経済が崩壊すれば、世界的なパニックになる、って言うから、これも万全とは言い難い。
        
それにしても、テレビに出てきて、ボクらをバカ者呼ばわりするんなら、せめて生き延びるヒントだけでも、教えてくれヨ。
まあ、金融評論家みたいな「賢明な人には、お見通し」なんだろうけど、ボクらみたいな無知なバカはどうすればいいの?