イソップの宙返り・68
       
老いたライオンと狐
ライオンが年をとって、腕力では獲物がとれなくなりました。
そこで、洞窟の中で病気のふりをして、見に来る動物たちを捕まえて食べていました。
狐は、ライオンのたくらみに気が付いて、洞穴から離れたところで、病気見舞いの挨拶をしました。
ライオンが、中まで入ってくるように誘いました。
「入って行った足跡は多いのに、出てきた足跡は一つもない」と狐がいいましたとサ。
寓意・賢明な人は、確かな印から危険を察知する。
          ☆     ☆
極東の凡俗も考えまするに・・・
世に詐欺商法と云うものがございまして、これは何度も書きましたので、退屈だとは思いますが。
あんなのには、俺も、内のカミさんもひっかかからないと、お思いでしょうが、あの詐欺商法のセールスマンって、その道のプロなんですよ。
プロ中のプロにかかると、ほとんどの人が、ひっかかる、と言われています。
          
ボクは、カモを装った調査担当者が録音したテープ、隠し撮りしたビデオを見せてもらう機会があったんですが、これは上手い。
聞いてるボクまで、ほんとうかなぁ、なんて気分になってきましたもんねぇ。
いや、ほんと。
       
催眠術の専門家も、ビックリの技。
こんなプロ中のプロの詐欺セールスマンが、2万人はウヨウヨしているといいますね。
          
こいつらの特徴は、まず、訥弁。いかにもペラペラの悪党ヅラではないんですねぇ。
それに、黒い背広を着て、ちゃんとしています。礼儀正しくってね。
それに親切を装うのが、これまた上手い。
どうも、一人暮らしの老人の所ばかりを集めた、名簿があるみたいですね。
あれ行政から漏れているんじゃあないかと、心配するほどに、ヤツらはよく知っていますよ。
           
一人暮らしの老人って、何ヶ月も人と話をしたことのない人って多いですねぇ。
何千万円もの貯えを持っているんだから、それだけの収入を得てきた人って、相当の社会的地位にあった人のはずでしょう?
ですから、財産管理ぐらいはできるはずだと思うけど、被害者はおばあさん。
おじいさんは財産をシッカリ残しているんですが、こんな亭主に限って、女房を世間知らずにしてしまうものらしい。
          
美人の女房を世間の風にあてないようにしてきたのか、ハナからバカにして世間話もしてやらなかったのか、でしょうがね。
平均年齢からみても、女房が後に残るんだから、ちっとは世俗の智恵も残しておいてやればイイのに、と思うことが多い。
           
それよりも、気に入らないのは、一人暮らしで、何ヶ月も人と話をしたことのない状態にした息子達。
こんな連中にかぎって、相続ではモメルんですよね。
近くに住んでる姪が、親切にしていると、「財産目当てダ」とか勘ぐってね。
お婆ちゃんに頼まれて、銀行にお使いに行ったのまで、「取り込んだ!」って騒ぎ立てる。
         
でも、息子達が、こんな親不孝をしても、ジイさんは、まくし立てるけど、バアさんは崇高よ!
「あんな、子供を育てたのは、私ですから」なんて怒らないんですねぇ。
とことんになると、女の人って立派ですよ。
あれ、女のサガだなんて言うけど、どうも男と出来が違うみたい。
でも、こんな優しさに付け入るプロの詐欺師も気に入らないし、母親を放って置いて遺産だけは取りに来る親不孝モノも気に入らない。